オオタカをきれいに捉えたのはどっち？ニコン「Z9＋800mm」VSキヤノン「EOS R3＋1200mm」超望遠カメラレンズ対決

2022.06.05

■連載／ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所

小型軽量の超望遠800mm f/6.3 VR S新登場

NikonのフルサイズミラーレスZシリーズには、望遠レンズが400mmまでしかないという弱点があった。2倍のテレコンを使ってようやく800mmだった。これを解決すべく投入されたのが「NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S」である。長さ385mm、重さ約2385gと従来レンズより小型軽量化され、希望小売価格97万3500円という高額レンズとなった。組み合わせるボディはもちろんZ9である。同じく新発売となったCanonの1200mmと同じ被写体を狙って、その違いを検証した。被写体はオオタカとカワセミで、重量級レンズのため必要に応じて一脚を使用。作例撮影には写真家、小平尚典氏に協力してもらった。

付属フードを取り付けると、さらに迫力を増すZ800mm、バランスが手前にあり持ちやすかった

オオタカまで距離があるためTC-2.0xを使い1600mmで撮影

この時のオオタカは卵を温めていたため、メスは巣から出てくる機会が少なく、なかなかシャッターチャンスは訪れなかった。また、巣までの距離も遠いため純正テレコンバーターの「Z TELECONVERTER TC-2.0x」を使用して800mmを1600mmにして撮影した。開放絞り値は2段暗くなるため、感度を上げる必要があり、画質的には不利になった。

ISO感度18000とかなり高いが粒状性は良好でノイズも抑えられている。手前に向かって飛んできたオオタカも3Dトラッキングが的確に捉えてAFを合わせ続けてくれた。

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S＋TC-2.0x Nikon Z9 1/500sec、F13＋0.33、ISO16000

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S＋TC-2.0x Nikon Z9 1/500sec、F13＋0.33、ISO18000

動きの速いカワセミには800mmでも苦戦

午前中から待機していのだが、カワセミが飛来したのは16時過ぎになり、周囲は暗くなりかけていた。そこから撮影開始して17時30分まで撮り続けた。後半の2枚はISO感度12800まで上げてシャッター速度を稼いだが、微妙にピントが甘い画像が増え続き、連写で着水シーンは撮れたが満足できるカットはなかった。レンズの性能を引き出すにはZ9側のカワセミに対するAF性能をもう少し向上させて欲しいと思った。

Z 800mm f/6.3はフルサイズの800mmとしてはコンパクトで重量も2kg台に収められている。専用ソフトケースに収納すれば電車での移動も苦にならない。U100万円という価格も非現実的ではない。テレコンを使って手持ちで1600mmにも対応できる。操作性も画質も素晴らしい。一眼レフの500mm感覚で使えるミラーレスの800mmとして、Zシリーズのオーナーであればいつかは手に入れたいレジェンド超望遠レンズの誕生である。

NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S＋TC-2.0x Nikon Z9 1/125sec、F9 -0.33、ISO100