異業種アパレル特集【後編】
アパレル業界において異業種参入は決して珍しいものではない。ラグジュアリーブランドのグッチはカバン屋さんだし、アウトドアブランドのチャムスはサングラスを首掛けするためのグラスコード作りから身を起こした。
カー用品店の最大手チェーン「オートバックス」で知られるオートバックスセブンは、5つのアパレルブランドを展開している。今回はその中核を担う2ブランドの魅力に迫る。
クルマがある生活を軸に広がるライフスタイルブランド
ひとつめは「JACK & MARIE」。カー用品店市場にライフスタイルを提案するブランドがないことに着目し、2017年に設立したセレクトショップだ。
「JACK & MARIE」が掲げるブランドコンセプトは“クルマを通じたライフスタイルを提案するブランド”。カーインテリアをはじめ、ファッション、アウトドアギア、収納グッズ、ライフスタイルアイテムなどを幅広く展開している。
左からJACK & MARIE『ヘビーウェイトSWEAT HOODIE』1万7380円、JACK & MARIE『ヘビーウェイト S/S POCKET T/S』7920円
この2商品はすべてにおいてカリフォルニアメイドにこだわったという新商品。どちらも、しっかりとしたヘビーウェイトのコットン100%の生地を採用。ややゆったりしたサイジングはベーシックデザインで様々なスタイルに馴染み、ドライブや休日などリラックスしたシーンに良く似合う。
昔ながらの地厚の生地は、洗濯するたびにクッタリとやわらかくなるなど、育てる楽しみが魅力。Tシャツの首回りもしっかりした作りなので、ネックラインがすぐにヨレる心配はないだろう。こうした愛着を持って長く着用できる服作りはスローライフ的だ。
ふたつめは「GORDON MILLER」。もともとは「JACK & MARIE」から派生する形で2017年に誕生したもので、当初は洗車用品ブランドの立ち位置だった。
しかし、2019年よりライフスタイルブランドとして本格化。展開するアイテムは、カー用品からアパレル、インテリア家具、キャンピングカーまで幅広いジャンルにまたがっている。
ブランドテーマは〝心踊るガレージライフ〝。キャンプを中心としたトレンドのアウトドアへの意識も感じるが、あくまでガレージなどカーライフで使うことを前提に、街着としても着られるようなガレージウエアを中心に展開している。
左から)GORDON MILLER『ワークエプロン』4180円、GORDON MILLER『コットンツイルガレージブルゾン』2万900円
耐摩耗性に優れたコーデュラナイロンで仕立てたワークエプロンは、ガレージライフを連想させるアイコニックなアイテム。センターのペンホルダーは利き手に左右されないユニバーサルデザインで、右ポケットはビスやネジといった細かなパーツを出し入れしやすい浅めの作り。
クロスやカラビナなどを吊るせるようにウエスト部をモールテープ仕様にするなど、洗車やピット作業を想定したディティールを多数搭載している。
一方のミリタリーテイストを感じさせるブルゾンは、実は作業着の定番であるツナギをアレンジしたもの。
作業中にクルマに傷をつけないよう金属パーツにかぶせを施し、袖口はたくし上げやすくなるようゴムシャーリング仕様になっている。本格的なワークウェアの機能を残しながらも、デイリーユースしやすい細身のサイジングが特徴だ。
ナチュラルやラフなテイストを感じさせる「JACK & MARIE」に対して、「GORDON MILLER」のアパレルはラギッドなテイスト。どちらもタフな仕上がりで、カーライフを中心に広がる多彩なライフスタイルへフィットするように異なる世界観を構築している。
アパレルは昔から参入障壁が低いといわれており、新規参入が盛んな業界だ。服はブランドの自己表現を可能にするジャンルであり、アパレル市場への参入は本事業の広がりや存在感を強めるなどの目的がある。
ただ、昔と違いライフスタイルは多様化した現在は、毎年のようにトレンドが誕生することはなくなった。
こうした背景が影響しているのか、近年増加する非アパレル企業の新規参入ブランドは、マスよりもニッチなファンを取り込む傾向を強めているように感じる。オートバックスセブンが手がけるPRブランドは、まさにその好例だろう。
問い合わせ先/JACK & MARIE https://jackandmarie-store.com/
GORDON MILLER https://www.gordonmillerpro.com/
↓前編はこちら
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取材・文/渡辺和博 スタイリング/小林知典 撮影/村本祥一