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自宅で働く意味、オフィスで働く意味、ハイブリッドワークの最適解を考える

2022.04.08

「テクノロジーで暮らしの豊かさの実現と社会課題の解決を両立し、すべての人々が快適で活き活きと暮らせる社会を創る。」をヴィジョンに、2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。住宅関連事業者やメーカーのみならず、多業種にわたり、国内外問わず大企業・スタートアップ企業が集い、本当に心地良いスマートホームの実現を目指しています。

そんなLIVING TECH協会が2022年2月25日に「LIVING TECH カンファレンス 2021-2022」を開催。業界のトップランナーが熱い議論を交わしたセッション2の内容を抜粋して紹介します。

→右から松岡利昌さん(日本オフィス学会会長)、鈴木メイザさん(オリィ研究所分身ロボットカフェ事業部マネージャー)、河野英太郎さん(アイデミー取締役執行役員 事業本部本部長兼Modeloy事業部 部長COO)、小林暢子さん(日経BP総合研究所主席研究員)

session2:【可能性が広がる②住まいがオフィスになる】これからの住宅に求められる働く場としての機能と役割


ダイジェストムービーはこちら。

Opening sessionの模様はこちら
セッション1の模様はこちら

リモートワークで起こった課題を対話で解決

急速に広がったリモートワークによりさまざまな場所で働くことが可能になった時、どんな課題とメリットがあるのか。ワークプレイスとワークスタイルの専門家である松岡利昌さんと、スタートアップ企業で新しい働き方を模索するアイデミーの河野英太郎さん、オリィ研究所の鈴木メイザさんを迎えてディスカッションを行いました。

ひとつめのテーマは「住まいがオフィスの実情と課題」。スタートアップのアイデミーでは、ほとんどの社員がテレワークを実践しています。スタート当初は順調に進んだそうですが、やはりテレワークによる弊害も出てきたそうです。

「コロナ禍前は、8時に出社して9時に社内会議を行い、その後営業先に向かうとすると、移動などで1時間ぐらいは確保するスケジュールを組んでいました。それがコロナ禍では、朝ドラを観て皿洗いをし洗濯をした上で、自宅で9時にメールチェックができるようになりました。移動時間がないので、予定を午前中にまとめられて、余った時間で別のことをするようにもなりました。

アイデミーは平均年齢20代の会社なので、すぐにリモートワークに対応できたと思っていました。でも若い社員が多いため一人暮らしも多く、メンタルがダウンするメンバ-もいました。朝起きてそのまま仕事を始めるわけですが、ダラダラ仕事していると仕事の時間が段々後ろにずれていってしまいます。このままではまずいなと思ったら、メンタルダウンが複数発生しました。なんとかしなければと思ったのを覚えています。

会社では『Slack』を導入していますが、オンラインの情報交換は、ちょっとでも情報が足りないと、カチンとくることもあってケンカが絶えません。これも若さが出ていることもあるかと思いますが、普通に進むものが進まなくなりました。採用もすべてオンラインで、1年以上勤務している社員でも一度も直接会ったことはありません。中には1度も直接会わずに退職した人もいます。直接会えばわかることがわからず、カラーに合ってない人を配属したりしていました」(河野さん)

「ではリモートワークでメンタルが悪化するのかと考えてみると、やりようによってはそうでもないという調査結果も出ています。そこでまずオンラインでもいいので、1on1の面談を必ず行うようにしました。直属のスタッフは週一回は会うようにしました。3階層あったので、1階層先は月1回、2階層先は四半期に一回などと、面談を必ずやりました。1on1のセオリーは仕事以外のことを話したりするのですが、とにかく何でもいいから話そうと時間を確保しました。

ポイントになるところでは、対面のイベントも実施しました。そしてリモート補助費用を全社員に一律3万円を支給しました。リモート補助金の使い方については、社内会議で指南役みたいな人がプレゼン、Webカメラやヘッドフォンなどの選び方、使い方について解説しました。最初はオタクのこだわりと思っていたことが、実はロジカルに考えられていて、リモートワークの問題点の解決にスムーズにつながりました」(河野さん)

Webカメラの映りをよくすることで動きなどが見やすくなり、オンラインのストレスが軽減したり、対面イベントでは腰痛に悩む社員がイスや姿勢に関する情報を共有するなど、有益なものが多かったと河野さんは語ります。

「アイデミーは、社員の方々がDXというかテックにこだわっていると感じました。大企業でも同じようなことをしている会社はたくさんありますが、自宅のオフィス周りを装備していくまでは、なかなかできていません。

メンタルダウンが多くなってしまうのは、運動ができないことや外に出られないことの影響が大きく、世界中で同じような現象が起きています。年代的にメンタルダウンが一番多いのは年配の人かなと考えがちですが、じつは様々なリサーチで20代の若手が一番危険という数字が出ています。そこの対処をしていかないと、と感じます」(松岡さん)

世界中で議論されている「ハイブリッドワークの最適解」とは

自宅でも会社でもない、サードプレイスのコワーキングスペースなどがたくさん増えた、という松岡さん。

2つ目のテーマとして「ハイブリッドワーク時代のオフィスの在り方」を松岡さんが解説。家が快適に働ける場所になっていく一方で、オフィスと自宅のハイブリッドワーク時代に、オフィスはどうなっていくのかについても大きな課題があります。

「コロナ禍において、まず都市のオフィス化が起きています。コロナ禍前もテレワークはありましたが、定着している段階ではありませんでした。それがコロナ禍で強制的に、ファーストプレイスである自宅で働く在宅勤務をすることになりました。これにより、セカンドプレイスのセンターオフィス(会社)に通うことができなくなりました。

家で働くといろいろ不具合が出てくるし、必ずしも生産性が上がるとも限りません。共働きの場合、ふたりともテレワークをする現象が起きたり、大家族でみんなが家にいるという状況になったりと、大変なことになりました。それにより、サードプレイスである、オフィスでも自宅でもないコワーキングスペースやレンタルスペースをオフィス化にしていくことになります。

これには都心型と郊外型があって、都心にはたくさんできています。郊外型はワークとバケーションを一緒にできるワーケーションなどが挙げられます。どこでも働けるハイブリッドな働き方の現象が日本で起きました」(松岡さん)

ハイブリッドワークの時代に突入し、いまはどこで働くかを決めないといけない状況が世界中で起こっており、そのひとつの解決策として「Activity Based WorkingABW)」という考え方が広がっています。オランダ企業の「VeldhoenCompany(ヴェルデフォーヘン)」がモデルで、アクティビティ(仕事の中身)を10種類ぐらいに分けて、センターオフィスや在宅など仕事の中身で場所を決めていく方法で、機能分化ができるために家でも働けて会社に出社する意味も出るなど、上手な使い分けができるのだそうです。世界中のオフィスが「ABW」を導入し始めているといいます。

「例えばマイクロソフトは、アメリカのシアトルに120棟ぐらいの本社ビルを持っていますが、全員退去させて自宅で働いてもらうことにしました。その時にいろいろな問題が出てきたので3回ぐらいリサーチをしていますが、3回目の調査が2021年9月にワークトレンドインデックスとして発表されました。

これはハイブリッドワークが定着してきて、どちらのほうが働きやすいかという質問です。そうするとオフィス勤務をしている人たちは同僚とコラボレーションできるし、社交的な交流のネットワークができるのでオフィスに出たいと言います。一方で在宅勤務は通勤時間が減らせるし、ワークライフバランスを考えると、家族と一緒にいられるし犬の散歩もできます。同じ会社の社員がふたつの考え方で生産性が上がるという答えが出てしまいました。この現象は『ハイブリットワーク・パラドックス』だと言われ、日本でも同じ現象が起きています。

問題は、この先どうなっていくかですが、ハイブリッドワークをすると出社率をどう決めるかという話が出てきます。オフィスをどう構えて仕事のツールをどうするかはものすごく大事ですが、それ以上に大事なのはルール作りです。どっちで働いてもいいので経営側がルールを決めないといけないのですが、人事制度や働き方のルールはまだそこまでできていません。制度改革が進まないままチャレンジをしているところです。ハイブリッドの時代の新しいモデルは、ひとつではないけれどバランスの取れた様式があるのではと考えています」(松岡さん)

分身ロボットが新しい労働力の開拓と社会改革を進める

福祉分野での活躍がめざましい分身ロボット「OriHime」は、元々はテレワークのために開発されたものであると鈴木さん。

3つ目のテーマは「分身ロボットが働き方を変える」。分身ロボットを開発したオリィ研究所の鈴木さんが、分身ロボットが働き方を変えるということについて実例を交えて紹介してくれました。オリィ研究所は、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」と移動可能な分身ロボット「OriHime-D」を使って、人類の孤独を解消していこうというベンチャー企業。働きかたの可能性を広げる「分身ロボットカフェDAWN ver.β」という取り組みも注目を集めています。

「小型ロボットを見ると、これはAIで動くんですか?と言われることが多いのですが、OriHimeは人間が遠隔操作してコミュニケーションするロボットで『分身ロボット』と呼んでいます。障害者が就労する『分身ロボットカフェ』のイメージからOriHimeに福祉のイメージを持たれる方が多いと思いますが、元々は学校出席やテレワークのために開発されたロボットです。2017年からはNTT東日本さまで在宅勤務される方への導入がスタートし、現在では高度なスキルを必要とされる分野でも有効活用されています。

例えばNTTドコモさまが実施されているスマホ教室ですが、人気講師は全国からオファーが入るので出張が多くなり、ドコモショップ側からするとなかなか開催ができないという状況があります。先日は認定講師の方が遠隔地から「OriHime-D」を操作して、動画の楽しみ方をシニアの方にお教えする教室を実施しました。高い専門性が必要だが、必要なタイミングは限られる、という場合はこうして分身ロボットを使うことで、場所にとらわれずに活躍する場を広げることができるのです」(鈴木さん)

こういった取り組みを経て分身ロボットが接客をする「分身ロボットカフェDAWN ver.β」を2021年6月にオープンさせました。ここでは重度障害を持つ方や寝たきり状態で今まで学校に行くのもままならなかった方など、社会との接点を失っていた方たちが、分身ロボットで働くことで再び社会とのつながりを作ることができました。

OriHimeを使って働く人材をOriHimeパイロットと呼んでいますが、このパイロットが働く場所を世の中に広げていこうと、『AVATAR GUILD(アバターギルド)』という就労支援事業も始めました。関西にお住まいのOriHimeパイロット『まやちゃん』は元々分身ロボットカフェで働いていたところ、モスフードサービスさまからお声がけいただき、今はモスバーガー大崎店ほか数カ所をハシゴして働く売れっ子です」(鈴木さん)

この日、「OriHime」を使ってセッションに参加した福岡県在住の中島寧音さんは、高校2年生の時に当時最年少のパイロットとして渋谷のワイヤードカフェで開催していた「分身ロボットカフェ」でアルバイトを初経験。その経験を同じ病気と闘う仲間や後輩のために伝えたいと、プレゼンの全国大会に出場し文部科学大臣賞を獲得。さらに自分のような障害を持っている子も当たり前に未来を描けるように自分の経験を活かしていきたい、と大学に進学しました。現在は、大学生とパイロットの仕事を両立しています。

「具体的なことはこれから考えていく必要がありますが、大学で学んでいくことを活かして、障害があっても進学や就職など将来の夢を自由に描いて実現できるようにしていきたいです。まずは社会福祉士の資格取得を目指しています」(寧音さん)

「重い障害のため、自分は社会から必要とされていないとか、働くのは無理だとあきらめていた方々が分身ロボットカフェでの就労を通じて爆発的なパワーで活躍しはじめるシーンを非常に多く見てきました。本人だけではなく、周りの人も変えていきます。まさに‟分身ロボットが働き方を変える”ということなのですが、分身ロボットを使って働ける社会というのは、居場所に縛られない働き方が可能ということです。

これを進めると、今までは労働人口として見なされなかった寧音さんのような重度障害の方々も労働市場に参加することができるようになります。健常者にとっても今まで出会えなかった人たちと出会え、影響し合うことで新しい視座を持つことにつながっていきます。これがダイバーシティの最たる価値だと確信しています。『働き方改革』とよく言われますが、本当に必要なのは『働かせ方改革』だと思っています」(鈴木さん)

「ハイブリッドワークでアバター(分身)を使って働くというのは、世界中で進んでいますが、『OriHime』の面白さは立体のロボットでリアリティあるところですね。スクリーン上で動くアバターではなくリアリティがあって、そこが人間とつながっていることが圧倒的な存在感になるのですね。働けない人が働けるチャンスをもらえることも含めて、社会改革につながっていくのだと思います」(松岡さん)

 

セッションの模様は、2022年4月12日~2022年5月16日まで期間限定でアーカイブ配信します。

文/久村竜二

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