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GIGAスクール構想で見えてきた日本の教育現場における課題

2022.04.07

「テクノロジーで暮らしの豊かさの実現と社会課題の解決を両立し、すべての人々が快適で活き活きと暮らせる社会を創る。」をヴィジョンに、2020年4月に発足した一般社団法人LIVING TECH協会。住宅関連事業者やメーカーのみならず、多業種にわたり、国内外問わず大企業・スタートアップ企業が集い、、本当に心地良いスマートホームの実現を目指しています。

そんなLIVING TECH協会が2022年2月25日に「LIVING TECH カンファレンス 2021-2022」を開催。業界のトップランナーが熱い議論を交わしたセッション1の内容を抜粋して紹介します。


左から、福田浩一さん(日本電気株式会社フューチャーマーケット インテリジェンス本部マネージャー/NEC未来創造プロジェクト 未来構想・次世代教育リーダー)、後藤貴史さん(株式会社プレースホルダ代表取締役CEO)、杉山俊幸さん(株式会社日経BP総合研究所 主席研究員)。

オンライン参加の佐藤昌宏さん(デジタルハリウッド大学 教授・学長補佐)

オンライン参加の奥平博一さん(学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校 校長)

session1:【可能性が広がる①住まいが学校になる】学びとテクノロジーの融合がもたらす新しい学習体験

ダイジェストムービーはこちら。

Opening sessionの模様はこちら

「Ed Tech」で新しい「学び」の環境が生まれている

コロナ禍は住まいを“学校”に変え、そこにテクノロジーを活用することで、個別最適な教育も期待されています。さまざまな学び方と選択肢を高校生に提供しようと2016年4月に開校したN高等学校(以下、N高)は、ICT(Information and Communication Technology)を手段とした新時代の学びを提供している学校です。奥平博一校長は学校の概要を語ってくれました。

「私自身は、ICTやインターネットに強かったわけではなかったです。前職で他の通信制高校に従事して、もっと新しい方法で通信教育はできると考えていました。その想いを持って2014年に通信制高校の企画を株式会社ドワンゴに提案しました。その時は、通信制高校の制度を活用すると面白い学校ができるという想いでした。N高は最初1482名でスタートして、2022年で開校から6年が経ちました。2021年4月に開校したS高等学校(以下、S高)と合わせて約2万名が在籍しています。英語・国語・数学・社会・理科・体育といった教科学習の勉強もしますが、それ以外のさまざまなコンテンツを用意しています。

「学び」というのはワクワクドキドキしながら学習するのが原点だと思っています。N高の本校は、沖縄県の伊計島にあります。 ICTを手段とした新時代の学びを提供したいと考えている学校ですが、ICTを使えば沖縄県のローカルで離れた島が、世界の中心にもなれる時代が来ているのかなと思います」(奥平さん)

教育とITにおいては「EdTech」と呼ばれる動きも注目を集めています。「Education(教育)」と「Technology(技術)」を合わせた造語で、デジタルテクノロジーを活用した教育のイノベーションと言われています。デジタルハリウッド大学の佐藤さんは2009年頃から提唱しており、ようやく理解されてきたと語ります。

「『EdTech』の大きな象徴として『教育から学びへ』があります。教育の主語は教える側ですが、『学び』の主語は学ぶ側です。今までの教育は、学校という場で先生という有識者が教育するのが最適解でした。それがみなさんの手のひらの上に来たという大きな変革があります。

私自身は、実務家教員です。自分で起業して会社を興す起業家でもありました。成功体験よりも失敗体験のほうが多かったですが、その失敗体験を活用して、大学教員として日本の教育をデジタルテクノロジーで変えていく目標を持っています。最近は国の委員として教育制度を決めるような教育再生実行会議や各省、東京都、大阪市などで教育改革をするような委員会に出させていただいておりますが、ある意味で「EdTech」は国策になっています」(佐藤さん)。

意志共鳴型社会を目指して

NECは、教育とデジタルを結び付ける取り組みとして、教育現場にデジタル製品やソリューション、授業の提供などを行っています。そして2050年の未来を考える「NEC未来創造会議」は、テクノロジーの領域だけではない、さまざまな有識者や高校生などの次世代と共に、未来の解決すべき課題を考えていくという意欲的なもので、そこでの議論を経て生まれたコンセプトが「意志共鳴型社会」です。他者の理解を通じて自分の可能性に気づき、世界中で仲間を集め、これまで受け継がれてきた歴史を理解しつつみんなで未来を作っていこうという考え方です。

この「NEC未来創造会議」では、高校生がありうる未来を見つつ価値観を熟考し、オンラインプラットフォーム上で意見を交わせるシステムと授業を提供。さらにはそれを教師側が管理できるので、各生徒の進捗やどのくらい発言していたかなどを可視化し、新たに「こういう人がこういう発言をする」という発見もできます。教科学習では測れなかった生徒の良さが新しく見えてくるのだそうです。

「NECでは、2050年を目標にした「NEC未来創造会議」というものを、2017年に立ち上げました。自分たちで作りたい未来を考え、それに対していま何をやるのかを考える活動をしようと、国内外の有識者に入っていただき、実現すべき未来像と解決すべき課題の解決方法を構想しています。

意志共鳴型社会を作るための人材を作ろうということで、2020年からいろいろな活動をしていますが、そこで叶えたかったのが多世代共育です。学生と社会人が一緒に話し合い、新たな価値観を交流することで新たなものを作っていく。みんなで一緒にものを作っていくというのは大きいのかなと思っています。佐藤先生もおっしゃっている『ティーチングからラーニング』を実際に提供して、新しいことを学ぼうということに取り組んでいます」(福田さん)

約9年間のゲーム開発の経験を活かして、プレースホルダを起業した後藤さん。主な事業は、大型ショッピングセンター内で展開している「リトルプラネット」及び自社オンラインサービス、BtoBtoC事業の「エクスペリエンスデザイン」の2つ。エクスペリエンスデザインでは、様々な企業と新しい顧客体験を作っていく事業を展開しています。

「このふたつの事業でシナジーを生み出しながら弊社の『アソビでミライをつくる』というミッションで、教育というより遊びが学びに変わるエンターテイメントに寄ったところから発信・ビジネスをやっています」(後藤さん)

「GIGAスクール」構想から見える日本教育の課題とは?

ICTにより学校でも家でも学べる環境ができてきています。教育現場におけるICT活用の象徴が「GIGAスクール」構想。政府が公立の小・中・高校に向けてひとり1台の端末供給と学校の高速インターネット化、データを載せるクラウドの環境整備などを整えるために巨費を投入するという大英断を下しました。その一方で本当にICTを活用した「学び」が実践できているか懐疑的な見方もあり、課題も生まれています。

「先進国で『GIGAスクール』のような大きな取り組みをした国はほかにありません。これが2019年12月にスタートしましたが、実際に上手に使えているのかという観点からはまだ道半ばだと思います。成し遂げたい世界というのは、いつでもどこでも誰でも学べる環境を作るということです。

いまは『Youtube』やインターネットの大海の中にものすごい知識がたくさんあります。そういったものを自分でカスタマイズしながら引っ張り出して、いつでもどこでも誰でも学ぶ環境はできてきています。不登校は8年連続でどんどん増えています。通信制とその先のオンラインを使った通信制ということで、N高校さんは学生がすごく増えていますが、いつでもどこでも学べる多様化している子供たちの居場所という意味でも、ニーズがあるという調査のひとつじゃないかなと思います」(佐藤さん)

「教育はなんのために受けるのかと考えたら、知識とスキルを身に付けて世の中にどう接触していくかが目的です。しかし、いまの学校教育というのは、何を習得したかというよりも、どこで誰と学ぶかが優先されているように思います。

2016年にN高が開校した時、通信制でオンラインで学べるという点に対して懐疑的になっている方もいらっしゃいました。教育の本当の目的を考えたら学び方は多様であっていいはずなのに、方法論や場所にこだわる方もいらっしゃると思います。学校運営をしていて、教育というのはここで受けるべき、誰から学ぶべきという固定概念はいまでも存在していると感じます」(奥平さん)

「僕たちの取り組みはデジタルを活用し、他地域の学生や年代が違う多様な人が、時空間を超えていつでもどこでもつながれることが特徴でした。社会人と同じタイミングで会って話すことは難しくても、オンラインツールを使えば、時間の壁も超え意見を交わせますし、これはデジタルの強みです。

さらに私たちはデジタルと人の意識を同時に上げていくということを重要視しています。人の意識に関しては親と話す機会が増えたという生徒の話がありました。授業の内容を、授業内で議論した画面を見つつ親と会話することで、親の教育意識や子供の理解度も上がりますし、家族全体のWell-beingにつながると思います。デジタルの恩恵はすごくあると、実際に授業を提供した生徒の言葉を聞いて感じました」(福田さん)

「『リトルプラネット』を運営していて大事だと感じていることは、人間関係の超越というかコミュニティです。例えば普段の学校や一定の地域に住んでいるとコミュニティは固定されがちですが、『リトルプラネット』に来る人は、学校が同じだから来ているわけではなく、公園のようなノリで来ているので、普段とは違う人間関係が自然に発生する光景をよく見ます。

そういうところで趣味嗜好が近い仲間を見つけたり、そこから友だちになって何か物を作ったりとかに発展するということは、リアルよりもデジタルだと、より促進されやすいと感じます。義務教育とは別の非認知教育みたいなEQ(Emotional Intelligence Quotient)と呼ばれているようなところは体験しないと身に付きにくいですが、そういうところもデジタルならEQに近い体験が作れます。

私たちは「遊びが学びに変わる」というコンセプトを持っているので、教育や学習ができる場所ですと言っているわけではなくて、あくまで子供同士で楽しく遊ぶ、あるいは親子が一緒になって遊ぶというところから、自然に学びの要素みたいなものを自分で学んでいただき、コミュニケーションが自然に生まれてくるところがすごく大事なのかなとは考えています」(後藤さん)

テーマである「住まいが学びに、住まいが学校になる」については、ICT活用や画一化された教育からの脱却は大きなカギに。その意味では多様性の相乗効果として、さまざまな試行錯誤や公的機関と企業のコラボレーションなど、やることはたくさんあります。

「公教育は非常に変わりにくいというのは、皆さんがご存じのとおりです。それは教育の一定の品質保証をしっかり責任を持って国としてやらないといけないからですが、それがある種の既成概念のように凝り固まるところがあります。いまは時代がどんどん変化していますが、そこに合う制度を作るというのが今やっていることです。

そういった意味で異業種の交じり合いは公教育を変えていくひとつの動きになっていくと思います。非認知の部分に関しても、ペット型ロボットがAIやセンサー技術がものすごく上がって、人間がペットに感情移入するぐらいよくできている。こういったものが子供たちにどう影響を与えるのかという実験が国内であったりします。

マンションでペットが飼えない家のひとりっ子に向けて、ペット型ロボットを置くことでさまざまな感情認知を非言語で伝えていることになるんですよね。それは今までペットや兄弟などでしか培われないと思っていたものが、機械やテクノロジーを通して非認知能力まで感じたり体験できたりします」(佐藤さん)

「私たちはリアルな施設を持ちながらデジタルもやっていますが、最近は家の中に入り込んだ体験を実証実験としてやっています。自宅では、リビングにテレビやゲーム機が置いてあり、そこが遊び・学びの中心でしたが、それ以外の場所、例えばお風呂やトイレなども、遊び・学びの空間にできるのではないかと考えています」(後藤さん)

「学習指導要領を遵守することは大前提ですが、教育の目的はいかに学びを社会に接続していくかだと思っています。当学園は教育課程外のコンテンツをたくさん持っていますが、そこで講義をしてくださっているのは佐藤先生のような実務をされている方々です。

実際に社会の中で働かれている方に、最新の知見を授業で生徒に提供していただくことを非常に重視しています。教育以外の業種の方を講師にお招きして、もっと社会に開かれた教育をしていく必要性があると考えています」(奥平さん)

家庭や学校でさまざまなデータを収集し、個別のデータなどを「学び」に活用していく可能性は出てきています。データ活用については、個人情報の取扱いと管理も大きな焦点となり、すでに議論されています。その点は今後の課題とも言えます

「個別最適化という言い方になりますが、学習者というのはひとりひとりが学びたいものが違うかもしれないし、特性が違うかもしれない。それぞれに優位特性というものがあって、それをひとりずつに合わせる教育ができなかったから、トレーニングされた先生が教室で一斉授業という形で教えるのが、これまでのある種の最適解でした。

現代の最適解は、それぞれの状態をデータファクトに基づいて見取って理解し、それぞれのやり方を自動的にAIや機械がレコメンドしてくれる仕組みです。もちろん最後に人間が進捗やモチベーションが下がってないかを見ます。

こういったものの基盤になるのがデータで、これが一番たまるべきところが学校教育です。本来は蓄積されるはずなのに、全部ストックされずにフローされているのがいまの状態です。このデータは国の教育のあるべき方向を示すための財産にもなりかねない。どういった形で安全に学習者が自分の成長のためにデータを使うという理解をしてもらって蓄積し整理しています。

データに関しては非常に大事なことではあるので、短期的にできることは少なくて、中長期的にデータの標準化やセキュリティなどあるべき姿やデータをなんのために使うのか、ということを整理しているのが今の状況です」(佐藤さん)。

学びが多様化すると親子の会話も増える

「学び」の多様化では、親子のコミュニケーションも増えているそうです。

「N高では家庭で勉強できますので、親子のコミュニケーションも深まります。親御さんは子どもが外にいる方が勉強になると思いがちかもしれませんが、家庭の中で家族がもっと楽しめる部屋とか設備というものがあれば、ますます学びというものが楽しくなると考えております」(奥平さん)

「親と話す機会が増えたと生徒に言っていただけたことが一番よかったのですが、つまりはデジタルで『職住楽学』を家の中に取り戻し始めてきたということが一番重要だと考えます。人は多くの作業や責任を、お金等を使うことで外部化してきました。一度外に出してしまった教育をもう一度家の中に取り戻して、親が子供を教育するんだというところに少し意識を向けてもらいたいなと思っています」(福田さん)

「私たちはリアルな場所で親子の楽しむことをすごく意識していて、あまり子供の遊具だと思って開発していません。自分自身がやって面白いかどうかがあって、そこから親子で遊んで気づきがあって、そこで創造力を発揮してもらうことを意識して開発しています。子供にこれをやらせたいというより、子供が興味を持つから一緒にやろうとか応援してあげられる環境をすごく自然に作れるような家の在り方や親子の関係性と環境作りをしていければと改めて思いました」(後藤さん)

「現場実践を一番にリスペクトしています。現場で子供たちを見て、テクノロジーを上手に使いながら子供たちの未来を考えているシーンがたくさんあります。その実例や実践事例をたくさんみせていただきたい。それによって公教育側の既成概念になんらかの揺り動かしをしていければと思っています。時間がかかるかもしれませんが、いまはすごくチャンスです。

そのチャンスのひとつにコロナ禍の影響があったと思います。僕たちも家で仕事はできないと思っていたことが、今日もこうしてつながっているようにできます。テクノロジーでできることと対面フィジカルじゃないとできないこと。それが何なのかと考えていくことが僕たちのこれからの知恵であり、教育の既成概念を壊す大きなヒントになると改めて思いました」(佐藤さん)

「学びがずいぶんいろんなところに多様化している一方で、家の中に入っていくと親子の関係すら変えていく。一方でいま親子の関係について、学びなどを起点に関係が変わっていって、豊かな日常になっていけばいいなと思います」(杉山さん)

セッションの模様は、2022年4月12日~2022年5月16日まで期間限定でアーカイブ配信します。
セッション1 https://youtu.be/G7xdeCMmFHA

文/久村竜二

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