■連載/ゴン川野の阿佐ヶ谷レンズ研究所
カワセミは都心に生息して、遠出しなくても撮影できるので鳥の中では人気の被写体である。我々もカワセミを追いかけて、方々に出掛けている。最初のうちは水辺の宝石と言われた、その瑠璃色をカメラに収めるだけで満足しているのだが、しばらくするとエサの小魚かエビを狙ってダイブする瞬間、または水面から出てくる瞬間を狙いたくなる。
必要なのは高速連写性能で20コマ/秒より30コマ/秒が欲しくなる。着水するポイントが決まっていない場合はAF追従で使いたい。最近のミラーレスカメラに搭載されている鳥認識機能も役に立つ。カワセミは小さい、そして高速で飛ぶため目視で追従するは困難なのだ。さらに動きを止めるために1/6000秒とか1万分の1秒などを使うため、高感度特性が良い必要性がある。
飛翔中のカワセミを画面一杯に入れるのも難しいので、引き気味で撮ってトリミングすることになる。そこでトリミング耐性がある、つまりフルサイズが有利になる。各社のミラーレスから、カワセミ撮影に適したモデルとレンズを選んで、実際に撮影して、どんな作例が撮れるのかを検証してみたい。第2回はCanon「EOS R3」で試してみた。
未来を感じる視線入力&30コマ/秒の高速連写
第1回 SONY「α1」編はコチラ
カワセミ撮影に最適なCanonのミラーレスと言えば、「EOS R3」である。裏面照射積層CMOSセンサーとDIGIC Xが実現した最高約30コマ/秒でのAF/AE追従の高速連写機能。AFのエリアは1053分割され、視線入力機能を搭載、視線によるAFフレームの移動を実現。犬、猫、鳥に対応した動物優先があり被写体を自動追尾してくれる。重量級レンズに対応するタテ位置グリップ一体化デザイン。スマートコントローラーとマルチコントローラーを搭載したインターフェイスなど、至りに尽くせりのボディに大容量バッテリーを積む。1日3200枚撮影しても余裕の電池残量があった。
まさにカワセミ撮影のために生まれてきたようなモデルなのだ。組み合わせたのは以前、紹介した「RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM」である。500mmで重さ約1.3kgの軽さが魅力の超望遠ズームだ。
カメラの表面に貼られたラバーの模様がシボ革ではくドットなのが斬新でグリップ感もいい
記録メディアはCFexpress TypeBとSDカードのデュアルスロットを採用
バッテリーはEOS-1D X系と同じLP-E19を採用。ボディに入れたままUSB-Cケーブルで充電できる。モバイルバッテリーにも対応
視線入力をするに設定。キャリブレーションをおこなうとさらに精度がアップする
視線がどこにあるのかを示すポインター表示、これを設定しないとポインターは非表示になる
SONYの200-600mmと比較すると小型軽量を実感できるCanonの100-500mmのズームレンズ
三脚座を取り外して重量1370gと軽量。500mm側にするとレンズ全長は長くなる
カードリーダーがなくてもMac miniとUSB-Cケーブルで接続して専用アプリでデータを転送できる
進化した視線入力は思ったより快適!
2004年に銀塩一眼レフ「EOS 7s」で採用された視線入力は、その後継機が生まれることなく歴史の闇に消えていったと思っていたら、EOS R3で目出度く復活。その実用度は格段に向上していた。私はキャリブレーションをおこない、写真家、小平尚典氏はキャリブレーションなしで撮影したが、見た位置にポインターがスッと移動してピントが合う。これは便利、モデル撮影やスナップなら、ほぼターゲットを外すことはないと思う。
カワセミは小さくて新幹線のように高速移動するので、目で追えないことがあり、その場合せっかくの視線入力も宝の持ち腐れになる。また、手前に細かい枝が沢山あるようなシーンでは、カワセミを見つめることが困難だった。意外だったのは視線入力でカワセミを捉えたのにAFが合わないことがあった。原因は不明だが、1日3400枚以上撮影して3回ぐらいしか発生しないので実用上は問題ないだろう。結論は飛翔中のカワセミは追えないが、止まったり歩いたりしているカワセミに視線入力は有効、そして、通常の撮影では常時ONで使えるほど完成度は高い。
視線入力も鳥認識も使えるサイズのカワセミ。ISO25600と高感度だが発色はいい
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/4000sec F7.1+1 ISO25600
飛び立とうとするカワセミ。この姿勢は肉眼で見られない、高速連写機能が捉えた一瞬だ
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/2000sec F7.1 ISO6400
飛翔中のカワセミ。このサイズなら手前に邪魔モノがあってもAFが追従される
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/4000sec F7.1+0.67 ISO8000
今回のベストショット。400mmで撮影したものをトリミング、鳥認識でAFが追従している
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/3200sec F6.3+6.3 ISO8000
2日間で6844枚を気分良く撮影
EOS R3はホールドするとグリップがいい。タテ位置はほとんど使わなかったが、タテ位置グリップも手にしっくりとくる。Nikon「Z 9」は重そうに見えてズシリと重いが、R3は意外に軽いのだ。実際1340gと1015gと300g以上R3の軽いので、当たり前だが、これは嬉しい。今回はレンズも軽かったのでトータルでは前回のSONY「α1」のシステムよりも軽量で取り回しが良かった。
EVFはアイピースが大きく明るくなめらか、インターフェイスは銀塩時代のEOSから継承されているため、マニュアル不要でサクサク操作できた。グリップは深く、操作ボタンの間隔にも余裕があるためボディは大柄になるが、操作性は向上している。大容量バッテリーのおかげで電池切れの心配もなかった。撮影枚数は2日間で6844枚と大量になったが、USB-Cケーブル経由で無事Macに転送できた。α1よりもいい瞬間が撮れた実感があり、高感度にも強い印象を受けた。鳥認識は優秀で追従性も良かった。連写性能も高く充実したRFレンズの超望遠のラインナップを考えるとカワセミ撮影最強システムはCanonで最適なボディは「EOS R3」と言える。
着水するカワセミを連写できたが、ピントが合っているのはサギの方だった
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/8000sec F5.6-1.67 ISO8000
同じ撮影設定で、より難しい枝の中を飛ぶカワセミの連写でAFが追従する場合もあった
Canon EOS R3 RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM 1/3200sec F6.3 ISO8000
写真・文/ゴン川野