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多くの企業が新しい働き方「バーチャルアサインメント」に注目している理由

2022.03.08

コロナ禍により、新しい働き方への関心が高まっているが、中でも国をまたいだリモートワーク・人材活用といった「バーチャルアサインメント(バーチャル駐在員)」がにわかに注目されている。

バーチャルアサインメントとは何か、企業や従業員のメリットとは? 有識者の解説の下、紹介する。

「バーチャルアサインメント」への関心が高まる

2022年1月、EYが発表した海外赴任者・出張者の実態調査・分析する「EYモビリティサーベイ」の結果、今後の赴任計画については、回答者の46%が「コロナによる影響はない」、28%が「赴任者を増やす方向に動くと思う」と回答。赴任者数の減少は一時的なものであり、長期的な海外赴任計画への影響は大きくないことがわかった。

また、新しい働き方への関心が高まっている傾向が出ていた。そのうち、近年「バーチャルアサインメント」という働き方に注目が集まって集まっている。これは、海外へ渡航や居住をせず、日本に居住しながら、海外拠点の仕事に100%従事することを指す。

バーチャルアサインメントの導入・検討状況について尋ねたところ、「既に導入している」「導入に向けて検討中」が回答者の16%、「導入は検討していない」が42%という結果に。また、「興味はあるが具体的に動いてはいない」は34%で、新しい働き方への関心は高いものの、実際に導入・検討を行う企業はまだ少ない傾向が出ていた。

ただし、自由回答の「海外赴任・海外からの人員受け入れに関し興味・関心のあるテーマ」では、バーチャルアサインメント導入時の課税や、国をまたいだリモートワーク、グローバル人材活用といった新しい働き方・雇用形態について関心を寄せる企業も多い傾向が見られたという。

コロナ禍はそれほど海外赴任者の減少に影響せず、むしろ新しいバーチャルアサインメントなどの働き方への関心を高めたようだ。

バーチャルアサインメントの導入業種・業界

本調査を実施したEY税理士法人の税理士、藤井恵氏にバーチャルアサインメントについての実状を尋ねた。

バーチャルアサインメントは、海外・日本では実際、どのような業種・業界で導入されているのか。

【取材協力】

藤井恵氏
EY税理士法人 ピープルアドバイザリーサービス パートナー 税理士
神戸大学経済学部卒業後、大手証券系シンクタンク、三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2019年10月より、EY税理士法人に入社。著者に「すっきりわかる!海外赴任・出張 外国人労働者雇用」(2019年 税務研究会出版局)、「六訂版 海外勤務者の税務と社会保険・給与Q&A」(2018年 清文社)等著書多数

「バーチャルアサインメントを導入している企業は、IT業界など、インターネットを介して、ある程度仕事が完結できる業種が多いといえます。

IT以外にもコンサルティング会社や、以前からリモートワーク環境を整えている企業などは、物理的に実施することは可能です。コロナ禍で海外赴任者を日本に一時帰国させ、帰国中も赴任先の業務を行わせている企業は多数あります。その意味で、今や、なし崩し的ではありますが、多くの企業でバーチャルアサインメントが行われているといえます」

バーチャルアサインメントの企業と従業員のメリット

そもそもバーチャルアサインメントは、企業と従業員にとって、どのようなメリットがあるのか。藤井氏は次のように述べる。

●企業にとってのメリット

・有能な人材を場所を問わず採用できる

「これまでなら、地方の企業は、近隣に居住する人材しか採用できませんでした。しかしバーチャルアサインメントが進めば、言葉の問題、時差の問題等をクリアすれば世界中どこからでも有能な人を採用することができます」

・コストの大幅削減が可能

「従来は、海外赴任者として海外勤務に伴う各種手当や、引っ越しに伴うコスト、現地での住居費、帯同する子女の教育費などを会社が負担することで、当該社員を日本国内で雇用する場合の2~3倍以上のコストをかけて人を派遣していました。

バーチャルアサインメントの導入で、日本にいながら海外の業務に従事してもらうことができることで、海外への居住場所の移動を伴うコストを大幅に減らすことが可能です」

●従業員にとってのメリット

・自分の好きな場所で、自分の目指すキャリアや経験を積める

「引越しを伴うことなく、自分の適性やこれから積みたい経験に見合った業務を行うことができます。海外転勤に伴い、配偶者が仕事を辞める必要もありませんし、子どもを日本に残して単身で赴任する必要もなくなります。

自分の好きな場所で、自分の目指すキャリアや経験を積むことができます」

バーチャルアサインメント導入の必要性

EYは、調査の結果を受け、「コロナ禍が長引けば、バーチャルアサインメントの勤務形態の導入も検討する必要がある」とコメントしていた。その必要性の背景とは?

「バーチャルアサインメント自体、新しい働き方であるため、これまでの税・社会保険制度・イミグレーション関連の枠組みの中では、簡単に解決が難しい問題も多数あります。例えば従業員の税金はどの国で払うのか、法人としてそのような働き方を認めることで、法人自体の税務リスクは生じないのか、どうやって雇用管理や評価を行い、自社への帰属意識を高めるのか、機密管理はどうするのか、といった問題が山積みです。

そのため、企業としてはその点のリスク管理がきちんとできる保証がない間は、積極的に受け入れたいとは思わないのが自然です。

しかし、世界レベルでの人材獲得競争が進む中、『リスクがあるからそのような制度は取りたくない』というスタンスでは、先駆けてリスク分析し、リスクコントロールを行うことで、そのような働き方を受け入れる体制作りを行っている企業との間では、人材獲得競争において差が開くばかりです。そのため、有能な人材を獲得したいという企業においては、検討せざるを得ない課題であることは間違いありません」

海外に行かずして海外赴任の業務が行えるのは、多くのメリットがある。一方でリスク管理の面ではハードルは高いようだ。そのリスク管理面をいかに解決できるかによって差が出ることは間違いない。働き手として今後、企業を見極める際にはバーチャルアサインメントを導入しているという点も一つの指標となりそうだ。

出典:「EY調査、新型コロナウイルスの海外赴任への影響や赴任者コストに関する実態が明らかに

取材・文/石原亜香利

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