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倒産した中小企業に共通する経営者の特徴【前編】

2022.02.22

■連載/あるあるビジネス処方箋

 今回は、倒産した会社の社長の特徴を私の考えで紹介したい。このような社長をはじめて取材したのは、1998年。当時は金融不況が深刻で、経営が安定していた銀行や証券会社も倒産した時代だった。20代後半だった私は借金で苦しみ、夜逃げをした社長から、自殺した社長の遺族まで約15人を取材した。主に社員数が300人以下の中小企業で、売上が減り、資金繰りのめどが立たずに銀行取引停止になるパターンだった。

 この頃から現在に至るまで、倒産した中小企業の計60人程の社長と取材を通じて接したが、いくつの共通項がある。主に以下の点だ。

銀行への批判を繰り返す

 最も目立つ特徴だ。メインバンクの支店長や融資担当者への恨みや憎しみ、怒りが強い。経営者である自分に落ち度があった、とは絶対に言わない。通常、銀行が融資の申し出を受けても、満額融資をしないのは何かの理由があるからである。その大きな理由は、融資を申し出た会社の社長の経営能力が、銀行の求めるレベルに達していないからだ。例えば、日頃から人材の採用、定着、育成の仕組みづくりを怠り、安定した売上を維持することができないことがある。ところが、そんな自分を責めることはまずしない。常に銀行を批判する。「あの担当者は、うちを裏切った」「だました」などだ。

社員を批判する

 通常、中小企業が倒産する前には社員への賞与支給の額や回数が減ったり、毎月の給与の支払いが遅れたりする。これらは社員からするとはなはだ迷惑であり、重大すぎる問題なのだ。例えば、賃貸マンションの家賃や車のローンを決められた日に払えなくなる。子どもの教育への投資にも影響があるかもしれない。本来は、社長は全社員に丁寧な説明とお詫びが必要だ。そのうえで今後の経営再建のめどを説明し、理解をえないといけない。

 だが、倒産した会社の社長のほぼ全員がなぜか、社員を非難する。「あんな奴らは信用できない」「使えない社員が多かった」と信じがたいことまで言う人もいた。「自分がふがいなく、皆に迷惑をかけ、お詫びをしたい」と言った人も1人もいない。常に自分が犠牲者で、社員が加害者と言わんばかりのことを繰り返す。

取引先への配慮がない

 商取引をする相手である会社や個人にも何らかの迷惑や負担をかけたはずなのだ。例えば、支払いが遅れたり、特に倒産寸前の時期は支払えなかった場合もあるだろう。だが、説明やお詫びをしない。それどころか、「あの取引先は月末にうちに支払ったが、あと数日前に支払うべきだった。そうすれば資金繰りができて、倒産しなくともすんだ」と相手を責める。ここでも、常に自分が被害者で、相手が加害者なのだ。

苦労を語ろうとする

 倒産に至るまでにいかに自分がだまされたか、それをいかに乗り越えようとしたか、だが、銀行や社員、取引先がいかにそれをぶち壊したか。これらを語るのも大きな特徴だ。絶対に自分を責めることをしない。常に他者を責める「他責」だ。日頃、さんざんと「自分に厳しくあれ!」と社員たちに発破をかけていたのは、やはり、パフォーマンスでしかなかったのだろうか。すくなくとも、その言い分と行動には大きな矛盾はある。

 自身の苦労を語る以前に、迷惑をかけ、相手や周囲を苦しめたことを語るべきだが、そんな社長を見たことがない。

家族のことは語らない

 実は、倒産した会社の社長はある程度のお金は持っている。社員たちよりは、現金や土地、株式などの資産は間違いなく多い。家を抵当にして、借金をした銀行に返済ができないがために家を差し押さえられたとしても、依然として相当な資産を持っている場合がある。倒産の前、つまり、経営難の時に弁護士や税理士に相談し、自らの資産をいかに守るかを話し合い、対策を練っているケースが圧倒的に多い。例えば、法律上、妻とは離婚し、その妻に土地や株式を大量に持たせる。そして、倒産時に自分は自己破産をする。実際は破産後もそれまで通り、夫婦で生活していた社長もいる。あの手この手で資産防衛をするケースは実に多い。取材時に家族のことは深く語らないのは、これらをおおやけにされては困るからだろう。

 今なお、新聞やテレビ、雑誌、ネットニュースは中小企業の倒産を悲劇的に報じる。苦労を語る社長の言い分を鵜呑みにしている報道もある。はるかに社員や取引先、銀行のほうが倒産の深刻な被害を受けたはずなのが、なぜか、その言い分をきちんと詳細には報じない。本当の被害者とは、誰なのかとあらためて考えるべきではないだろうか。

文/吉田典史

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