心理的安全性の低さから起こるトラブル
職場の心理的安全性が低い場合は、さまざまなトラブルが生じてしまうでしょう。主なトラブルやリスクを知り、心理的安全性が高い環境の重要性を意識することが大切です。
不安によりさまざまなリスクを誘引
心理的安全性の提唱者であるエドモンドソン教授は、心理的安全性に関わる4つの対人リスクを定義しています。自分の発言に対して、無知・無能・ネガティブ・邪魔だと思われる不安が、具体的な対人リスクです。
心理的安全性が高い職場では、上記4つの不安を感じずに済むという意識がメンバー間で共有されているため、各人が思い切った発言を行えます。
一方、心理的安全性が低ければ、これらの不安は払拭(ふっしょく)されません。組織にとって有益な意見が出なかったり、ミスが報告されなかったりと、さまざまなリスクを誘引してしまいます。メンバーのパフォーマンスや生産性の向上につながるとはいえない状態です。
改善意識やモチベーションが低下
組織やメンバーの問題点を改善につなげるなら、問題点や改善策をメンバー同士で共有する必要があります。問題点に気づいたメンバーは、積極的に発言しなければなりません。
しかし、自分の発言がネガティブだと思われることに不安感があれば、問題点を指摘する発言は生まれないでしょう。メンバー間で事なかれ主義が助長され、改善意識も低下してしまいます。
組織全体のモチベーションが低下しやすくなることも、心理的安全性の低さがもたらすデメリットの一つです。チャレンジに対してリスクを強調する雰囲気が強まれば、各メンバーは失敗を恐れて無難な方向に流れやすくなります。
ミスをしないことや波風を立てないことが重視される職場では、メンバーの仕事に対する熱意が高まることはないでしょう。
離職率上昇や組織的リスクが高まる
心理的安全性が低い職場では、各メンバーが自分の言動に対して常に不安を感じる状況になっています。不安によるストレスが増していくにつれ、職場にいること自体も苦しくなっていくでしょう。
離職率が上昇し、メンバーが会社に定着しにくくなると、企業の存続すら危ぶまれてしまいます。どのような人材を雇い入れても、長期間働いてくれないという悪循環が生じかねません。
組織的リスクが高まる点にも注意が必要です。非難を恐れて重大な問題や失敗をメンバーが隠すようになれば、組織として後に大きな損失を被ってしまう恐れがあります。
心理的安全性の高い関係を作るコツ
メンバー間で心理的安全性が高い関係を構築するためのポイントを紹介します。職場における心理的安全性を高めたいときの参考にしましょう。
上司と部下で一対一で話す時間を持つ
チーム内の心理的安全性を高めるためには、上司と部下の間に信頼関係を構築することが重要です。部下が上司に対して率直に発言できるようになれば、チーム内での発言にも気後れしにくくなります。
上司と部下の関係性を強める有効な方法が、両者における一対一の対話です。プライバシーを確保できる場所で、各メンバーとじっくり話せる時間を定期的に設定しましょう。
一対一の対話を行う際は、上司が一方的に質問するのではなく、部下が主役となり話をしてもらうことがポイントです。上司はあくまでも聞き役に徹し、発言するときはリーダーとしての立場から常にサポートする姿勢を示しましょう。
感謝の気持ちを伝える
組織に貢献していることを各メンバーが実感できるようになれば、心理的安全性はより高まりやすくなります。メンバー間で感謝し合える文化を醸成することも重要です。
メンバー同士が感謝や称賛を送り合える仕組みに、『ピアボーナス』と呼ばれるものがあります。普段の業務における行動や結果に対し、メンバー間で評価し報酬を送り合える仕組みです。
ピアボーナスが運用可能なツールを導入すれば、メンバー間で感謝の気持ちを気軽に伝えられるようになります。多くの大手企業も導入しているピアボーナスの運用を検討してみるのもよいでしょう。
自由に意見を出せる場を設ける
心理的安全性の有効な改善策としては、メンバーが自由に発言できる場を設けることも挙げられます。意見交換できる機会を組織的に設ければ、発言への耐性が身に付き、メンバーから本音を引き出しやすくなるでしょう。
ミーティングでの緊張感が高くなりがちなケースでは、ミーティング前に雑談やミニゲームができる時間を作り、メンバーの緊張をほぐしてあげるのも一つの方法です。
職場でメンバーから率直な意見が出にくいなら、業務を離れて本音を語り合える場を設ける方法も効果があります。研修や食事会の実施を検討してみましょう。
構成/編集部