「聴く力」と「対話」がイノベーションへとつながる
──奥山さんは相手の話を聴き、違いを認め合い、対話することを大事になさっているそうですね。
「『聴く』『対話をする』は私の信念で、個人的には雄弁に説得し、論破するというスタイルはリーダーが最もやってはいけないことだなと感じています。私も外資系企業で長く仕事をしてきましたので、プレゼンテーションやコミュニケーションはガンガンやってきましたが、雄弁に説得し論破するのは〝すでに自分が知っていること〟を繰り返しているだけなんです。
しかし、耳偏に目と心と書く『聴』、つまり五感を使って聴くと、新しい可能性を発見する力になります。聴く力と対話があれば、自分が知らなかった知識が入ってくる。それを自分の知識と組み合わせることで、新しいソリューション、気づき、イノベーションが生まれるわけです」
──それは今までのキャリアでの経験が大きかったのですか?
「マーケティングや経営の仕事で大事にしてきたのは、生活者の声を聴くことでした。しかもただ聴くのではなく、なぜそういう発言をされているのかという〝WHY〟を探ることがいつも新しいヒントをもたらします。ですので、生活者の課題は何か、声を聴き、寄り添い、〝WHY〟を探すことはグーグルでも続けています。
私は代表就任以来、チームの皆に『今のビジネスの状況はどうなっていますか?』『それはなぜか?』『何が機能して、何が機能していませんか?』『あなたは何を変えていきたいですか?』『私に何を期待していますか?』という5つの質問をしつこくしてきました。そこから見えてくる現状と期待値、それがあって初めて『日本のローカルカンパニーになる』というビジョンや指針、ステートメントが見えてきたのです」
視覚障害のあるランナーを支える研究開発プロジェクト
スマホの画像認識モデルにより地面に引かれた線を認識して音声で伝えるシステム。東京パラリンピック開会式でも使われた。
小中学校で学ぶ児童と生徒の創造性を育むChromebook
1人1台のPCを使い、教育データを収集・分析し最適化された学びを提供する〝GIGAスクール〟で多くの学校で採用が進んだ。
デジタルスキルが習得できる“Grow with Google”
ビジネス、キャリアアップ、就職、教育など、すべての学びたい人がいつでも無料で学べる様々なプログラムが準備されている。
〝今〟にフォーカスし、問う力、学びを大切に
──読者へ、奥山さんの経験から得たアドバイスをいただけますか。
「30〜40代は一番忙しく、将来も不安ですし、過去の後悔もたくさんあるでしょう。しかし、今にフォーカスするマインドを持って、時間を使っていただきたいです。人間という特殊な動物は、起きている70%以上の時間を過去か未来について考えることに使っていて、今にフォーカスする力があまりないんだそうです。とはいえ、過去を振り返っても取り戻せませんし、将来像を描くのはいいことですけども、未来を心配しすぎても何が起こるかわからない。ですから今、目の前にあるプロジェクト、自分の大切なプライベートなことをとことん大事にして、期待値以上の成果を出し続けることにパッションを持ってほしいですね。その結果が自分のレガシーとなってキャリアの進捗につながり、プライベートでも幸せが続く原動力になると思うんです」
──先ほど日々全集中されているというお話もありましたね。
「そうですね。そして2番目は、解決力よりも問う力を磨くことです。『そもそもの課題は何なのか?』『どうすればこういうことができるだろうか?』と課題を設定し、問い続けられる力を磨いていただきたい。課題がショボければ、プランも打つ手も結果もショボくなる。しかし、それを高いレベルに設定できれば、結果もおのずと変わってきます。AIは課題を解決できますが、課題をつくることはできませんよね。問うのは、人間にしかできないことです。
そして最後は、知の引き出しを増やすことです。新しい発想やイノベーションは発明である必要はなく、既存の点と点をつなげる力だと言われますが、残念ながら目の前に見えている点と点はすでに誰かがつなげている。なので、遠い点をどれだけ見つけられるかが大事で、それには知識の引き出しを増やさなければいけない。学びはライフジャーニーです。自分が専門としている分野だけではなく、知識の幅を広げ、掘り下げていくことが、突拍子もない点と点をつなげる訓練になる。そうすることで良い発想が出てきやすくなるのではないかと思います」
──グーグルが日本でオフィスを開設してから今年で20年ですが、今後20年の目標は?
「人間で言うと成人式ですよね。今後は大人として地に足のついた振る舞いをする、そのためにエンドユーザーの方々の役に立つ意義のあるイノベーション、日本のDXを加速していきたいですね」
過去の振り返りや未来への不安よりも今、目の前の課題に集中してほしい
取材・文/成田 全
豪華付録10インチ電子メモパッド付き!DIME最新号は「2022年トレンド大予測」と「2021年ヒット商品総まとめ」の2大特集
DIME2・3月号の特別付録は、仕事でも家庭でもいろいろ使える特大10インチの電子メモパッドです。
絵や文字をたっぷり書き込める、特大の10インチサイズながら、厚さ6mm、重さ143gと、薄型&軽量で持ち運びやすいのが特徴。しかも約10万回書き換えが可能です。
フックに引っかけたり、紐で吊るしたり、専用ペンを支えにして立てかけたりと使い方はいろいろ。
画面サイズの大きな電子メモパッドは、会議やテレワークのノートとして使えるだけでなく、伝言板、備忘録、電話メモ、メニューボード、筆談ツール、さらには、子供のお絵描きや漢字練習など、実に様々な使い方ができるスグレモノ。
特に、リモートワーカーは、モバイルPCとこのメモパッドがあれば、仕事も十分事足りるはず!
あると便利な「デジタルメモパッドPRO」、ぜひご活用ください!
さらに今号にはもうひとつの特別付録「大人の贅沢マスク」が付いています。
こちらもぜひご活用ください!
【オンライン書店で購入する】