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「聴くことが新しい可能性を生み出す」グーグル合同会社・奥山真司代表インタビュー

2022.01.01

奥山真司氏

グーグルが初めての海外法人を日本に立ち上げてから20年を迎えた今年2月、コロナ禍の中で新たな代表に就任したのが奥山真司氏だ。長らくマーケターとしてのキャリアを築いてきた奥山氏はグーグルで何を目指すのか?就任から8か月たった今、これからの意気込みを伺った。

グーグル合同会社代表
奥山真司
1965年生まれ。89年早稲田大学教育学部卒業後、P&Gに入社しマーケティングを担当。2008年P&G Korea社長、12年P&Gジャパン代表取締役社長となる。16年常務執行役員マーケティング本部長として江崎グリコ入社。21年2月より現職。今回の取材時が実はオフィスへの初出社であったという。大学では哲学研究会に所属、愛読書は「実践哲学」。

ヒューマニティーにあふれたテックカンパニー

──今年2月に代表に就任されて以来、コロナ禍でずっとリモート勤務されていたそうですね。

「日本法人で史上初でないですかね、入社以来オンラインというのは(笑)。しかし、こうした状況であっても、きちっと仕事ができる環境には非常に感謝をしています」

───入社前まで、奥山さんはグーグルについてどんな印象を持っていらっしゃいましたか?

「マーケティングを担当していたので、広告主として出稿するメディアの効率性や効果測定といった極めて数字に偏ったようなお話、いわゆるビジネストークという接点しかなかったです。グーグルはテクノロジー、イノベーションカンパニーという生業上、デジタル化やAIが進んでいて、冗談みたいな話ですけど『本当に人間が働いているのか?』という噂もあったりして、私もそうしたイメージがありました(笑)。しかし、入社してみると真逆の印象でした」

──真逆ですか。

「入社してみると、グーグルには人間力のある社員がたくさん働いています。そして自由でありながら、自らを律するカルチャーがあります。また多様性も〝様〟というよりも〝容〟といった感じで、様々な意見や文化などを受け容れることが空気のように流れているんです。皆が貢献するフラットな組織で、お互いの意見を聴き合い、認め合うことが当たり前。こうした組織や雰囲気の中で、イノベーションが生まれていくのだなとオンラインながらも感じました。例えて言うなら〝ヒューマニティーにあふれたテックカンパニー〟と言えるでしょう。これはうれしい驚きでした。今でも感動することが多々あります。

 また、グーグルはオフィスのカルチャーを大切にする会社でもあります。そこでの会話や対話がヒントとなってイノベーションが生まれることをすごく大事にしているんです。人がまた集まれるようになったらそのパワーがいかにすごいのか、楽しみです」

──これまで日本のグーグルのトップにはIT系出身者や生え抜きの方が多く就任されてきました。P&G、グリコが前職の奥山さんの抜擢は「意外」「畑違い」という声もありました。

「確かにエンドユーザー、あるいはパートナーに何を提供するのかという観点からだと違いますよね。前職のP&Gであれば洗剤、グリコであればお菓子、これがグーグルだと検索エンジン、マップ、Gmail、デバイスなどで、それだけを並べてみると全然違う。しかし〝何を〟ではなく〝何のために〟と質問を変えると、実はすべて『日々の生活のため』という共通点があるのです。もちろん、提供するものは今までと違うので、私にとってもチャレンジなんですが、〝何のために〟の部分はブレずに、目の前の課題に集中していきたいですね。人生は決断の連続です。だから〝たられば〟を振り返るよりも、自分がした決断がうまくいくよう、流行りの言葉で言うと〝全集中〟(笑)。これに尽きるな、と毎日感じていますね」

日々の生活で大切な4つのヒューマン・ベネフィット

──奥山さんがグーグル日本法人の代表として目指すことは何ですか?

「グーグル日本法人は外資系企業だけれども、『日本のローカルカンパニーになる』ということです。日本の様々なパートナーと協働することによって、生活者が抱える課題を解決し、生活のクオリティーを向上させ、経済活動の回復に貢献するため、最も信頼され、役に立つDXのパートナーになる……この点ではまだまだ課題があるし、これこそ私が進めなければいけないミッションだと感じています」

──具体的にはどのように進めていくのでしょうか?

「生活者の日々の生活で大切な要素は4つあると考えていて、これを『4つのヒューマン・ベネフィット』と呼んでいます。まず大切なのは『知識』です。いかに日本のすべての人が必要な知識をタイムリーに、知識欲を満たせる情報提供ができるか。そしてその知識を応用して『成功』していただく。それには『健康』でなければなりません。最終的にこれらが揃うと『幸せ』につながります。これらを実現するためにDXによるイノベーションを推進していく。これをグーグル日本法人の存在理由に定めようと考えています」

──DXを推進することで、どのような効果があるのでしょう。

「今までの仕事の仕方、働き方を、DXで効率的にすることによって生産性が高まり、それでできた時間を人間らしいところ、例えば深く考える時間に使ったり、新しい出会いをつくる時間に費やすといった価値創造に転化できるようになるんです。実際にDXを加速させていけば、2030年までに約70兆円の経済価値を生み出すという試算(※)もあり、これは日本のGDPの13%にも相当します。非常に大きな経済価値が日本にはまだ眠っている状態なんですよ」

※情報通信白書令和3年版(総務省)より。

日本の生活者の課題に寄り添うローカルで最も信頼されるパートナーへ

奥山真司氏

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