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社員数100人以下、中途採用者が8割を超える会社にありがちな問題

2021.11.17

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回「中途採用社員が8割を占める会社にありがちな特徴」では、中途採用入社の社員が多い会社の問題点を取り上げた。

私には今なお、マスメディアは中途採用や転職の影の部分をリアルに報じようとしないように見える。それが転職希望者に誤解を与え、転職先の会社で「こんなはずじゃなかった」と苦しむように結果として仕向けているのだと思う。従って、今回は中途採用者が全社員の8割以上を占める会社のさらなる問題点を私のとらえ方で紹介したい。

この30年ほど観察していると、正社員数が300人以下で、中途採用者の比率が8割を超える会社では自分を大変に高く評価している社員が多いように思えてならない。業界、業種や職種、役職に限らず、20代から60代まで幅広い層に言えることだ。

このような会社の大半が新卒時の入社の難易度で言えば、C級もしくはD級だ。このランクは「大企業やメガベンチャーの社員はなぜ謙虚な人が多いのか?」「大企業やメガベンチャーの社員に謙虚な人が多い理由」で述べたので、ご覧いただきたい。

C級もしくはD級の会社では、個々の社員が過大な評価をするがゆえに、周囲をパワハラやいじめで追い出したり、取引先との摩擦も絶えない。一流の大企業やメガベンチャー企業の社員よりは、この意味での言動に問題がはるかに多い。

例えば、私がフリーランスになった2006年以降、C級やD級の出版社やIT企業の20代の社員と話すと2人に1人の割合で次のような傾向がある。

・担当する仕事を完全にマスターしている、と信じ込んでいる
・担当する仕事のレベルが、自分よりも経験が豊富な人たち(上司と先輩、取引先など)とほぼ同じと思い込む
・上司や先輩に、対等の物言いをする
・自分の仕事への意見や指摘をさせない
・何か指摘されると、批判されたと思い込むのか、冷静さを失い、興奮気味に反論をする。冷静に、深い話し合いはできない
・感情に任せた行動をとる傾向がある
・仕事について話し合うことを「討論」「口論」と捉え、相手を言い負かし、自分の考えを押し通すこと重きを置く
・「勝ち」「負け」といった意識を強く持ち、相手を支配することや上位に立つことに執着する傾向がある
・上司に報告、連絡、相談を丁寧に繰り返ししない。1人で仕事をするケースが多い。部署や組織の一員の自覚に乏しい

一言で言えば自分を極端に高く評価し、怖いもの知らずなのだ。だが、仕事力は一流の大企業やメガベンチャー企業の同世代の社員と比べて、少なくとも5~6ランクは低い。人材の質の点で明らかに見劣りする。

30代、40代になると、経験を積み、身の程を知り、謙虚になり、控えめになると思いきや、その真逆になるケースが多い。自分のことを本当に優秀な人材と真剣に信じ込んでいるようだ。上から目線で後輩の社員、取引先を語り、小ばかにしたり、侮辱したりする言葉が増える。高圧的で、威圧的な雰囲気を醸し出す場合もある。

私の観察では同僚や部下をほめたり、称えたりする管理職や役員は一流の大企業やメガベンチャー企業に圧倒的に多い。新卒時の入社の難易度で言えば、A級だ。おそらく、A級の会社の管理職や役員は幼少の頃から様々な意味で自分が大切にされ、周囲からおおむね高く評価されてきたからだろう。基本的なところでは幸福であり、それを感じとっているのではないだろうか。だから、相手を認め、称えることができるのだと思う。

C級やD級の会社になると、社員や取引先をけなしたり、軽く扱う管理職や役員がぐんと増える。特に正社員数が300人以下で、中途採用者の比率が8割を超える会社で多い。

なぜ、こういう社員や役員たちが多いのか。それには少なくとも、次のことが考えられる。

・新卒、中途の採用試験のハードルが低いために、厳選ができていない。人材の質の面で多くの課題や問題点を抱え込む人が入社するケースが目立つ。その数は、一流の大企業やメガベンチャー企業よりははるかに多い。

・採用が荒く、社風、仕事、既存の社員に合わない人材が入社するために、定着率が概して低い。全社や各部署で離職率が高く、いわゆるチームビルディングができない。

・結果として、個々の社員が独自の考えや思い、方法で仕事をする。それがムリ、ムダ、ムラのかたまりであろうとも、かたくなに変えようとしない。そのことを指摘する上司もほとんどいない。上司もまた、そのような中で生きてきたから、チームビルディングができていないことに責任を強く感じない。そもそも、マネジメントの教育や研修を受けていない。管理職が何をするかを正確に心得ていない。

・管理職はプレイヤーとして実績は社内ではあるのかもしれないが、マネージャーとしての部下育成やチームビルディングの経験や知識に乏しい。

・事実上、上司が不在となり、社員がバーチャルな意味で「社長」のような感覚で仕事をする傾向がある。1人で判断し、決定をする。わずかの経験で意思決定をするから、誤ったことになりがち。ところが、それを認めない。結果として、同じことを繰り返す。仕事力は一流の大企業やメガベンチャー企業の同世代の社員に大きく見劣りをする。

個々の社員として部署として、会社としてPDCAサイクルがほとんど回っていないのだ。だからこそ、業績は伸び悩む。慢性的な低賃金で、社員が次々と辞める。残った社員が順送りのように管理職や役員になっていく。すべてとは言わないが、社員数が100人以下で、中途採用者が8割を超える会社で私が頻繁に見かける光景だ。つまりは、仕組みができていないのだ。

この仕組みを作るのは、時間がかかる。最短でも、効果が見えるようになるのには10年は必要だろう。こういう会社に身を置くのは、時間が限られた人生において大きなリスクになりうる。就職先を選ぶときにぜひ、思い起こしてほしい。

文/吉田典史

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