2015年に施行された「女性活躍推進法」などによって、日本の女性経営者は増加の一途を辿る。では、女性経営者が増えることで、ビジネスにはどんな変化が生まれているのか? 今、注目の女性社長3名に話を聞いた。
社長になって1年目。中止を決めたサービスがいくつもあります
マネックス証券株式会社代表取締役社長
清明祐子さん
2001年、三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。2009年、マネックス・ハンブレクトに入社、2017年マネックス証券へ。2019年から現職。
わからないことは社長でも社員にすぐチャットで聞く
「社長に就任した時は証券業界に入ってまだ3年目。それまで似て非なる銀行業界にいたので、わからないことがたくさんありました」
そう語る清明さんは、普段から詳しい社員を見つけて『これ、教えて』とチャットで、教えを請う。そのやりとりから新しいアイデアが生まれてくることも。
「それいいじゃない、何でやらないの? となる。これはもったいないな、と気づきました。社員ひとりひとりが心の中でいいアイデアを温めている。それを引き出すのが私の仕事ですね。リーダーが、ついてこい! と引っ張るのもいいけれど、社員ひとりひとりからいろんな考えが出てきたほうがおもしろいし、出力も上がります」
清明さんは社長に就任してすぐ、社内外に「私たちのマネックスを創ります」と宣言した。それはマネックス証券の創業者であり、社員にとってカリスマ的存在である松本大前社長のやり方を踏襲しないという意志表示だった。
社長に就任した1年目、やめたサービスがいくつもある。
「うちはユニークなサービスを作り出すのは得意ですが、やめるのは苦手でした。社員たちも頭では取捨選択の必要性をわかっているのに言い出せない……」
マネックス証券は1999年に創業。20年間のうちにできたサービスを精査し、より力を発揮できる挑戦的な事業を創りあげるためにやめる決断をした。
次のリーダーを探しています
「経営に絶対的な正解はありません。それでもリーダーは決断しなくてはならない。そのために十分なファクトが必要なので、『ここ、わからないから教えて』という〝聞く〟コミュニケーションになります。それでも間違えたら、軌道修正するしかありません。そうやって、決断を正解に近づけていくのです」
社長就任2年目からキャッチフレーズを「みんなのマネックス」に変えた。社員ひとりひとりがリーダーシップをもって、どんどんアイデアを出してくださいという檄にも聞こえる。
次のリーダーを育てることが社長の大事な仕事だという彼女は、長く社長の椅子に座っていようとは思っていないようだ。
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