古今東西のリーダーは「志」を追い求めてきた
──昨今は、SDGsやD&Iといった潮流に加え、社会貢献志向が高いといわれているZ世代の台頭など、一見すると経営者やリーダーに社会的責任が求められる時代になりつつあると思います。こうした時代の潮流について、これまでずっと「公益」重視の経営に取り組まれてきた北尾さんは、どのように見ていますか?
「SDGsのような世界的なムーブメント自体は良いことだと思いますし、大いに進めたらいいでしょう。ただ、これは本来〝ムーブメントだから〟ではなく、すべての人や企業が考えなければいけないことです。私たちSBIは2002年より、一定以上の利益を上げている部門は、その利益の1%を様々な福祉施設に寄付するようにして、それが公益財団法人 SBI子ども希望財団や、児童虐待を受けてきた子供たち向けの施設の設立にもつながりました。トレンドに関係なく、『我々に何かできることはないだろうか』と考え、取り組み続けてきたのです。
アメリカでは、ある程度の社会的地位についた人は、家族も含めて様々な社会貢献活動に取り組むのが一般的です。ビル・ゲイツはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を立ち上げ、ウォーレン・バフェットに理事に入ってもらいました。その原点をたどると、アンドリュー・カーネギーが全財産を投入して取り組んでいた社会貢献活動にまで行き着きます。日本にだって、農民の生活を少しでも楽にしようとすべてを懸けた二宮尊徳、資本主義の勃興期に〝論語と算盤〟の両立を説いた渋沢栄一、大量生産に伴う価格低下を目指す水道哲学を唱えた松下幸之助のように、『世のため、人のため』という志を持ったリーダーたちがいました。キリスト教でいう〝愛〟、儒教の〝仁〟、仏教の〝慈〟、これらが言わんとしている根っこは同じだと思います。相手のことを慮ることは、流行りなどではなく人のあるべき姿は世界中の思想・哲学に共通するものなのです」
──そうした、リーダーとして当たり前に持つべき「志」を持てるようになるためには、どうすればいいのでしょうか?
「たくさんの本を読み、たくさんの人の意見を聞き、精神のバックボーンを徐々に作り上げるしかないでしょう。40歳くらいまでにそれをやらないといけません。40歳はちょうど山の頂で、過去を振り返り、これから先の人生について考えるいいタイミングです。多読すればいいわけではなく、誰もが認める古典を精読して血肉とし、知識を超えた善悪の判断を行なえるレベルまで引き上げる。それだけでなく、行動にも移す。知識、見識、胆識。この3つを積み上げていくことが必要だと思います」
「野心ではなく志を持てば目指すべき姿はおのずとわかる」
■ 地域経済の活性化に向けた「地方創生パートナーズ」
2020年8月、地方創生の実現を志す各社と共同設立。地域経済の活性化に向けた政策立案、およびその推進を担う。
■ 都市部へ流れた資金の〝里帰り〟を実現へ
都市部に暮らす人が、自身のふるさとを応援するための金融サービス「ふるさとローン」や「ふるさと預金」の実現を目指す。
■ 関西にフィンテック企業の集積地確立を目指す
大阪・神戸地域でフィンテックセンターを設立。地方大学と連携した産業クラスターの形成も推進している。
■ 未来を担う子供たちのためにこどもの心のケアハウス 嵐山学園
2007年12月、埼玉初の児童心理治療施設である社会福祉法人慈徳院を創設。心理治療から生活・医療・教育の支援まで手がける。
取材・文/小池真幸
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