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SBIホールディングス・北尾吉孝代表取締役社長「世のため、人のために、志を持て。公益こそ私益につながる」

2021.11.28

北尾吉孝氏

フィンテックやブロックチェーンなどの技術開発・活用に積極的に取り組む一方、地域金融機関の競争力向上や地方創生にも注力するSBIホールディングス。代表・北尾吉孝氏が見据える金融の近未来像、そして創業より20年以上「公益」を重んじ続ける経営哲学に迫る。

SBIホールディングス代表取締役社長
北尾吉孝
1951年兵庫県生まれ。74年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年には英国ケンブリッジ大学経済学部を卒業し、世界を舞台に活躍。95年孫正義氏の招聘でソフトバンク入社、常務取締役に就任。現在、SBIホールディングス株式会社代表取締役社長。また、公益財団法人SBI子ども希望財団理事、学校法人SBI大学理事長、社会福祉法人慈徳院理事長なども務める。

「ほぼ無償」でも、地方創生に心血を注ぐ理由

──SBIグループの柱のひとつとして、地域金融機関の収益力強化や企業価値向上に向けた取り組みがあります。

「最近では地域金融機関と資本業務提携を進めながら、フィンテック技術を取り入れることに注力しています。金融業界大手はフィンテックやAI、ロボティクスといった新しい技術を、生産性向上のために早くから取り入れてきました。ただ、業界内格差がとても大きく、とりわけ地域金融機関では導入が遅れていた。地域経済の中で重要な役割を果たしている地域銀行が、技術格差の中で衰退していくのは非常にまずい。ですから私たちは、我々が有する商品・サービス・ノウハウや当社グループ、当社グループの出資先が有するテクノロジーなどを、どんどん地域金融機関に提供しているのです。膨大な開発費用もかけていますが、基本的にはほぼ無償で提供しています」

──無償での技術提供も厭わないほど、地域金融を重視しているのはなぜでしょうか?

「『地方が成長しないと日本経済は沈んでしまう』という認識が政財界の各所で生まれ、地方創生が国家的プロジェクトになっていますよね。その中で私たちができることが、地方金融機関に力をつけてもらうことだからです。私は公益が私益につながると信じています。『世のため、人のため』が、結果として最も大きな利益につながる。1999年にSBIを創業した時から、この考えはずっと変わっていません。

 創業当初は、オンライン証券会社として、手数料を圧倒的に安くしました。現在でも、大手証券会社に比べて、20分の1以下の手数料しか取っていません。当時は『そんなことをしたら大赤字になる』と忠告してくれる人も多かった。しかし、『私が責任を持つから』と、どんどんお客さんが喜ぶことをしていった結果、お客さんの数は一気に増えていきました。すると、金融商品の幅の拡大やシステム、コンプライアンスの強化など、質の改善ができるようになる。その結果、またお客さんの数が増える……この〝量質転化の法則〟を徹底し、日本で最大規模の口座数を持つ証券会社になりました。地方金融に力を入れているのも、その延長線上にすぎません」

──最初はほぼ無償でも、それが公益に資していれば、いずれ私益にもつながっていくはずだと。

「はい。まずは私たちが持っている経営資源を投入しながら、運用面からシステム面まで、様々な形でサポートをしています。すでに成果は表われていて、直近の業績を見ると、私たちが関与したすべての地域銀行の収益が大幅に上がっています。とはいえ銀行だけでなく、地方経済全体にまで目を向けないと、根本的な解決にはなりません。ですから、次のステージとして、2020年に地方創生パートナーズという会社を共同設立しました。地方創生への取り組みに賛同いただける、様々な業種の事業会社や金融機関、地方公共団体の経営資源を融合させることで、地方創生に資する取り組みを加速していきます。特に最近は、電気自動車、あるいは工場で発生する水素や一般産業廃棄物のリサイクルなど、グリーンエネルギーに関わる取り組みを進めています。

 また、地方だけに頼っていては地方創生は立ちゆかないので、『リージョナルからネーションワイドへ』という動きも提唱しています。例えば、東京に出てきた人が家を建てるとしたら、故郷の地域銀行でローンを組むなど、ふるさと納税のみならず、その地域とそこの出身者がもっと一体化していくことで、地方創生を盛り上げたい。そう思って、私たちが培ってきたオンライン金融のノウハウを提供しながら、一緒に様々な事業を展開しています。すでに、都市部に暮らす人が自身のふるさとを応援するための金融サービス、『ふるさとローン』や『ふるさと預金』の実現を目指して準備しています」

「地方経済の成長にはフィンテックが不可欠」

北尾吉孝氏

「間違い」への対応力を高めよ

──2020年以降、金融を含めた様々な業界でDXが進みました。SBIグループは先んじて暗号資産やブロックチェーンといった技術の開発・活用に取り組んでいますが、金融の近未来像をどのように見据えているのでしょう?

「キャッシュレス化をはじめとしたデジタル経済が浸透していった先には、デジタルアセットファイナンスの世界が訪れると思います。ブロックチェーン上で発行された証券を活用した資金調達手段であるSTO(Security Token Offering)の普及は、その一例でしょう。中央銀行デジタル通貨(CBDC)の分野では、中国が最も進んでおり、アメリカや欧州がそれに追随する状況になっています。貿易金融においては、これまではドルを基調にしながら元やユーロ、円などによって外貨準備をしてきたわけですが、CBDCが国の通貨になったらどうなるのか。私たちも新しい金融市場や金融商品を模索し、検証していかなければいけません。こうした最先端の領域まで地方銀行が取り組んでいくのは現時点では難しいので、SBI金融経済研究所などが集中的に取り組み、研究を重ねています」

──そうした次世代の金融の形を探求し、実装していくうえでの課題も山積していると思います。例えば、メガバンクが起こしたシステム不全も問題になりましたが、新しい金融システムに移行していくために、日本には何が足りていないのでしょうか?

「まず、システムは人間が作るものなので、必ずどこかで問題を起こしうるものです。新しいシステムにバグは付き物。パソコンのOSだって、新しいバージョンを出したら多くのバグが出て、それが徐々に修正されていく。大手のクラウドサービスだって、問題を起こして、私たちのようなオンライン証券会社が迷惑を被ることもある。間違いは常に起こりうるもので、100%バグのない状態にすることは不可能だと考えています。ですから、起こった場合にどう対応していくかが重要です。

 例えば、バグ対応に要するコストを、できるだけ最小限にする。1つのシステムがおかしくなった時、切り替えできる別のシステムを用意しておく。ハードウェアは経年劣化するので、定期的に替える。ワクチンに対抗するウイルス同様にどんどん新しい技術で侵入してくるハッカーに備え、二重三重にもセキュリティー対策を講じ、セキュリティー技術も更新していく。こうした対応策を練り上げていくしかないと思います」

北尾吉孝氏

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