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仕事をしていて心の平和を乱されるような人とは距離をとったほうがいい理由

2021.10.27

■連載/あるあるビジネス処方箋

「心の平和を乱してくる者からは離れたほうがいい」―。こう教えられたのは、1990年代半ば。当時、20代後半だった。取材交渉のため、電話を何度もするが、毎回不在の自営業者がいた。電話を入れた時間は、その人が「この時間に連絡をほしい」と伝えてきた。

違う日に電話をすると、新たに「この日時に連絡をしてきたら対応ができる」と話す。電話をすると、また不在。この繰り返しが5回ほど続く。それ以前に、こんなルーズな人と巡り合うことはなかった。この時、上司は「心の平和を乱してくる者からは離れたほうがいい。それ以上接するのは、精神衛生上、よくない」と言っていた。

これと似たことをここ1か月半で経験した。千葉の市民団体を取材しようと、担当者に連絡する。その時点では承諾をしたが、指定された日時に電話をすると出ない。メールの返信も来ない。ラインで連絡したが、「既読」になるものの、回答がない。はがきを郵送したが、返事はない。ほかの担当者をネットで見つけ、連絡したところ、「〇月〇日に電話をほしい」と返事をもらう。その日時に電話すると、不在。メールの返信もない。1週間ほど後に、「〇月〇日に電話をほしい」と書かれたメールが来る。この繰り返しが5回ほど続く。現在に至るまでに連絡はつかない。

こういう仕事を30数年続けると、「心の平和を乱す人」は数年に1度のペースで現われる。腹が立つことは、今は少ない。1回目の電話のやりとりで「この人はルーズ」と感じ取るものがある。その後、約束を反故にされても「あの人ならば当然だろう」と思うようになる。

このような人はこれまでの経験で言えば各業界や各分野の、新卒採用の入社ランキングのC級やD級の企業に集中している。このランキングは、本連載の過去記事をご覧いただきたい。あるいは、前述のような市民団体だ。あくまで私が接してきた市民団体に限ったことになる。

・組織内においての社員(職員)教育が徹底していない
・組織化(組織で働くうえでのルール、約束などの浸透)ができていない
・組織の社員(職員)の一体感、意識・価値観の共有化が不十分

つまり、組織人なのだが、個人事業主のようなタイプが多い。組織の縛りを受けることなく、独自に判断し、行動をとる傾向がある。それも1つのスタイルなのだろうから、私は否定しない。

こちらからすると、アプローチする場合には一定のリスクマネジメントが必要になる。例えば、「ルーズな人だから、後へ2週間ずらそう」といったように。そうしないと振り回され、心の平穏を破壊されかねない。真剣に相手にすると、気がめいり、心身の状態がおかしくなる。心の平和を保っていないと、ほかの仕事に悪影響を与えるかもしれない。頭の切り替えが必要なのだろう。

だが、経験をもとに言えばそれは難しい。だからこそ、心の平和を乱す人とは関わらないほうがいい。避けるべきは、「あの時間に電話をしたのに不在だった」「メールを送ったのに、今なお、返信がない」と詰めることだ。おそらく、本人にルーズなつもりはないのだろう。メールの返信をしなくともいい、と考えてのことだろう。何を言ったところで、変わりはしない。正論であっても、相手からすると愚論。双方で感情的な摩擦が残るだけ。大切なのは、そっと離れることだ。

ここまでを読むと、「振り回された挙げ句に、何も言わないなんてありえない!」と思うかもしれない。その怒りはわかるつもりだが、周囲もルーズな姿勢に嫌気がさして、深くは関わっていないはず。あなたが攻撃をしなくとも、淘汰される人たちだ。あるいは、そのレベルの人が集う組織にいるのだろう。この連載で何度か取り上げた一流の大企業やメガベンチャー企業の社員にはめったにいない。だからこそ、採用試験を受けることを勧めている。

読者諸氏は、心の平和を乱された時にどうしているだろう。

文/吉田典史

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