愛する人との永遠の別れ。そんな耐えがたい悲しみを癒してくれるのは、大自然、そして小さく健気な“いのち”。
Netflixで2021年9月24日から独占配信中の『ムクドリ』は、アメリカで製作されたヒューマン・コメディ映画。
主演は『サンダーフォース ~正義のスーパーヒロインズ~』『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のメリッサ・マッカーシー。
『ドリーム』『ヴィンセントが教えてくれたこと』のセオドア・メルフィ監督作。
あらすじ
アメリカ。田舎町にあるスーパーマーケットで店員として働くリリー(メリッサ・マッカーシー)は、1年ほど前に幼い娘ケイティを乳幼児突然死症候群(SIDS)で亡くし、悲しみから立ち直ることができずにいた。
仕事中も心ここにあらずの状態で、上司や同僚たちからも心配される日々。
精神病院に入院中の夫ジャック(クリス・オダウド)と共にグループ・カウンセリングを受けるなど前に進むために努力を重ねるが、うまくいかない。
ある日グループ・カウンセリングを受けた後に、心理療法の専門家ラリー・ファイン博士(ケヴィン・クライン)のクリニックを紹介される。
リリーがクリニックを訪ねると、ラリーはなぜか獣医に転職していた。
後日、自宅庭で作業をしていたリリーは、ムクドリに襲われる。
鳥の生態に詳しいラリーにムクドリ対策のアドバイスを相談するうち、リリーは自分自身の悲しみと向き合うようになる。
見どころ
ムクドリの大群は、遠目に見るとゾッとするほど狂暴で恐ろしく見える。得体の知れない巨大モンスターのようだ。
しかし、一羽一羽を間近で捉えた映像に切り替わると、懸命に生きようとする姿がとてもいじらしい。
そして、だだっ広い庭で、生い茂った雑草や攻撃的なムクドリと格闘するリリー。
骨の折れる重労働なのだが、自然の中で何も考えずに黙々と体を動かす時間こそ、現代人の心と体に“効く”のかもしれない。
理不尽で暴力的とも言える大自然に圧倒され翻弄されると同時に、いつの間にか悲しみを癒されている不思議。
本作に映るアメリカの自然は何もかもスケールが大きすぎて、もし主人公として自分があの場にいたとしたら、人間である自分のちっぽけさと無力感に打ちひしがれそうだ。
人間には“なす術がない”、ということを象徴しているのだろうか?
そして、画面越しにも伝わってきそうな、カラリと乾いた気候。
風土がその土地に暮らす人間の心にも大きな影響を及ぼす、ということを実感させられるシーンが多い。
目の前の現実を受け入れ、ありのまま、今を生きていく。
狂暴だが健気なムクドリと雄大で荒々しい自然風景からは、そんな非言語のメッセージを受け止めた。
似た作品としては、同じくNetflix映画の『ペンギンが教えてくれたこと』、そして『私というパズル』もぜひオススメしたい。
Netflix映画『ムクドリ』
独占配信中
文/吉野潤子