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倉庫会社でのアルバイト経験を通じて伝えたい「フリーランス」という生き方の真実

2021.08.06

■連載/あるあるビジネス処方箋

6~7月の2か月間、アルバイトをした。自宅から45分ほどにある中堅の倉庫会社(東証2部)のセンターで荷物の仕分けをした。机や椅子、本や書類が入った大量の段ボール箱を1日平均5人ほどの従業員でチームを作り、届け先の住所ごとに分ける。私の勤務は週4~5日で、1日につき平均3時間。午前10時から午後1時までが多い。1か月の賃金は、約6万円。

職場は責任者であるセンター所長が30代半ばで、その下に4人の短時間正社員(1日平均3時間勤務)。その下にアルバイトが、6人。計11人の平均年齢は、30代半ば。53歳の私が最年長で、最もキャリアが浅い。アルバイトにも序列があるようで、おそらく最も下だった。ほぼ毎日、20歳ほど下の女性(短時間正社員のトップの序列)から怒鳴られ、30歳下の大学生からも手ほどきも受ける。

いわゆる、パワハラの日々だったのだと思う。特にこの女性から狙われていたらしく、怒られたり、嫌味を言われるのは1日に5~10回。会社員時代(1990年~2005年)には見たことがないタイプの女性で、驚くばかりだった。今、怒鳴っていたのに、突然、笑い始めたりと理解できる範囲をこえていた。それでも、振り返ってみるとなんとなく楽しい職場ではあった。

フリーランスになったのが、2006年。現在までの約17年でアルバイトをしたことはない。フリーライターの中では仕事の量はおそらく多く、アルバイトをして収入を補う必要はなかった。

今回は出版業界の名物であり、伝統であり、文化とも言える「お金の未払い」の被害を受けたからだ。本来、4~6月にこちらに支払われるはずの数十万円が、担当編集者が社内手続きを忘れ、振り込まなかったのだ。2006年から現在に至るまでに120人ほどの編集者と仕事をしてきたが、決められた日に払うべく原稿料の振り込みを忘れたのは約75人。この類の編集者はそれ以外の仕事力も概して低いので、あえて何も言わないようにする場合もある。深い会話ができるレベルではない。もともと、「どうせ、振り込みを忘れるだろう」と想定し、この17年間、資金繰りをしてきた。

さすがに未払い額が数十万円になると、こちらは生活ができない。しかも今回の場合は数十万円がいくつにもなり、つまり、トータルで150万円ほどになっていた。不本意ながらそれぞれの会社に督促状を送る一方、アルバイトをして収入を少しでも補おうとした。

もともと、大多数の出版社は中小企業で、人事と財務の面で大きな弱点を持つ。銀行や信用調査機関の各出版社のデータを見ると、それは明らかだ。人事では、採用、定着、育成のいわゆる3本柱が立っていない会社が圧倒的に多い。人材の質は全国紙やキー局と比べると、見劣りする。

新卒時の入社の難易度で言えば、出版業界はA級(上位3社)、B級(4位~20位ほど)、C級(20位~)と3つにはわけられるが、原稿料の未払いをしやすい編集者はB級とC級に集中する。特に20~50代の編集者で、ライン(出世コース)から外れた人が多い。せいぜい、小さな部署の編集長(部下は数人)になるのがいっぱいで、役員にはなれない。いわゆる、「使えない」と上層部からは見られているであろう人たちなのかもしれない。

今回、なぜ、こういう事例を取り上げたのか。フリーランスのありのままの姿を読者諸氏に伝えたかったからだ。ここ数年、フリーランスのことを「会社に頼らずに生きる、ニューライフ」的な意味合いで伝える報道が増えている。その内容に目を通すと、事実誤認や前提の認識に誤りがあるものが目立つ。例えば、自営業者の平均年収やフリーランスと発注先の会社との関係を心得ていない。1つの事例が、私のようなケースだ。「使えない」編集者とも仕事をせざるを得ない場合はあるのだ。あるいは、フリーランスへの意識(未払いといった犯罪に近い行為を厳に慎むなど)が総じて低いことも正確には把握していない。

すべてのフリーランスが、私のような被害を受けているわけではないだろう。だが、否定しがたい事実なのだ。こういう中で生きていくためには、時にはアルバイトをするのも必要なのだと思う。私が関わった仕分けは単純作業ではあるが、奥が深い。私を筆頭に従業員全員が時間内で、正確にできるわけではない。適性があるようにも感じた。会社員とは思えない言動のベテランもいる。怒鳴り、罵倒し、ののしるのを趣味としているように見えた。まともな会社で、正社員をするのは難しいのかもしれない。

53歳でこういう中に飛び込むと、意外とおもしろく、またトライしてみようと思った。会社員からすると悲惨に見えるかもしれないが、自由とは尊いとあらためて確信した。会社に戻り、あの上司たちの下では絶対に働きたくない。そんな強い思いがないと、続かないように思う。憎しみや憤り、復讐心や反発心は素直に大切だ。

最後に、1つの映画を紹介したい。映画『ゼイリブ』(They Live)で、1988年製作のアメリカ合衆国のSF作品だ。大学生の頃にテレビのロードショーで観て、強く印象に残った。今は、YouTubeで観ることができる。この映画の言わんとしていることは、何なのか。ぜひ、考えてほしい。30年以上前の映画を、なぜ、今も世界の多くの人が観ているのか。1980年代に起きていたことが、最近は顕著になっているからではないか、と私は感じている。目の前の現実が正しいと思うように、経営者たちに仕組まれている会社員に観てもらいたい。そして、フリーランスを「会社に頼らずに生きる、ニューライフ」とマスメディアや有識者に信じ込ませられている人にも勧めたい。

文/吉田典史

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