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「十五夜」は一年の中で最も美しい月が見られる日として親しまれていますが、詳しい意味を知らない人も多いのではないでしょうか。十五夜の意味から現在の風習に至るまでの歴史、慣習的な過ごし方を紹介します。知識を深め、美しい月の見物を楽しみましょう。
十五夜の意味
「十五夜」は古くから日本で楽しまれている季節の行事です。秋にお月見をするという風習は広まっていますが、詳しい時期や意味を知らないという人は多いかもしれません。
ここでは十五夜について基本の知識を深めましょう。
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旧暦8月15日の夜
「十五夜」とは一般的に、かつて日本で使われていた旧暦(太陰暦)で8月15日の夜を指します。
旧暦を現行の新暦に当てはめると、十五夜は9月中旬~10月上旬にかけての時期です。7~9月が秋とされていた旧暦では8月15日が真ん中の日に当たり、この日に見える月は「中秋の名月」とも呼ばれています。
十五夜はもともと旧暦で毎月15日の夜を指していました。新月から満月になるまで約15日かかるため、月の周期に合わせた旧暦では月中に満月が見られたのです。
空気の澄んだ秋の空にひときわ美しい満月が見られることから、時代の流れとともに旧暦の8月15日だけを「十五夜」と呼ぶようになったとされています。
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2024年の十五夜はいつ?
2024年の十五夜は9月17日(火)です。
前述の通り、十五夜の日は旧暦8月15日の月を指すため毎年変わります。2024年~2028年の十五夜は以下の通りです。
2024年 9月17日(火)
2025年 10月6日(月)
2026年 9月25日(金)
2027年 9月15日(水)
2028年 10月3日(火)
満月とは限らない
旧暦は、新月から月が満ちてまた新月に戻るまでを1カ月としています。
しかし、月が地球の周りを回る速度は地球との距離によって変わるため、満月になるまでの日数も同じではありません。
1周回るのにかかる日数は29.5日と一定ですが、満ちていく速度と欠けていく速度は違い、満月になる日が1~2日ズレるのです。十五夜は満月という認識が一般的ですが、必ずしも満月とは限らないということは覚えておきましょう。
完全な満月ではなくても、秋の空に浮かぶ月は大きく美しいものです。十五夜を迎えて「今年はどんな月だろう」と、年ごとに違う姿を楽しむことこそ風流といえるかもしれません。
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由来と風習の広がり
十五夜はお月見を楽しむ風習が広く根付いています。始まりはいつだったのでしょうか?日本に伝わったころの風習から、現在の形に近づくまでの流れを見てみましょう。
由来と風習を知ることで、十五夜に対する理解がさらに深まるはずです。
十五夜の由来は中国の中秋節だった!月見をしながら豊作を祈願する秋の行事の楽しみ方
伝来は平安時代に中国から
もともと日本では月は神聖なものと考えられていたため、古くから月を愛でる風習自体はあったとされています。
しかし、8月15日の十五夜にお月見をする風習が始まったのは、一般的な説では平安時代です。中国の行事「中秋節」が日本に伝わり、貴族の間でお月見が楽しまれるようになりました。
貴族たちはただ月を眺めるだけでなく、庭園の池に舟を浮かべ宴を開いて酒を酌み交わしながら、水面や盃の中に映った月を眺めて楽しんでいたそうです。
月の美しさを歌に詠んだり、音楽を奏でたりする優雅な遊びは、夜通し続いたとされています。
庶民にも親しまれる風習に
十五夜の起源とされる中国の「中秋節」は、家族や親戚が集まって月を楽しむという大衆的な行事でした。伝来した当時こそ一部の貴族の楽しみでしたが、時代が進むと日本でも庶民の間に広まっていきます。
庶民の行事として十五夜が一般的になったのは、江戸時代の初期というのが通説です。
月の美しさを単純に眺めるためでなく、秋の収穫を喜ぶとともに翌年の豊穣を月に願う「豊作祈願」の意味が強かったとされています。月の満ち欠けとともに生活をしていた農民にとって、月は生活に大きく影響するものだったのです。
現代でも「月見団子」や「ススキ」をお供えして月への感謝を表すとともに、家族や近しい人と団らんする日として楽しまれています。
十五夜の過ごし方
十五夜の意味や由来を知ると、何気なく過ごしていた十五夜のお月見がますます楽しみになったのではないでしょうか?
十五夜は家族や友人・親戚など大切な人と過ごすのも、1人でゆっくり月を眺めるのもよいでしょう。お月見をより深く楽しめるように、慣習的な十五夜の過ごし方を紹介します。
健康と幸福を祈りお団子を供える
お月見といえば、お団子を最初にイメージする人が多いのではないでしょうか?
お団子を供える理由には諸説ありますが、有名なのは「真っ白で丸いお団子を月に見立てている」という説です。月への感謝や健康・幸福への祈りを込めて供えます。
お団子は月に供えるものですので、窓際など月が見える場所に置くのが一般的です。神聖なものを置く床の間でもかまいません。
お団子は「三方」という器にピラミッドのように積み上げるのが伝統ですが、家庭で楽しむならお盆やお皿に載せるだけでも十分です。一緒に野菜や果物・ススキなどの供え物を飾るときは、右側にお団子を置くとよいとされています。
お団子の数はいくつ?
十五夜に供えるお団子の数は、本来その年に満月を迎えた回数でした。昔は農作業を進める時期も月の満ち欠けによって決められていたため、満月の回数が重要だったのです。
旧暦の時代は通常の年なら12回・暦のズレを調整するため1月増やした年なら13回でした。
旧暦を使わなくなった現代では、「十五夜」という名前にちなんで15個のお団を供えるのが一般的です。15個だと多すぎるなら、最後の数字だけ取って5個としてもよいでしょう。
十五夜の後にある「十三夜」というお月見でも、現在は名前から13個のお団子を飾るようになっています。
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魔よけとしてススキを飾る
十五夜の風物詩として有名なのが「ススキ」です。
本来は豊かに実った稲穂を供えたいところですが、十五夜のころにはまだ実った稲穂はありません。そこで稲穂に似たススキを飾るようになったといわれています。
また、ススキは神様の依代(神が宿る物体)を表しているといわれる植物です。切り口が鋭く魔よけの力もあるとされてきました。神聖なススキで収穫物や暮らしから魔を遠ざけ、翌年の豊作や健康を祈る意味が込められています。
月見の後は玄関の軒先に飾れば1年間の無病息災につながるという説も、十五夜にススキを飾る理由の一つです。
構成/編集部