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慣用句の中には、聞いたことがあっても正確な意味を理解していないものもあるでしょう。今回は『暑さ寒さも彼岸まで』という言葉について、彼岸がいつを指すのか、言葉の意味や由来、使い方や例文について解説します。
「暑さ寒さも彼岸まで」とは
『暑さ寒さも彼岸まで』の理解を深めるために、まずは言葉の概要・意味から確認していきましょう。
季節の移り変わりを表す言葉
季節によっては『そろそろ暑さが納まってもよいのにまだ涼しくならない』と感じることがあります。反対に『早く暖かくなってほしいけれど寒い日々が続いている』という時期もあるでしょう。
暑さや寒さが収束してもよいのに、相変わらずの気候だと感じるようなときに、『もう少しで過ごしやすくなるだろう』と伝える慣用句です。
多くの人は長年暮らしているうちに、彼岸を境にして厳しい暑さ・寒さが和らぐと感じていたようです。人生経験に基づいて、季節の移り変わりを示している言葉といえます。
「つらいこともいつかは終わる」という意味も
厳しい暑さや寒さは、とてもつらく感じられるものです。辛抱しながら日々を過ごしている人に向けて、『もうじき訪れる彼岸を過ぎれば過ごしやすくなるよ』と伝えるこの慣用句は、意味が転じて『我慢していればつらい日々も終わりが来る』と諭す言葉としても使用されるようになりました。
うまくいかないことがあったり、不遇な出来事などが起こったりすると、気持ちは深く沈んでしまいます。しかし、『悪い日々ばかりではなく、辛抱していれば事態は好転する』という希望を表しているのです。
「暑さ寒さも彼岸まで」の由来
春分や秋分は、『二十四節気』の一つになります。日数や太陽の黄道上の視位置によって1年を24等分し、それぞれの節目に名前を付けたものです。
春分・秋分では、太陽は真東から昇り真西に沈みます。そこでは、昼と夜の時間がほぼ同じ長さになるのです。
春は春分を境に昼間の時間が長くなっていき、反対に秋分の日ではこの日以降昼間の時間が短くなります。日が延びれば暖かくなり、短くなれば寒くなることから、『暑さ寒さも彼岸まで』といわれるようになったのです。
そもそも「彼岸」はいつ?
『暑さ寒さも彼岸まで』は、彼岸を境目として気候が変わることが由来の慣用句ですが、彼岸の時期を知らなければ結局正確な内容は把握できていないことになります。
そこで、春・秋それぞれの彼岸の時期について見てみましょう。
春秋の「彼岸」の時期
彼岸には「春彼岸」と「秋彼岸」の二つがあります。それぞれ、『春分の日』と『秋分の日』を中日として据え、その前後の3日を合わせた計7日間が彼岸です。
では春分の日・秋分の日がいつかとなりますが、両者とも、太陽が真東から登り真西に沈み昼夜の時間が同じになる日を指します。しかし、これらは日付で固定されているわけではありません。太陽の軌道によって、毎年訪れる日が変動するのです。
おおよそで示すとなると、春彼岸は3月21日あたり、秋彼岸は9月23日あたりといえますが、正確な日にちはその都度確認する必要があります。
2024年(令和6年)のお彼岸の期間は、春が3月17日(日)~3月23日(土)、秋が9月19日(木)~9月25日(水)です。
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「彼岸」は仏教で悟りの境地を指す言葉
彼岸とは『彼(か)の岸』つまり『向こう側の岸』という意味です。由来は、仏教用語の『波羅蜜(パーラミタ)』にあるとされています。
波羅蜜とは、サンスクリット語で『迷いの川を渡り切り、悟りの境地へとたどり着く』様子を表す言葉です。『たどり着くべき川の向こう側(彼の)岸=悟りの境地』となり、つまり彼岸とは悟りを開いた状態を意味しています。
「暑さ寒さも彼岸まで」の使い方と例文
慣用句は、適切な使い方で用いることが大切です。使い方が間違っていると、意味が通じなくなってしまうことがあります、
そこで、『暑さ寒さも彼岸まで』の使い方と例文について解説しましょう。
「暑さ寒さも彼岸まで」の使い方
使い方は、大きく二つに分けられます。一つ目は文字通り『寒暖に関する気候の変わり目』を表す用法です。
厳しい暑さや寒さにさらされて生活していると、早く過ごしやすい季節が訪れてほしいと願う気持ちになります。そのような心持ちのときに、もう少しで気候もよくなるよと心を解すように伝えるものです。
二つ目は『悪いことは続かず、ちょっと耐えていればつらい日々も終わる』と諭す言葉として用います。
「暑さ寒さも彼岸まで」の例文
ビジネスシーンで『暑さ寒さも彼岸まで』を使用する場合の例文をシーン別に紹介します。暑い中、汗だくになって営業に出ている同僚や部下に向かって、次のように声を掛けます。
- ワイシャツに汗が浸み込むほど頑張っているね。でも暑さ寒さも彼岸までというし、もうすぐ活動しやすくなるさ
水仕事で冬がつらい職場で励まし合うなどの場合は、以下のような使い方です。
- まだ水が冷たく手が凍えるようだ。しかし暑さ寒さも彼岸までというから、じき水の冷たさも和らぐだろう
仕事でミスをしてしまい、周囲の視線を気にする人などに掛ける言葉としても活用できます。
- 先日のミスはもう忘れることだよ。暑さ寒さも彼岸まで、すぐに誰も気にしなくなるよ
構成/編集部