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【サステイナブル企業のリアル】「石灰石から紙、プラスチックの代替原料を作り素材革命を起こしたい」TBM・笹木隆之さん

2021.06.16

■前編はコチラ

「サステイナブルな企業のリアル」――環境や資源への配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、持続可能な社会にコミットする製品、及び企業を紹介するシリーズだ。今回は石灰石から紙、プラスチックの代替原料を作るベンチャー企業の話である。

 株式会社TBM、話を聞いたのは執行役員 笹木隆之さん(36)。水と森林を必要とする紙、石油由来原料にするプラスチック。どちらも環境に負荷を与えるとして、特にプラスチックに課せられた規制は、世界中で厳しくなっている。この会社が開発した石灰石を主原料にしたLIMEX(ライメックス)という新素材は、この二つの代替原料である。セメントの原材料の石灰石は国内で100%自給できる鉱物資源。世界的にも石灰石の埋蔵量は豊富だ。

 大量消費の紙とプラスチックのサステイナブルを担う新素材への期待は大きい。LIMEXが世に出るまでの悪戦苦労を紹介する。

孫正義と重なる点が……

 大手広告代理店の社員だった笹木と創業者、山﨑敦義(47)との出会いは2010年だった。「この日本から世界で役立つ会社を、兆円を売り上げる事業を起こしたい」等、「山﨑の経営者として目指している事業の大きさに心揺さぶられました」と、笹木は語る。

 ソフトバンクの孫正義に感銘を受けた山﨑、自らの夢への語りは、どこか眉唾物の印象さえ抱くが、若かりし頃の孫正義もそうだったに違いない。当時シャープの専務に見込まれ、銀行の融資を手引きされ、手にした資金で孫が事業を興したように、山﨑敦義もうがっていえば“年寄り殺し”、よく言えば成功した年配者の信頼を得る術に恵まれているのだろう。

 信頼を得た日本製紙の元専務取締役の角祐一郎(現TBM取締役会長)の豊富なアドバイスが、品質改良の進まない台湾のストーンペーパー会社に見切りをつけ、石灰石を主原料とした新素材の自社開発と製造へと背中を押した。

 起業した2011年に知遇を得た一般社団法人全国経営者団体連合会会長等々を歴任し、孫正義が師匠と崇める野田一夫の存在も大きい。ホームページ上の二人の対談を引用すると、

「台湾の企業から、石灰石を原料にした紙のような新素材を輸入していますが、品質に問題がある。もっと紙に近い製品を自社で開発したいんです」

 初対面の時の山﨑そんな話に、野田は身を乗り出す。大量の木材パルプと水を使って生産・消費される既存の“紙”に、懸念を抱いていた野田は「面白い発想じゃないか」と、山﨑を励ました。

資金調達は熱量でアピール

 設立したが販売する製品がない。新会社のメンバーに加わった角をはじめ、新規採用のケミカル系の技術者数名は、企業の実験施設での共同研究やレンタルラボを使い、新素材の完成に全力を傾けた。

 石灰石と樹脂を混合した主原料は、ストーンペーパーと似ているが、ライメックスシートは主原料に熱を加え液体状にして、機械で押出し中間体に加工する。その中間体に空気を入れ延伸加工して薄膜シート状にする。この独自の工程により重いという問題は解消され、紙と同等程度の軽さを実現した。

 一方、山﨑は資金繰りに奔走している。売り歩く製品が形になっていない。開発費やランニングコストの他に、自社工場建設には莫大な資金が必要だ。

「日本では初期段階で積極的に支援が得られる金融機関はほぼない。まず、国の補助金制度に応募したらどうか」

 野田一夫のそんな助言に従い、2013年には経済産業省の助成金9億円を得た。

 助成金が受けられ、工場立ち上げの第一関門は突破できたが、工場の完成までには20憶円の資金がいる。毎月のランニングコストもシビアだ。当時、大手広告代理店に在籍し、公私ともに山﨑と親交があった笹木隆之は、「声をかけるのも気の毒なぐらい痩せてしまって。資金調達の苦労はハンパではないことが伝わってきました」と、当時の山﨑を振り返る。

 時代はリーマンショックの後遺症から抜け切れていない。ベンチャーキャピタルも厳しい状態だった。エンジェル投資家からお金を集めなければならない。

「日本の技術で世界を救うような挑戦を是非一緒に」

「世界の石灰石の埋蔵量は豊富です。量産ペースに乗れば石油由来の原料より安価で、CO2が抑えられる。素材革命を起こしたい、応援してください」

 投資で得られる利益は大事だが、個人事業主、不動産の運営や金融プレイヤー等、エンジェル投資家の多くは、この人物は使命感と責任感を抱き、この勝負に挑んでいるのか。やり遂げる人間かどうか、とどのつまりそこを見ている。山﨑は内に秘めた事業に対する熱量をアピールするかのように投資家に訴えた。

いろんな人間を巻き込んで

 宮城県白石市の工場の竣工は2015年。

「竣工式は涙が止まらなかった。人生で一番泣いた日だったと、山﨑は言っています」

――創業者は感情の熱量が、人並外れて多い人のようですからね。ところで工場完成の翌年の4月に、笹木さんは大手広告代理店を辞めている。なぜ、給料もいい将来的に安定した地位を捨て、ベンチャーに転職したのですか。

「トヨタもパナソニックもホンダもソニーも、ベンチャーの時代がありました。この会社も世界に通用する素材を作り、サステイナブルな社会に大きく貢献するに違いない。過去の技術大国日本のベンチャーが、世界に知れ渡るブランドに成長したストーリーと、僕の中で重なって。僕もそんなドラマに加わりたいと」

 いろんな人間を巻き込んで、新素材を使った初めての製品の名刺が完成したのは工場完成の翌年6月。LIMEX(ライメックス)と命名された新素材は、飲食店のメニュー表、東京マラソンのマップ、各種のパッケージ類への導入が進んだ。紙の代替原料としてのニーズも大きいが、さらに巨大なニーズの輪郭が見えていたのだ。工場の稼働から2年ほど経て、山﨑や笹木たちの中では、こんな話を煮詰めていた。

プラスチックの代替原料という夢の実現

「石油由来のプラスチックの法規制が進んでいる。EUでは使い捨てプラスチックの10品目を禁止にするとか」

 主原料の石灰石と樹脂の配合は異なるが、紙の成形の仕方とプラスチックのそれとはかなり似ている。

「工場の既存の設備を活用して、石油由来のプラスチックに代わるレジ袋等が作れることが、強みだね」

「プラスチックの代替材料として広めていけば、よりグローバルなチャンスが生まれるぞ」

 2018年頃からは、プラスチックの代替原料としての比重が高まっていった。

 大手家電量販店に、LIMEX製のレジ袋が採用されたり現在、およそ6000社が30ほどのカテゴリーにLIMEXを採用している。

「まだビジネスとして成功したとは、言えませんが」笹木は笑顔でそう語るが、TBMは今、株式上場を控えているのだ。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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