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【サステイナブル企業のリアル】「国内で100%自給できる鉱物資源、石灰岩で木材を使用しない紙を作る」TBM・笹木隆之さん

2021.06.15

ー8「サステイナブルな企業のリアル」――環境や資源への配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、持続可能な社会にコミットする製品や、企業を紹介するシリーズだ。今回は紙、そしてプラスチックを石灰石から作るベンチャー企業のお話である。

 株式会社TBM 執行役員 笹木隆之さん(36)。水と森林を必要とする紙、石油由来の原料を使うプラスチック、どちらも環境に負荷を与えるものとして、特にプラスチックに課せられた規制は年々厳しくなっている。この会社が開発した石灰石を主原料にしたLIMEX(ライメックス)という新素材は、この二つの代替素材として注目される。セメントの原材料として使われる石灰石は、国内で100%自給できる鉱物資源。世界的にも石灰石の埋蔵量は豊富だ。大量消費される紙とプラスチックのサステイナブルを担う新素材に、期待は大きい。LIMEXはいかにして誕生したのか。笹木さんが自らの体験とともに語る。

ストーンペーパーとの出会い

 大阪府岸和田市出身の創業者、山﨑敦義(47)は大工見習い、中古車販売業を経て、2000年代後半は複数の事業に携っていた。そんなある日、「台湾にストーンペーパーという面白い素材がある」と、知人の経営者から耳にして、製造元の台湾の工場に出向いた。

 ストーンペーパーは石灰石から抽出した無機鉱物の粉末を主原料に作られる。通常の紙のように原料として、大量の水や木材チップを使わない。環境負荷が従来の紙より小さい。ストーンペーパーの輸入を決めた。だが――

 大した事業にはならない――当初、山﨑はストーンペーパーにあまり乗り気ではなかった。というのも、彼は大志を抱いている。ソフトバンクの孫正義の講演に参加し感銘を受け、クローバルな世界で役立つ、1兆円を超えるような事業を手掛けたいという夢を秘めていた。

 それに比べれば、台湾の中小企業が手掛けるストーンペーパーはスケールが小さすぎる。

 大手広告代理店の社員で、経営にアイデアを提案したり、新商品の開発を応援したりする部署にいた笹木と山﨑の初対面は、TBMを設立する前年の2010年だった。

「“若い人がグローバルな場で役立つ機会を作れるような会社を興したい”“世界で役立つ会社を日本から”“1兆円を売り上げる事業をやりたい”とか。経営者として目指す事業の大きさに、心揺さぶられたのは事実ですね」

『紙の神様』との出会い

 笹木は初対面の印象をそう語る。山﨑の夢は聞きようによっては、どこか眉唾物の印象をぬぐえないが、おそらく若かりし頃の孫正義も、そんな雰囲気を持ち合わせていたに違いない。孫が考案した機械を当時シャープ専務の佐々木正に売り込み、佐々木の信頼を得て銀行からの1億の融資を手にし、事業を興したように、山﨑敦義もうがって言えば“年寄り殺し”、よく言えば成功した年配者の信頼を勝ち得る術に恵まれているのだろう。

 山﨑が知人の経営者の紹介で、日本製紙の開発のトップだった元専務取締役の角祐一郎(現TBM取締役会長)と出会ったのは、2000年代末だった。TBMのホームページ掲載された二人の対談記事や笹木の話から、こんな会話が交わされたに違いない。

「角さんは『紙の神様』のような方だと聞き及んでおります」

「将来的に水資源のない開発途上国に工場を建設し、子供たちのノートや教科書を作れるようになるといいね」

 ペーパーレスといわれる時代でも、経済の発展に伴って紙の需要は伸びる。近年の気候変動の影響で、紙の原料の森林資源や水資源の枯渇が問題になっている。世界的に埋蔵量の多い石灰石を代替の原料に、紙が作れるなら素晴らしいと、紙のエキスパートの角は思った。

「力を貸してほしいんです。ストーンペーパーの品質向上のため、アドバイスをいただきたい」そんな山﨑の言葉が、角に刺さったのは想像に難くない。

輸入したストーンペーパーは、エコが注目されだした2008~2009年頃、音楽イベントや自動車メーカーのポスターに使われた。当初、ストーンペーパーにあまり魅力を感じなかった山﨑だが、角祐一郎と知遇を得たり、持ち込んだ大手企業の担当者が興味を示すのを目のあたりにして、素材として世界に通用するポテンシャルを秘めていることに気づく。

“よし!”と、創業者として試練が始まる

 まず、日本国内でストーンペーパーを広めていくには素材の改良が必要だ。現状のストーンペーパーよりもっと軽くして価格を抑え、品質を安定させなければならない。山﨑は当初、製品の生産を台湾の工場に委託し、自社工場は持たないファブレスを考えた。そのために角をはじめ紙づくりに精通した技術者からのアドバイスを台湾の工場に伝える、技術指導を担った。彼のパスポートは台湾渡航の入出国のスタンプで埋まるほど、台湾に通った。

「製品を改良して、日本で売れるものにしていきましょう」

 台湾の工場の人間に、そう熱く説いたのだが、一向に素材の改良は進まない。

「製品の質を良くしようと言われても……、山﨑さん、私たちは製品で商売しなくてもいい。ストーンペーパーの製造機を販売して、稼げばいいですよ」

 台湾側のそんな趣旨の言い分に、製品の改良が実現はかなわないとわかった山﨑は、勝負に出ることを決意する。

 石灰石を原料とした新素材を世の中に広める、こんな夢のある事業はない。よし、新素材を開発し、自社工場を作ろうじゃないか――

 この時点で新素材は紙のみではなく、プラスチックの代替原料としての可能性も山﨑の視野に入っていた。石灰石を主原料とする新素材を供給する会社、TBMの設立は2011年8月。社名はタイムズ・ブリッジ・マネージメントの頭文字を取った。時代に橋をかけるマネージメントに取り組むという意味だが、会社はできても売る製品がない。

 運転資金、開発資金、そして工場建設のための資金、山﨑は金策に走り回る。起業家として歯を食いしばる時期が始まった。LIMEXを世の中に広める悪戦苦闘ぶりは、明日公開の後編で。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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