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時候のあいさつは、社会人が身に付けておきたい教養になります。ビジネス文書において使う機会も多いので、相手に違和感を与えないためにも、意味や役割だけでなく注意点なども把握することが大切です。具体的な例文や結びの言葉も併せて紹介します。
梅雨の季節のあいさつとは
そもそも時候のあいさつとは、どのようなものなのでしょうか?誤った使い方をしないように、まずは正しい意味や特徴について確認しておきましょう。
そもそも時候のあいさつとはどんなもの?
時候のあいさつとは、手紙の頭語に続く書き出しとして使用する言葉で、天候に応じた心情や季節の移り変わりを表し、相手を気遣う気持ちを伝える意味があります。
四季がある日本ならではの手紙の習慣で、時候のあいさつには大体決まり文句が存在します。手紙を出すタイミングに適した季節や天候の言葉を選択することで、口頭のあいさつにはない、文字を使った豊かなコミュニケーションを図ることが可能です。
ある程度の決まり文句はありますが、『梅雨の季節のあいさつ』といっても梅雨入りする前から梅雨が明けるまで、季節は少しずつ変化していきます。その細かな変化に合わせて、時候のあいさつも選ぶ言葉を変える必要があります。
漢語調と口語調の2通りある
時候のあいさつには、『漢語調』と『口語調』の2種類があります。それぞれ役割が異なるので、手紙を送る場面や相手によって、漢語調と口語調を使い分けるとよいでしょう。
漢語調はビジネス文書やフォーマルな場面で使われる言葉で、改まった格調高い印象を与えます。中国の漢字をベースにして日本で使われてきた言葉で、例えば『初夏の候』のように、季節を表す言葉の後ろに『候』『折』『みぎり』などを付けて使用します。
口語調はビジネスシーンでも使用できますが、基本的には友人や付き合いが長い相手に対して使う、親しみやすいカジュアルな表現です。例えば『梅雨とはいえ、連日好天が続いております』『暑さが日増しに厳しくなってまいりました』のように、話し言葉で柔らかい印象を与えます。
梅雨に使える時候のあいさつ
梅雨に使える時候のあいさつには、どのようなものがあるでしょうか?梅雨入り後と梅雨明けに分けて、それぞれの例文を紹介するので、実際の手紙で使用してみましょう。
梅雨入り後に使える例文
梅雨入りは6月上旬から中旬にあたります。梅雨入りにふさわしい漢語調のあいさつ文は、梅雨の時期に入ったことを表す『入梅の候』という表現が使えます。雨が何日か止んで晴れ間が見える梅雨の『中休み』には、『梅雨晴れの候』が最適です。
- 入梅の候、貴社益々ご清栄の由、何よりと存じます
- 梅雨晴れの候、いかがお過ごしでしょうか
口語調の場合は、6月上旬から中旬は『梅雨入り』や『紫陽花』を使った表現で、中休みには『梅雨』や『長雨』を使った時候のあいさつがよいでしょう。
- 入梅とともに雨が続きますが
- 雨に紫陽花の花が映える季節となりました
- 梅雨も中休みとなったのか、朝から気持ちよい青空が広がった1日でした
- 長雨の続く毎日ですが
梅雨明けに使える例文
梅雨明けは6月下旬から7月上旬で、漢語調のあいさつ文には『梅雨晴れの候』や『短夜の候』などがあります。梅雨が明けずに雨が降り続いている場合は、『霖雨の候』も適したあいさつです。
- 梅雨晴れの候、貴社益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます
- 短夜の候、貴殿益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
- 梅雨明けが待たれる霖雨の候、貴殿におかれましては、益々ご健勝のことと存じ上げます
口語調の場合は『梅雨明け』や『梅雨あがる』などを使った、夏らしさを表現するあいさつが好ましいでしょう。
- 梅雨明けの待たれる今日この頃
- ようやく梅雨もあがり、気持ちのよい青空が広がっています
- 雨上がり、草木の緑も一層深まったように感じられます
- 梅雨が明け、いよいよ夏本番となりますが
梅雨のない地方で使える6月のあいさつ
梅雨のない地方では、6月には夏の到来を感じさせるあいさつや夏らしさを表現する文章を使いましょう。
漢語調のあいさつ文では、以下のような言葉が適しています。
- 立夏の候、貴社には益々ご隆盛の段、お慶び申し上げます
- 若葉青葉の候、貴殿益々ご清祥の由、何よりと存じます
- 短夜の候、貴社には益々ご隆盛の由、慶賀の至りに存じます
- 初夏の候、貴殿におかれましてはいよいよご健勝の趣、何よりと存じます
口語調のあいさつ文に適している表現は、以下の通りになります。
- 初夏の爽やかな風が木々の緑とたわむれる頃となりました
- 青田をわたる風も爽やかな頃となりました
- 初夏の風に肌も汗ばむ頃
- 暑さ日増しに厳しくなっておりますが
梅雨の時期に使える結びの言葉
梅雨の時期に限らず、手紙には時候のあいさつと同様に結びの言葉が必要になります。例文を参考に正しく把握しておきましょう。
手紙を締めくくる「結びの言葉」
結びの言葉とは、主文の後に続けて記述する手紙を締めくくるための言葉で、手紙を送る相手や内容によって使い分けます。最後まで思いやりの気持ちを添えて、丁寧に心を込めて書くことによって、印象のよい手紙になります。
簡潔に書き上げることが大切で、漢語調を使ったビジネス文書やフォーマルな場面では、繁栄や活躍などを祈る気持ちを伝えましょう。友人や付き合いが長い相手への口語調を使った手紙では、相手の健康や幸せを願う言葉が適しています。
結びの言葉には以下のような使い分けがあります。
- 相手の繁栄や活躍を祈る
- 相手の健康や幸せを願う
- 今後の厚誼や鞭撻を願う
- 手紙の用件をまとめる
- 文章の乱筆や乱文をわびる
- 相手に伝言を頼む
- 相手に返事を求める
結びの言葉の例文
梅雨の季節に使える結びの言葉を紹介します。手紙を送る相手や内容に適した表現を使い分け、簡潔に締めくくりましょう。
漢語調の結びの言葉では、以下のような表現が適しています。
- 時候不順の折、どうかご自愛専一に、益々のご活躍をお祈り申し上げます
- 梅雨の晴れ間の美しい青空に夏らしさを覚える昨今、どうぞお健やかにお過ごしください
口語調の結びの言葉に適している表現は、以下の通りになります。
- 間もなく梅雨入りかと思われます。体調を崩さないようお気を付けください
- 梅雨は、まだしばらく続きそうです。どうかくれぐれもご自愛ください
- 夏本番まであとわずか。楽しい計画をお立てください
「ご自愛ください」の意味は?覚えておきたい正しい使い方と言い換え表現
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取材・文/編集部