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【サステイナブル企業のリアル】「コンセプトは“顔が見える電力 ”、離脱率は0%代です」みんな電力・澤田幸裕さん

2021.04.23

サステイナブル――持続可能、環境や資源に配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、それらにコミットする製品や企業を紹介する新シリーズ、「サステイナブルな企業のリアル」。今回はサステイナブルの一丁目一番地、再生可能エネルギー(再エネ)のベンチャー企業とサステイナブルを意識して販売する製品の物語である。

みんな電力株式会社(みん電)プロジェクト推進3チーム みんなエアー部長 澤田幸裕(39)。2011年5月に設立された「みんな電力」は、小売り電気事業者600社以上の中で、再エネ利用率はトップクラス。太陽光・風力・地熱・中小水力・バイオマスといった全国の再エネの中小発電所と直接契約をして、「顔の見える電力」を標榜する。17年にこの会社に転職した澤田さん、電気の営業を振り出しに、現在は細菌やウイルスを可視化できる機器を扱う「みんなエアー」の事業責任者を担っている。

発電者と個人や企業をつなげる

 埼玉県深谷市で育った澤田幸裕、大学を中退して、20代前半はデスメタルバンドのギターとして活動したが、家庭を持つことになり健康食品会社に就職。同じ業態の会社が社会的な問題を起こしたこともあり、電気の保安関係の会社に転職。省エネの装置等のセールスを担当し10年ほど勤めたが、転職の最後のチャンスと36才の時に今の会社に再就職した。

「面接で社長に聞いた“顔の見える電力”の話が新鮮でした。電気はお金を払って買うもので、発電所を気にしたこともなかったですが、社長は“発電者と個人や企業をつなげる”と」

 例えば、自分の電気代が津波の被災地の太陽光発電の事業者に払われているとか。畑の農作物と一緒に太陽をシェアする発電所や、最先端技術を駆使した海上の風力発電に払われているとか。自分の電気代を受け取っているのは誰か、発電の事業者が“見える”。それによって、自分のライフスタイルやポリシーに沿った電気の買い方ができる。“顔の見える電力”は、サステイナブルなエネルギーの太いパイプ創りにつながっていく。

 今は法人営業の社員は十数名いるが、当時は澤田ともう一人のみで、名刺を手作りして入社翌日、板橋区から飛び込み営業を始めた。

「太陽光発電なんて、天気が悪かったら停電しちゃうんじゃないの?」

「これまで通りの送電網を使い電気をお届けするので、停電が増えたりすることは一切ありません」

「自然任せじゃパワーがないんじゃないか」

「電気の品質や信頼性は一切変わりません。お安くなる可能性がありますから、まず試算させてください。自然に優しい電気を使ってみてください」

 当初はそんなセールストークだった。風力、太陽光、地熱、バイオマス、現在契約する再エネの発電所は青森から九州まで約500カ所。従来の送電線を借用して送配電を行うが、この会社が供給する総電力の約80%は、再エネやそれに準じる発電者から仕入れていることになる。

再エネと発電者のアピールが実を結ぶ

 2017年7月から営業をはじめて、最初は毎日見積もりが取れた。1~2%でも電気代が安くなればと契約に繋がるケースが多かった。だが、9月になるとピタッと契約が取れなくなる。同業他社が攻勢を仕掛けてきたのだ。

 そもそも2016年4月の法改正で、様々な業種の企業が電力の販売ができるようになり現在、東電、関電等、大手電力事業者の他に登録済みの電気小売業者は600社を超えている。

――600社を超える電力小売業界の中で生き残るには、差別化が必要です。

「ですから、飛び込みの営業は止めて、親和性が高そうな業種に電話をしたり、訪ねて行ったりしたんです」

――再エネや“顔の見える電力”というポリシーに、興味や賛同を抱いてくれそうな業種をターゲットに、セールスをしたわけですね。

「ゴミ事業者やキリスト教の教会、オーガニック協会や学校、福祉施設、農業法人等への営業で、少しずつ契約者を増やしました」

 澤田が入社した2017年当時、再エネの認知度は今と比較にならないほど低かった。サステイナブルという言葉も、世間でほとんど通用しなかった。だが、国連で採択されたSDGsの国を挙げての推進や、菅義偉首相の2050年カーボンニュートラル宣言等で、一気の環境問題がクローズアップされる。みん電に時代の風が吹いてきたのだ。

――当初は電気料金の安さを契約ゲットの武器にしましたが、

「今は安いからという理由だけで、契約するお客さんは少数派です」

契約者の離脱率は0%代

 営業トークでは“再生可能エネルギー”と“顔の見える電力”の説明を徹底していった。

“日本の電力の80%以上は化石燃料によるもの、化石燃料の輸入が滞れば10%程度しか、電力を供給できない。再エネが増加は日本の電力の自給率を上げ、自分たちを守ることに繋がる”等、ポリシーを伝えるトークだ。

「我慢して、ずっと再エネと発電者のことをアピールしてきたことが、実を結んだという感じです。ネットで再エネを検索すると、うちの会社が上位に表示されますよ」

 時代の潮流と営業トークの結果、ある学校法人の契約者は、「みん電さんより電気代を5%安くしますから、うちに乗り換えませんか」と、同業他社に勧誘された。だが、「うちはポリシーがありますから、替える気はありません」そう同業他社に応えた等、澤田幸裕の頬が緩む逸話が舞い込み始める。

「現在、うちの契約者の離脱率は0%代です。お客さんはうちのコンセプトに賛同して、応援してくれている実感を抱いています」

 現在の契約件数は個人が約6000世帯、法人がおよそ570社、3000カ所。“再エネはみん電”と認知を得つつある。

 電気事業に集中して、売上を伸ばしていこうという社内の声は当然だが、「次に顔が見えたら面白いのは何だろうね?」「電気の次ですか」「空気の可視化なんて、面白いね」「アハハハ」

 社長の大石英司と澤田は、何気にそんな話をしていた。ところがだ。それが実現化できる話が舞い込んできたのである。

 後編ではコロナ禍の中、“顔の見える空気”の実現で、大いに盛り上がっていくことになる。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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