「グリーンベルト」とは、その名の通り「緑で形成された帯」のこと。主に道路の一部を緑色に色分けした部分や都市部の森や木で区切られた地域を指すことが多いが、ビジネス用語や競馬用語として使われたり、水耕栽培のニラの品種名や柔道の緑帯を指す言葉として用いられたりすることもある。本記事では、この「グリーンベルト」について、場面ごとに変化するさまざまな意味を詳しく解説していく。
都市計画や道路におけるグリーンベルトとは
ではまず、街や道路に関連するグリーンベルトについて紹介する。普段何気なく目にしている都市の緑化地域や、道路脇の緑に色分けされた部分にはそもそもどのような意味があるのだろうか。
都市におけるグリーンベルトの歴史
都市計画上のグリーンベルトとは、先述の通り街の中に存在する森林などの緑化地帯のこと。19世紀末、ロンドンをはじめとする大都市では過密化やスラム化が問題となっており、これを解消すべくエベネザー・ハワードが提唱したのが「ガーデンシティ」と呼ばれる都市構想だった。
「ガーデンシティ」では、都市部の無秩序な広がりを阻止する方法として都市の周りに緑化地帯を設けることが提案され、その取り組みはロンドンのみならず次第に世界中に広がっていく。
例えばドイツでは、かつて国を2つに分断していた旧国境の「鉄のカーテン」がグリーンベルトに姿を変え、多くの絶滅危惧種を含む動植物の生態系維持に役立っている。
一方で、グリーンベルト地帯は法律によって開発が制限されることから、都市部の人口過密や地価上昇といったリスクも伴う。実際、首都圏の慢性的な住宅不足が問題となり、2002年から段階的にグリーンベルトが解除された韓国のような例も存在する。
グリーンベルトの目的
ガーデンシティ構想に基づいたイギリス政府のグリーンベルト政策は、都市の過剰な増大や環境保護の他にも、近郊の街の同一化や街の歴史環境の保全、荒廃地の再利用が目的としている。日本においては、住宅と工業地帯の分断や土砂災害の予防、火災の延焼防止といった理由でグリーンベルトが設置されるケースあり、導入した国や都市によってその目的は異なっている。
道路のグリーンベルトは交通安全対策
道路上にもグリーンベルトと呼ばれる緑の路側帯がある。歩道が設置できない道路において、道路幅を実際よりも広く視認させることによるスピード抑止効果や歩行スペースの確保を目的にして作られており、幼稚園や小学校の近くに設けられることが多い。目的となる学校などから500m以内の道路がおおまかな設置基準とされている。
側道に設置される「自転車走行レーン」と勘違いされがちだが、それとはまったくの別物。あくまでも歩行者の安全を守るために作られたものだ。ただし、道路交通法で明確に規制されているわけではなく、扱いは一般的な道路と変わらず、歩行者優先通路の意味合いは持たないためグリーンベルトがあっても歩行には注意しなくてはならない。
ビジネスや競馬用語としても使われるグリーンベルト
では、ビジネス用語や競馬用語のグリーンベルトはどのような意味を持つのかを紹介しよう。特に、ビジネス用語におけるグリーンベルトは「シックスシグマ」と呼ばれる品質管理手法に大きく関わりがある言葉だ。
ビジネス用語ではリーンシックスシグマにおけるプロジェクトリーダーのこと
企業の品質マネジメントや組織改善の方法論である「リーンシックスシグマ」。企業が抱えるさまざまな問題を生み出しているプロセスを分析し改善へ導いていく手法で、大手企業でも導入が進んでいる。グリーンベルトとはリーンシックスシグマを行う上で必要な資格の一つ。チームのリーダーであるブラックベルトから依頼された課題を実際に行い、改善活動を担う実行役だ。
【参考】大企業が導入している経営・品質管理手法「シックスシグマ」とは?
競馬用語では競馬場の特定の箇所を指す
多くの馬が一斉に走る競馬場。競走馬の体重はおよそ500㎏もあり、レースが進むにつれコース内の芝は衝撃で掘り起こされて荒れてしまう。特に、距離が短く有利になるインコースの芝は荒れやすく、ある程度開催が進むと荒れた芝を保護するためにコースの内側に仮柵が設けられる。
こうして仮柵に守られた芝が回復すると柵を撤去しまたコースとして利用するが、この「回復した芝の部分」をグリーンベルトと呼ぶ。グリーンベルト部分は芝の状態が良いため馬にとっては走りやすく、グリーンベルトのあるレースは「逃げ」と呼ばれる開始直後から先頭に立つタイプの馬が有利とも言われる。
文/oki