日本の製造業の発展を支えた品質管理手法「TQC」。専門用語として使われることが多いため、あまり聞いたことがない人も多いかもしれない。
本記事では、TQCの意味や仕組みを解説し、活用されることの多い基本的なフレームワークを併せて紹介する。この機会に「TQC」の基礎的な概念について理解を深めてほしい。
TQCとは?何の略?
TQCとは、品質管理の全社的取り組みのこと。製品の製造・販売からアフターサービスまで、一貫した品質管理を実現する手法だ。
Total Quality Controlの略
TQCは、「Total Quality Control」の頭文字をとった略語で、日本語では「統合的品質管理」や「全社的統合管理」などと訳される。アメリカの「A.ファイゲンバウム」が提唱した言葉で、製造部門だけでなく企画や営業、経営者まで総合的かつ全社的に品質レベルの向上に取り組む体制のことを指す。
‘’全員参加’’に重点を置いた取り組みで、「JIS(日本工業規格)」においては「品質管理を効果的に実施するためには、市場の調査、研究・開発・製品の企画、設計、生産準備、購買・外注、製造、検査、販売及びアフターサービス並びに財務、人事、教育など企業活動の全段階にわたり経営者を始め管理者、監督者、作業者などの企業の全員の参加と協力が必要である」と定義されている。
また、TQCの理念に基づいた品質管理の活動を「TQC活動」と呼ぶことがある。
日本的品質管理とは
日本的品質管理とは、TQCの理念を日本の経営風土に適応させた管理手法のこと。日本では、1960年代頃から「品質」に着目した事業戦略の一環として多くの企業がTQCを取り入れ、高品質な日本製品が生み出された。その結果、日本的な経営手法が注目を浴び、日本的品質管理の概念が世界に波及したと言われている。
TQMとの違い
TQMとは、「Total Quality Management」の略語で、「総合的品質管理」を意味する。TQCにおける品質管理活動を経営戦略に昇華させた概念で、顧客が求める「品質」や「付加価値」に重点を置いたシステムだ。主に製造業において効果を発揮するTQCに対し、TQMはサービスなどの無形商品にも適用可能で、今日では多くの企業がTQM活動を行なっている。
QC活動
TQCは全社的な取り組みを特徴とする品質管理手法だか、実際は各現場や部門における「QC活動」を基礎的要素として成り立っている。ここでは、個々の「QC活動」において活用されることが多い基本的なフレームワークを解説する。
5S
5Sとは、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Situke)」の頭文字をとった言葉。一見すると当たり前のように思える事項だが、これらを徹底することは業務効率化や品質管理の適正化に大きく貢献する。
特に「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」の2Sは、経営体質の改善に不可欠の要素。5Sをシステム化することで、安定した品質管理体制を構築することができる。
【参考】オフィスや工場、バックヤードなどでよく見かける「5S」とは何のこと?
QCストーリー
QCストーリーとは、品質管理における問題解決のプロセスや手順のこと。具体的には「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「計画策定」「分析」「対策立案」「効果確認」「歯止め」の8段階で構成されるのが一般的。これら8ステップを着実に履践することで、良好な管理体制の構築が可能となる。
またQCストーリーは、設計的なアプローチを行う「課題解決型」、問題に迫って対策を検討する「問題解決型」、原因や対策が明らかな場合の「施策実行型」の3つのタイプに分類される。
標準化
標準化とは、「モノ」や「コト」を秩序化すること。多人数・多工程の業務においては、作業の進め方が多様かつ複雑になり、結果(品質)のバラつきが大きくなってしまうケースも少なくない。そこで、その時点における最も優れた方法を「標準」に定め、各工程の整備を行うことで品質の安定化を図る。標準化を取り入れることで、品質維持や生産効率の向上などにつながる。
統計的手法
統計的手法とは、「ISO9001」において記載されている用語で、収集したデータを解析する手法の総称。「実験計画法」や「相関分析」など、管理・改善・検証などに用いる分析手法一般を指す。
【参考】仕事でよく見る「ISO9001」とはどんな規格?覚えておきたいメリットと取得条件
QC7つ道具(新QC7つ道具)
QC7つ道具とは、品質管理において効果を発揮する7つのツールのこと。定量的なデータ分析に適した「グラフ」「パレート図」「特性要因図」「散布図」「管理図」「チェックシート」「ヒストグラム」の7つの手法があり、品質管理における分析・改善に用いられている。
また、定性的な分析に適した新QC7つ道具も存在。数値化が困難な「言語データ」を扱う営業や総務部門において有用で、「親和図法」「系統図法」「連関図法」「マトリックス図法」「アローダイアグラム」「マトリックスデータ解析法」「PDPC法」の7つの手法を指す。
文/oki