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製造業におけるリスク管理の方法「FMEA」とは?

2024.05.22

製造業の世界では一般的に用いられている「FMEA」という言葉。”リスク管理”の手法の一つで、この考え方は製造業以外の分野でもきっと応用できるはずだ。

そこで本記事では、FMEAの基礎知識と実際の流れをできるだけわかりやすく解説する。製造業の方は改めて正しい意味を、それ以外の方は日々のタスクに応用できないかチェックしてみてほしい。

製品の品質管理で用いられるFMEAとは

FMEAについて書かれたメモボードを掲げる手

はじめにFMEAとは何の略で、どのような意味なのかを解説する。FMEAを知る上では、「故障モード」という言葉、考え方を理解するのがポイントだ。

FMEAは「故障モード影響解析(Failure Mode and Effects Analysis)」の略

FMEAは英語の「Failure Mode and Effects Analysis」の頭文字を取った言葉で、日本語では「(潜在的)故障モード影響解析」と訳される。読み方は、エフ・エム・イー・エー。

一言で言えば、主に工場・製造業において製品の不具合や故障を防止するために用いられる分析手法のことで、国際電気標準会議(IEC)の国際規格としても知られている。製造工程の見直しの際にFMEAが導入されるケースが多く、工程ごとのリスクに対し評価を行い、問題を事前に取り除くことを目的としている。

また、FMEAは製品設計の際に実施する「設計FMEA(DFMEA:Design FMEA)」と、工程設計を対象にした「工程FMEA(PFMEA:Process FMEA)」の2つに分けられる。それぞれ高品質な製品をユーザーに届けるためには欠かせない手法だ。

故障モードとは?

そもそも「故障モード(Failure Mode)」とは、摩耗・断線・劣化などの製品における故障状態の形式分類のことを指す。実際にFMEAを導入する際には、プロセスごとに設備・人・方法・部品・環境における「変化点」を挙げ、その変化によって起こりうる不具合を検討していく。

例えば、ライン上でその工程を担当する人が変わることで、技術不足による不具合が起こりうる場合は、そうした不安点を故障モードとして位置付けていく。

FMEAの手法は軍事・宇宙開発に始まり自動車業界へと広まった

FMEAは、1940年代にアメリカ軍で導入されたのが始まり。その後、60年代には宇宙開発分野で応用され、有名なアポロ計画にもこのFMEAの手法が取り入れられたという。70年代にはフォード社が自動車業界に導入し、日本でもこの頃から製品を量産する前にFMEAを検討するようになる。

混同されやすいFTA(フォルトツリー解析)とFMEAの違い

FMEAとよく混同される言葉に「FTA」がある。これは「Fault Tree Analysis」の略で、日本語では「フォルトツリー解析」と呼ばれる。安全上発生が望ましくない事象(トップ事象)を挙げ、その要因を連鎖的に示していく解析手法だ。

FTAはトップ事象からのトップダウン手法であるのに対し、FMEAは故障モードによる構成要素からのボトムアップ手法である点に大きな違いがある。

設計FMEAは製品設計段階でのリスクに対応

設計図を描く手

設計FMEAでは、製品設計段階での潜在的なバグや品質リスクなどを予測・摘出し、発生確率や発生時の大きさを評価・採点して予防処置をするために作成される。工程FMEAとあわせて実行されることが多く、工程初期の潜在リスクを発見するために開発工程の一部に組み込まれている。

工程FMEAを実行する際の流れ

未来的な自動車工場

ここからは、具体的に工程FMEAを実行する流れを紹介する。製造以外にも、自分の仕事に置き換えてFMEAの手法を取り入れてみると、さらに質の高い仕事ができるかもしれない。

工程FMEAの手法1:故障モードを明確にする

先述したように、起こり得る不具合を故障モードと呼び、FMEAはそれを明確にすることから始まる。その際、「工程FMEA検討シート」「FMEAフォーマット」を用いるのが一般的。工程、作業名目、動作などを記入していき、故障モードを洗い出す。

ただし、ここで洗い出すのは工程におけるミスが原因の故障モード。「部品が上手く結合しない」などの不具合は設計FMEAの領域のため、あくまでも「取り付けにムラがある」といった工程における不具合を挙げていくのがポイントだ。

工程FMEAの手法2:影響と発生度、検出度を分析し数値化する

次に、それぞれの故障モードが発生した時に与える影響の大きさを10段階で数値化していく。例えば「人の命に関わるような致命的な影響」を10として、影響がないものを1に設定。加えて、「発生頻度(高い:10、低い:1)」や検出できる確率を示す「検出度(低い:10、高い:1)」についても同じ10段階で数値化していく。

これら3つの項目を掛け合わせたものを「RPM(影響×発生度×検出度)」と呼び、リスクの大きさを測る指標として用いる。

【RPMの例】※影響8、発生頻度4、検出度5の場合

・8(影響)×4(頻度)×5(検出度)=RPM160

工程FMEAの手法3:優先すべき故障モードを明確にし対処する

最後に、「RPM(影響×発生度×検出度)」が高い課題に優先順位を付けていく。RPMが大きいものほどリスクの高い事象であるため、早急な対処が必要だ。最終的には、RPMが100未満になるまで改善と評価を繰り返していく。発生度が高い不具合なら、整備そのものを入れ替えるか、人の技術の向上が必要になるかもしれない。

ただし、ここで注意したいのが「影響」の大きさは改善によって変わらないという点。つまり、いかに「発生頻度」を下げ、「検出度」を上げていくかがFMEAの鍵になる。

製造業ではFMEAやFTAの他にも様々な専門用語が使われている。開発工程で注目される「コンカレント・エンジニアリング」も製造業から生まれた言葉だ。特に開発分野に関わる人はあわせてチェックしておくとよいだろう。

製造業でよく使われる「コンカレント・エンジニアリング」とはどういう意味?

主に生産技術の分野で用いられる「コンカレント・エンジニアリング」という言葉をご存知だろうか。これは事業展開のスピードがビジネス成功のカギを握る今日、さまざまな分...

文/oki

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