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【サステイナブル企業のリアル】「現場を見て確認し実現できるかどうか、じっくり判断する」テラモーターズ代表取締役社長・上田晃裕

2021.03.01

 サステイナブル――持続可能、環境や資源に配慮、地球環境の保全、未来の子孫の利益を損なわない社会発展、それらにコミットする製品や企業を紹介する新シリーズ、「サステイナブル企業のリアル」。シリーズ第3弾はEⅤ車をインドで販売する企業の物語である。

 テラモーターズ株式会社 代表取締役社長上田晃裕さん(35)。化石燃料を使う内燃機関を禁止する動きが世界で加速している。ノルウェーは2025年、英国、ドイツ、オランダは30年にガソリン車の全面禁止を宣言している。日本も菅首相がグリーン成長戦略を掲げ、ハイブリット車を除くガソリン車の35年までの全廃を唱えている。その中でEⅤ(電気自動車)は、サステイナブルな脱炭素時代の潮流を代表するアイテムの一つだ。

 世界を席巻するハイブリット車の陰に隠れ、日本でEⅤの認識と普及は、世界の中で周回遅れといわれる。だが、EⅤで世界に打って出ようという日本発のベンチャー企業も存在するのだ。今回のテラモーターズはそんな企業だ。現在、Eリキシャといわれる電動三輪車のインドでのシェアナンバーワンである。

「何かを変える必要がある」

 現会長で創業者の徳重徹(51)が、テラモーターズを起業したのは2010年だった。そのころ現社長の上田は、大手電機メーカーにいた。

「日本の技術で世界の諸問題を解決したいという思いがありまして。念願かない中東に赴任したのは、入社3年後の2011年でした」エジプトやサウジアラビア等に駐在。サウジアラビアの代理店と一緒に、現地で工場を立ち上げ、およそ20億円のエアコンを納入する仕事を手掛けた。

「市場の新規開拓にも携われたし、やりたいことは全部やらしてもらいました」

 後は大手電機メーカーでのポストを、駆け上がるだけだったのだが…

「面白い仕事をしているはずなのに、自分の中で100%燃えている実感がなかったんです」

 競合のⅬGやサムスンは、現地に開発部隊を置き、市場を的確につかんでいる。例えばⅬGが中東で発売したテレビには、1日5回のイスラム教のお祈りの時間に、それに適した音楽と画像に自動的に切り替わる。

 上田が勤務した大手電機メーカーの事業開発はすべて日本だ。アラビア語でアンケートを取り、現地でフィットする家電を提案しても、「難しいよ、上田さん」と本社の反応だ。

「言い続けても何も変わらないな…」そんな思いを抱いている時に、転職エージェントの紹介で徳重徹と出会う。

「何かを変える必要があると思っているんです」そう訴えるように言う上田に、徳重が応える。「ここ50年、日本の企業は廃れた。国力が低下している。僕らでもう一度、ソニーやホンダのような会社を作ろうじゃないか」

 そんな言葉に上田はしびれた。自分たちで決定し、大胆な発想で世界に通用する企業を創造する――、「大企業にいて、僕に足りなかったものはこれだと思いましたね。転職しよう、この会社でやっていこうと」

SDGsが掲げた目標に合致

彼がテラモーターズに転職した2015年は、これから海外に出て行こうとする時期だった。アジアではものすごい数の二輪車、三輪車が走っている。ターゲットはタクシーとして使われる三輪車(リキシャ)だ。オートリキシャ(三輪ガソリン車)が占める市場に、Eリキシャ(三輪EV)をセールスする。

 上田はバングラディシュでの立ち上げ要員として入社の当日、現地に向かった。先に市場開発要員として現地に入りした人間と、二人三脚で販売会社を立ち上げる。『日本から来た電動バイクの会社です』と看板を揚げ、三輪車の専門店に営業を仕掛けた。

「EⅤ車はガソリン車に比べて構造が単純です」
「EⅤ車にすれば車体の品質が上がり、買い替えの頻度が下がります。部品が単純ですからメンテナンスも楽」
「電機はガソリンに比べてランニングコストが安い。経済的にもメリットがあります」

 主な競合は中国企業だが、市場にはアフターサービスの概念がなかった。「買った後のフォローも充実してます」という点も強調した。

 リキシャで生計を立てるのは、低所得の人が多い。会社はサステイナブルを標榜し、SDGs(持続可能な開発目標)に賛同を表明している。Eリキシャの車両価格はガソリン車より安い、電機はガソリンより燃料費が安価等、ひいては貧困問題の解決にもつながっていく。EⅤはCO2を抑えて環境にいい。ともにSDGsが掲げた目標に合致している。

“三現主義”と“PSI管理”の徹底

「おう、ジャパニーズ!」バングラディシュの人たちは、日本企業がこれまで高品質の製品をたくさん作ってきたことを知っている。親日的だ。日本人というだけで、リキシャのディーラーは必ず会ってくれ、「日本製品なら1回買ってみよう」という話になる。販売店の数はどんどん増えた。だが、好事魔多し――、

「いったいどうなっているんだ!!」

 ディーラーが怒鳴り込んできたのは、発売から3か月後、3000台ほどEリキシャを販売した頃だった。車体は中国のOEMの工場で作ったものを輸入し組み立てたが、EⅤの要の電池、バッテリーの供給は現地で立ち上げたジョイントベンチャーから調達したものであった。その電池が不具合を起こしたのだ。

「失敗は必ずあります。大事なのはそこで死なないこと。再起不能になってはダメです」

――そのためには?

「組んだ現地のバッテリーメーカーと折半で、いち早く補償し、対処したことがよかった」

――この案件で、上田さんが教訓化したことといえば?

「現場を見て、現物を確認し、現実的にできるかどうかをしっかり判断する、“三現主義を徹底して走りましょう”と、うちの役員の一人に言われたことが忘れませんね」

――逆にバングラディシュでの成功談を教えてください。

「製造業で大事なのは、モノを買って販売して、在庫を出さないことで。前職ではPSI管理といっていましたが、そこをがっちりとやったことですね」
限られた資金の中で利益を出すためには、P(生産)S(販売計画)I(在庫)この3つの管理を徹底する。情報が吸い上がる仕組みを整える。“このパーツが足りない、注文しよう”とか、可視化できる体制を作り、取りこぼしをなくして効率を上げる。

 つまり、「僕がいなくても、スタッフが現場で自らの判断でやれる組織作りが、できたと思います」

 数字もついてきた。販売店は150ほどに増え、売上げも7~8億円は立った。だがーー、

 急成長するインド市場の拠点を立て直すため、上層部はリソースの集中を決意、バングラディシュの撤退に舵を切っていくのである。

 上田晃裕さんがインド法人のトップとして、デリーに赴任したのは2017年1月、巨大市場インドで、Eリキシャを巡っての物語は、明日公開の後編で詳しく解説する。

取材・文/根岸康雄
http://根岸康雄.yokohama

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