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少子高齢化に伴う労働人口の減少は、日本において深刻な問題の一つ。
これは一般企業に限ったことではなく、昨今の医療業界においても同じことが言える。十分な人材確保のためには、「従業員満足度(ES)」の向上が欠かせない。社員が働き続けたいと感じる環境を整えることが、優れた人材の定着に繋がるからだ。
そこで本記事では、ESの基本的な意味、ESを高めることで生まれるメリットについて解説する。最後に、同じ略語でありながら意味の異なる3つのESについても紹介したい。
企業経営におけるESとは?意味をわかりやすく解説
日本で使われるESという言葉は、一般的に「従業員満足度」の意味で使われる。厚生労働省が2019年4月から行っている働き方改革や長時間労働の改善の推進を受け、ますます注目を集める言葉の一つだ。言葉の詳しい意味を見てみよう。
ESは「従業員満足度(employee satisfaction)」の略語
ESは「Employee Satisfaction」の略で、日本語では「従業員満足度」と訳される。
発音はエンプロイー・サティスファクション。英語でEmployeeは「社員」、Satisfactionは「満足」の意味だ。
従業員がどれだけ自分の会社に満足しているかを表す指標のことで、職場環境や社内の人間関係、働きがい、福利厚生、給与などの要素によって計測される。
ESは社内もしくは外部の従業員満足度調査によって複数の要素を元に割り出される
従業員満足度の計測は、自社もしくは外部業者による従業員満足度調査によって行われる。
この調査では、仕事内容や各種人事制度、職場での人間関係、ワークライフバランスなど、さまざまな観点から会社に対する満足度を問う。年に数回この調査を行い、普段従業員が不安、不満に思っていることを明確にし問題点を改善することが、従業員満足度向上に繋がる。
ES(従業員満足度)の改善が社内にもたらす3つのメリット
では、従業員満足度が改善され向上すると、どのようなメリットがあるのだろうか。代表的な3つのメリットを見てみよう。
ESがもたらすメリット1:従業員のモチベーション向上による離職率の低下
従業員満足度が向上することで、仕事に対するモチベーションが上がり、不満からくる離職率を低下させることができる。ネガティブな理由による離職が少ない企業は、優秀な人材が定着しやすい傾向もあるため、従業員満足度の向上は人材確保において欠かせない要素だ。
ESがもたらすメリット2:業務の生産性が向上
厚生労働省の調査によると、従業員満足度を重視する企業はそうでない企業よりも売上高や営業利益率が増加傾向にあるという。
社内環境に満足している社員ほど、仕事に対する”当事者意識”が高く「やらされている」という感覚が少ないようだ。モチベーションの高い社員は積極的に仕事に取り組むため、それが企業自体の生産性アップに繋がる。
【参考】「魅力ある職場づくり」で生産性向上と人材確保 -厚生労働省-
ESがもたらすメリット3:顧客満足度(CS)の向上
従業員満足度は、サービスや商品の品質も左右する。従業員満足度の高い企業の社員は愛社精神が強く、自社の商品やサービスをより深く理解するように努める傾向にあるという。「顧客に対してより価値の高い商品、サービスを提供したい」と考える、この姿勢が日業務に反映されることで、結果的に顧客満足度の向上にも繋がる。
CSもESと同じく仕事や企業経営に欠かせない指標の一つであるため、セットで覚えておくとよいだろう。
仕事や日常生活でよく使われる略語「CS」の正しい意味と使い方 「CS(シーエス)」と聞いて、あなたはまず何を思い浮かべるだろうか。テレビのCS放送、会社での新人CSスキル向上研修など、日常生活ではもちろんビジネスシーンでも...
まだある!経営用語以外のESの意味
ここまで解説してきたように、ビジネスにおいてはESは一般的に「従業員満足度」を指す。
しかし、略語として使われる「ES」は、他の業界では別の意味を持っている。最後に、3つのESの意味を紹介したい。
就活で使うESはエントリーシートの略
就職活動で使う「エントリーシート(Entry Sheet)」もESと略される。
エントリーシートとは、就職活動の書類選考で用いられる応募書類のこと。住所や生年月日、連絡先など固定の質問を問う履歴書とは違い、主に学生の人柄や個性を知るための質問が多い。エントリーシートは企業側が知りたい内容がフォーマットになっているため、就職選考でもっとも重要視される書類と言われている。
心理学で使うES(エス)は人間の精神機能を説明する言葉の一つ
心理学で使う「ES」は、精神分析者フロイトが用いた人間の精神機能を説明する言葉の一つ。読み方は「エス」。
フロイトは人間の心の構造を「自我」「超自我」「エス」の3つに分けて、人間の精神はこの3つの相互作用で成り立っていると定義した。エスとは、人間の欲求や生理的な衝動で、完全に無意識的なもの。人間の精神エネルギーの源であるとも言われている。フロイトは、生まれたばかりの人間の心はすべてエスが独占していると提言する。
建築用語で使われるESは電気用の盤や機器を納めるためのスペース
建築業界でESは、「電気用の盤や機器をおさめるためのスペース」の意味で、一般家庭の建築図面では分電盤を表す際に使用される。
分電盤とは、配電盤より送られる電気を家庭内の配線へ分けたり、漏電を検出してすぐに電気を止める漏電遮断器の役割を果たしたり、電気の使い過ぎを監視する安全ブレーカーとして機能している設備のこと。洗面所や壁面収納内の天井際に設置されている家庭が多い。
文/oki