「マンガ大賞」発起人および選考委員
吉田尚記さんはヒットをこう読む
〝○○みたい〟と思える作品は決してヒットしない!
『鬼滅の刃』がヒットした理由は〝逆ワンピース〟だったから。全くモノローグしないワンパクなルフィに対し、戦闘中も考え続ける超・優等生な炭治郎。基本的に敵がのされるだけで死なない『ワンピース』に対し、『鬼滅の刃』は死の描写から逃げない。大人がカッコイイ海賊たちに対し、鬼殺隊は子供が最前線で戦う。『鬼滅の刃』は『ワンピース』と明確に異なるビジョンを提示したことで、次のヒットは前例に則らない作品であることを改めて明示したように感じます。つまり、〝見たことのないマンガであること〟がポスト鬼滅の条件。〝次は○○みたいな作品が流行る〟という抽象論にはひとつも意味がない。具体論にのみ意味がある。
今回は『鬼滅の刃』との関連性を全く感じない作品のみを選びました。
『可愛そうにね、元気くん』既刊4巻
古宮 海
ヤングジャンプ/集英社
「授業中に鼻血を出した女子をラッキースケベと認識する自分に苦悩する主人公という掴みが最高! 登場人物の性格が全員ヤバい!」
『赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD』既刊8巻
山本おさむ
ビッグコミックオリジナル/小学館
「戦後のアメリカ映画界に吹き荒れたレッドパージを、名画を背景に描く超骨太マンガです。出てくるオヤジたちが立派すぎる!」
『エチカの時間』既刊3巻
玉井雪雄
ビッグコミックスペリオール/小学館
「マンガだから描ける人命の重みのリアルさ! 実践を伴わずに行なわれる倫理という学問をファンタジー世界の出来事として描く」
ニッポン放送アナウンサー 吉田尚記さん
ニッポン放送『ミューコミプラス』(月~木曜24時)のパーソナリティーとして「第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」を受賞。自著に『元コミュ障アナウンサーが考案した会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)などがある。
取材・文/渡辺和博