店舗経営におけるメリット
マーチャンダイジングを導入することは、小売業者がビジネスを行う上で当たり前に守るべきことを、当たり前にこなすための仕組み作りだともいえるでしょう。
マーチャンダイジングを行うことで得られるメリットについて、具体的に紹介していきます。
満足度が上がり売り上げ増が期待できる
大量生産・大量販売されている商品を扱っている小売店の場合、特に都市部では同一商圏に競合他社が多数存在するでしょう。
その中で、自店のポジションを確立していくには、商品力の向上を図り、魅力のあるディスプレイを行い、競争力のある価格設定にすることが求められます。
これらを消費者の目線から見てみましょう。もし、魅力ある商品が手頃な価格で展示されていれば、自然とその店に足が向くはずです。
つまり、マーチャンダイジングを導入することは『消費者の求める店舗の姿に近づくこと』を意味します。
自然と消費者の満足度が上がり、客の購買単価の上昇や固定客の獲得、集客の促進などが期待できるのです。
成功事例を後に生かしやすい
小規模の小売業の場合、長年の勘や引き継がれてきた伝統に基づいて店舗運営がされていることが多くあります。
もちろん、こうした方法にもメリットはありますが、伝統的なやり方が消費者のニーズや時代に合わなくなってきても気づくことができず、経営不振に陥ってしまう企業があることもまた事実です。
一方マーチャンダイジングは、エビデンスのあるマーケティング分析に基づいて最適な実践方法を導くものです。そのため、成功のノウハウを社員間で共有でき、後に生かしやすいという特徴があります。
ただし、消費者や時代のニーズ、店舗が置かれた環境などは、時代に合わせて変わっていきます。一度ノウハウを確立したとしても、繰り返しマーチャンダイジングを行い、常に情報をアップデートしていく必要があるでしょう。
マーチャンダイジングの活用事例
最後に、マーチャンダイジングの成功事例として『ドン・キホーテ』と『IKEA』の事例を紹介します。これらの事例には、マーチャンダイジングを正しく行い、ビジネスを成功に導くためのポイントが隠されているはずです。
ドン・キホーテ
今や小売業界の大手となった『ドン・キホーテ』 のビジネスモデルの成功例として頻繁に取り上げられるものに『圧縮陳列』があります。
『迷路』とも呼ばれ、一見無秩序に商品が山積みにされている印象を受ける店内ですが、実は入口側の棚は低くして奥まで見渡せるようになっているのです。
その視線の先に目玉商品を配置して客の動線を伸ばすことで『ついで買い』を狙うなど、マーチャンダイジングおける『適正な場所』が効果的に実践されています。
さらに格安で知られる同店ですが、ただ安いだけではなく『PC(プライスコントロール)』と呼ばれる『意外性のある安さ』を狙った価格付けを行っています。
これはまさに、マーチャンダイジングにおける『適正な価格』に該当するといえるでしょう。
IKEA
スウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニー『IKEA』も、その独特な陳列方法で知られる企業です。1943年に創業し、51年から家具のカタログ販売をスタートさせ、現在では世界中に出店しています。
郊外に出店することで広い店舗面積を確保した店舗では、客の動線が必然的に長くなり、平均1時間は店内を滞留しているといわれます。
さらに、従来のように家具の種類ごとに売り場を設けるのではなく、子ども部屋やリビングを再現した体験型ショールームの体裁でディスプレイしていることがポイントです。
こうした売り場作りを行うために、各ストア内に『ビジュアルマーチャンダイザー(VMD)』を配し、季節や地域性、トレンドを意識した空間作りを行っています。
構成/編集部