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長い人生において、誰でも一度は『恋煩い』になる可能性があります。もし恋煩いになってしまった場合、どのような状態になってしまうのでしょうか。恋煩いの原因や具体的な症状、なりやすい人の特徴について知っておきましょう。
古人も悩んだ「恋煩い」の意味と特徴
『恋煩い』は古くから人を悩ませてきました。1000年以上前の和歌にも、恋煩いに悩む歌人の心の内が描かれています。
恋煩いとは、どのようなものなのでしょうか。具体的な解説に入る前に、まずは概要から知っておきましょう。
恋に悩み、病気のような状態
恋煩いを辞書で調べると、以下のような意味として紹介されています。
「恋するあまりの悩みや気のふさぎ。恋のやまい。」
出典:goo国語辞書
好きな人のことで頭がいっぱいで、仕事や学業が手に付かなくなったり、食欲や睡眠欲が減退したりします。
それは、他人の目から見ると病気と区別がつかなくなるほどです。ですが病気とは異なり、恋煩いにかかることでかえって肌の艶が良くなるなど、見た目がきれいになることもあります。
原因は脳内物質とホルモンの影響
なぜ、病気にかかったような状態になってしまうのでしょうか。それは、脳内物質とホルモンの変化による影響です。
生物学的には、恋煩いはアドレナリン・ドーパミン・セロトニンという三つのホルモンのバランスが崩れることによって起こっています。
- アドレナリン:心拍数が向上する。手に汗をかき緊張状態となる。ドーパミンやエンドルフィンの分泌も活性化する
- ドーパミン:気分が高揚する。欲望が抑えきれなくなり、相手を独占したいという思いが強くなる
- セロトニン:他の脳内物質をコントロールし、精神の安定を保つ働きがある
恋煩いの状態は、アドレナリンとドーパミンが過剰に分泌され、セロトニンが低下しやすい状態といえます。そのため、常に緊張し気分は高揚しているにもかかわらず、セロトニン不足によって精神の抑制を失い、食欲不振や睡眠不足に陥ることがあるのです。
参考:厚生労働省e-ヘルスネット「ノルアドレナリン / ノルエピネフリン」
漢字「煩」にはどんな意味がある?
『恋煩い』の漢字の成り立ちについても知っておきましょう。
「恋」は、誰かを思う感情、思い焦がれることを指します。では「煩う」とは、どのような意味を持つ語なのでしょうか?
語源と使い方
『煩』という字の成り立ちを見てみましょう。煩の右側の「頁」とは、人の頭のことを指します。「頭」「顔」など、頭部に関わる漢字に使用されています。これが左側の「火」と組み合わさり、頭に火がつくほど熱くなるという状態から「悩ましい、ごたごたしていてうるさい」という意味を持つようになりました。
『煩わしい』とは、面倒で気が重い様子や、入り組んで複雑になっている状態のことを指します。「煩わしい仕事だ」などというように使います。
一方で『煩う』とは、肉体的・精神的に苦しむ様子のことを言います。「病気を患う」「思い煩う」などのような使い方をします。
「煩悩」は欲求を表す
『煩う』という漢字を使った言葉に、『煩悩』があります。煩悩とは、仏教用語で人が悟りを開く上で道を妨げる心のことで、現在では分かりやすく言えば「欲望」と解釈されています。
煩悩は108あるとされます。除夜の鐘は108回突くとされていますが、これは煩悩を払い、新鮮な気持ちで新年を迎えるために行われる行事だからです。
煩悩の中には『六大煩悩』と呼ばれる煩悩の種類があり、好きなものに対しての欲求や、人を妬んだり、やきもちを焼くことを指すものもあります。恋に通じるものがあると言えるでしょう。
恋患いとの違い
『恋煩い』と同音異義語で『恋患い』という言葉もあります。この二つの言葉に違いはあるのでしょうか。
「患う」とは、病気にかかるという意味で「患者」などの漢字でも使われます。漢字の意味に違いはありますが、辞書では「患う」と「煩う」は同じ意味として紹介されています。
どちらの漢字を使っても、日本語の用法としては問題はありません。
恋煩いのさまざまな表現方法
「恋煩い」は、日本では古くからある言葉で、別の言葉に置き換えたさまざまな表現も使われています。どのような表現があるのかを、いくつか紹介しましょう。
恋は盲目
『恋は盲目』とは、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』に出てくる台詞で、周囲が見えなくなるほど、恋に夢中にさせられてしまう様子のことを指しています。
英語では「Love is blind.」と表現されます。周囲だけでなく、相手の欠点や悪いところまで目に入らなくなってしまう、という意味も含まれます。
ちなみに、ドイツの科学者であるリヒテンベルクは、この格言を皮肉るかのように「恋は人を盲目にするが、結婚は視力を戻してくれる」という言葉を残しています。
恋は麻疹と同じで、誰でも一度はかかる
これは、イギリスの作家ジェローム・K・ジェロームの言葉です。現在でこそ麻疹は予防接種も行われ、死亡率も下がっていますが、かつては感染力も強く非常に危険な病気でした。
恋は麻疹と同様に、誰でもそうなってしまう可能性のある身近なものであることを表した言葉と言えます。
お医者様でも草津の湯でも、惚れた病は治りゃせぬ
出典は不明ですが、群馬県民謡の「草津節」の歌詞にもなるほど、有名な格言と言えるでしょう。
日本では古くから『湯治』という言葉があり、難病にかかったときは温泉で治療するという方法が知られていました。草津の湯は有馬・下呂と並ぶ日本三大名泉とされ、平民だけではなく、貴族や戦国武将など、多くの人が病を癒やすために訪れた名湯です。
「そんな草津の湯でも医者であっても、惚れた病(=恋)は治すことができない。恋とはそれほど厄介なものだ」ということを表した格言です。恋煩いへの対処の難しさは、昔の人もよく知っていた様子です。
誰もが一度は経験?本気の恋ほど悩まされる
『恋』というものは、誰もが経験します。特に本気であるほどに症状は重く、悩まされた経験がある人も多いのではないでしょうか。
恋に悩まされると普段の自分とは違う行動をとってしまい、不安に感じる人もいるでしょう。そこで、「恋をしてしまうことでとってしまうよくある行動」を紹介しますので、不安を解消する参考にしてみてください。
何も手につかないほど気になる人がいる
恋をしてしまうと、一日中その人のことを考えてしまうというのはよくあることです。
仕事や勉強をしていても、ふとしたときに好きな人のことが頭に浮かんでしまい、気になって離れません。「あの人は今頃何をしているだろうか」「あの人とこんな風に過ごしたい」などと考えてしまい、何も手につかなくなってしまいます。
そうした様子は他人から見て心配になるほどです。仕事や勉強をしていないことで人から不興を買っても、そのことすら気にならなくなってしまいます。
心ここにあらずで、ずっとぼーっとしているような状態に、他の人からは見えてしまうのです。
恋愛に一喜一憂してその日の気分に反映
何気ない出来事に一喜一憂するのは、人間ならよくあることです。占いの結果が良かった、探し物が見つかったなど良いことがあった結果、気分良く過ごせたという経験は誰しもが持ち合わせているでしょう。
そうした些細なことによる幸福感は長続きはしないものです。時間が経ったり、嫌なことがあればすぐに幸福感は沈んでしまいます。
しかし、恋煩いにかかっている人には、この法則が当てはまりません。好きな人に話しかけられる、挨拶を交わすといった些細なことでも一日中幸福感が続くこともあります。
その逆に、好きな人に冷たくされたり、無視されたりしたことで一日中気分が落ち込んでしまうこともあります。恋煩いの度合いが深いほどに、その人との関わりに一喜一憂し、その日の幸福度にも大きく影響を及ぼしてしまうのです。
連絡が来ていないか何度もチェックする
恋した相手からの連絡は、それが些細なことであってもつい嬉しくなってしまいます。その嬉しさを味わいたくて、LINEやメールを何度もチェックしてしまうというのは、恋に陥っている人ほどやってしまう行動です。
恋人同士の関係はもちろん、一方的に好きな相手からの連絡が来ていないか、暇さえあればチェックしてしまいます。よくよく考えれば、日中や相手の仕事中にそんなに頻繁に連絡が来るはずもありません。非効率だと本人も分かっていても、どうしようもないのです。
人によっては、ほんの数時間でも連絡が来ないことで不安になってしまったり、たまらずに自分から連絡をしたり、相手になぜ連絡をしてくれないのかを問い詰めてしまったりもします。
返事はまだかと一晩中SNSを監視してしまい、眠れないまま夜を過ごすということも珍しくはありません。