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友人や家族間だけではなく、ビジネスの世界でも年末には挨拶を交わす習慣があります。マナーを踏まえた挨拶ができるか否かが、来年の関係性を左右すると言っても過言ではありません。挨拶だと高を括らず、ポイントを踏まえて心を込めて行いましょう。
師走の挨拶とは
12月のオフィスでは年末の挨拶回りのスケジュールを組んだり、挨拶の文面を考えたり、社内が騒がしくなるものです。効率を重視しそうなビジネスの世界で、年末の挨拶が果たしている役割を押さえておきましょう。
師走は12月の和風月名
『師走(しわす)』とは、12月を表す和風月名です。これは、旧暦で使われていた月ごとの呼び名で、季節を感じさせる名前です。師走は『師である僧侶さえも東西を馳せる(走り回る)月』ということを表しているとされ、今も昔も年末は忙しい時期だったことを伺わせます。
現在も『水無月(みなづき)』というお菓子など、和風月名は師走以外にも日常のシーンで登場することもあるので、見聞きしたことがあるかもしれません。和風月名は旧暦の呼び名のため、新暦が採用されている現在の感覚とは1〜2カ月ほど季節感がずれますが、師走は今も昔も1年の終わりを表しています。
信頼関係を築く重要なやり取り
年末の挨拶は日本企業では慣習になっており、ビジネスの世界では押さえておきたいポイントです。1年お世話になった感謝とともに、「年を重ねても引き続きお取引を」という思いを伝える場であるため、「商談ではないからしなくても大丈夫」ということにはならないでしょう。
むしろ信頼関係を築く場という役割を考えると、今後ビジネスを成功させるための基盤づくりの貴重な機会であり、行わないことで印象が悪くなってしまう可能性もあります。信頼関係を強固にする機会を有意義に使いましょう。
手紙やメールで挨拶する場合
年末の挨拶は、手紙やメールなどで行うケースも多いです。いつ、どのような文面を送るのが適切なのか、タイミングや文を作るコツを把握しましょう。
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送るタイミング
送る相手の年内最終出勤日から逆算して、1週間〜3日前が最適なタイミングです。相手の具体的な勤務日程を把握していない場合は、12月20〜25日頃に送っておくのが無難でしょう。仕事納め直前までメールや電話などでやり取りがある相手の場合は、話の中で挨拶を済ませるなど、関係性を踏まえた対応が必要です。
年末が忙し過ぎて、万が一挨拶メールなどを送るタイミングを逃してしまった場合は、無理に31日などのギリギリのタイミングで送るよりは、年始の挨拶で挽回することをおすすめします。
文章の流れ
メールの文面は『師走の侯、お忙しい日々をお過ごしのことと存じます』など、時候の挨拶で始めるとスマートです。結びの言葉は『来年も、ご支援ご厚情を賜りますよう宜しくお願い申し上げます』など、新年に向けてのメッセージで締めると師走らしい文面になります。
また、年末年始の休業期間についての案内も忘れずに入れておきましょう。連絡が取れない期間を伝えておくことも、ビジネスにおける挨拶メールの大切な役割の一つです。
事務的になり過ぎないよう注意
一つの取引先に関係者が複数人いる場合でも、メールは一人ずつ分けて送りましょう。一斉送信はとても雑な印象を与えてしまい、文面で相手への感謝の気持ちを述べていたとしても台無しです。仮に全員ほぼ同じ文面になってしまったとしても、メール冒頭の宛名を『お取引先各位』と記載するのは避け、『○○様』と個人名で送りましょう。
文面の中では、相手との具体的なエピソードや送る相手に関わることなど、今年お世話になったり助けられたりした内容などに一言触れておくと、無味乾燥な定型文ではなく、相手に宛てた言葉として伝わりやすくなります。
対面して挨拶する場合
メールや電話での連絡も多いですが、物理的に時間を作れるのであれば対面での挨拶が最も丁寧です。ただし、年末は挨拶をする側だけではなく、受ける側も多忙なことが多いので、迷惑にならずスマートに挨拶をするためのポイントを押さえておきましょう。
ビジネスでは直接挨拶するケースも多い
年末の挨拶を行う手段としては『対面』『メール』『電話』などがありますが、ビジネスシーンでは対面の挨拶が多い傾向にあります。とはいえ、対面での挨拶を全ての取引先にするのは、物理的に時間が足りずに難しいでしょう。
気持ちの上では全ての場所に足を運びたくても、現実的には相手との関係性や取引額などの優先順位を付ける必要が出てきます。対面が難しくても、電話やメールなど可能な方法を探してみましょう。手段を問わず、挨拶をしない相手を作らないようにするのがポイントです。
すぐに使える定形表現
対面で挨拶ができる場合には、『本年もお世話になりありがとうございました。来年も変わらぬご指導のほどよろしくお願いいたします。どうぞ、良いお年をお迎えください』というニュアンスが伝わると良いでしょう。
語尾を濁さず、はっきりと伝えると好印象です。対面が難しい場合は、メールで対応しましょう。すぐに使える定型表現の例を以下に紹介します。自分らしく少しアレンジしたり、本文の部分に具体的なエピソードを入れたりすれば、フォーマットとして活用できるでしょう。
【例文】
師走の慌ただしい季節となりましたが、皆様にはいよいよご清栄のこととお喜び申し上げます。
日頃は格別のご厚情を賜り、心から感謝いたしております。
本文(中略)
どうぞ皆様お元気で、良いお正月をお迎えください。
来年も変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます。
短時間で済ませるのがマナー
年末の挨拶は、先方も忙しいため『短時間かつ丁寧に』済ませるのがマナーです。長くても10分程度で済ませましょう。人によって年末の時期は、挨拶を受けるだけで1日の大半が終わってしまうケースも出てきます。
直接的な商談をする場ではないので注意しましょう。せっかく挨拶に行っても、長話や長居をしてしまうとマイナスの印象となってしまいます。
また、相手との関係性や社風にもよりますが、一般的には服装にも注意が必要です。ラフな格好でもジャケットを羽織るなどの気遣いはもちろん、男性の場合はネクタイまで締めるのが好印象です。
手土産として会社のノベルティーや菓子折などを持っていく場合は、渡すものを床に置かないように注意しましょう。相手に渡すものなので失礼にあたります。
時期や相手によって内容を調整しよう
挨拶の言葉や文面はベースを作っておくと失敗がありませんが、全ての人に同じ対応をするのは避けましょう。親しい間柄の人に、目上の人に行うようなコミュニケーションをしてしまうと距離感を感じさせるだけではなく、テンプレート感を与えてしまいます。カスタマイズするポイントを押さえましょう。
12月の時候の挨拶は?ビジネスとプライベートでも使い分けられる上旬、中旬、下旬、時期別の挨拶
挨拶の時期に合った季語を用いる
年末の挨拶なので、『師走を迎え』『年の暮れ』などの季節感が伝わる言葉を入れるとスマートです。メールで使える具体的な文例を紹介します。
- (上旬)師走を迎え、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお喜び申し上げます
- (下旬)年の暮れ、ご多忙の中にも活気あふれる日々をお過ごしのことと存じます
季語には『冬晴』『冬日向』などの美しい表現もありますが、普段使い慣れない言葉をあえて使う必要はありません。相手にも伝わりづらくなってしまう場合もあるでしょう。程良く季節感が伝わる表現を入れることができれば合格です。
気候や相手によって使い分けよう
挨拶をする相手との距離感によって、表現を使い分けることも大切です。目上の人に使うようなかしこまった表現を、普段からやり取りの多い同年代の担当者に使うとぎこちない文面になってしまうので、トーンを切り替えましょう。
その他にも、相手のオフィスがある地域の気候をさりげなく文面に折り込むことで、相手に気を使っている雰囲気が伝わりますので工夫してみてください。
【かしこまったトーン】
- 年も押し迫り、何かと忙しい頃となりました
- 寒さも日ごとに増します今日この頃
- 師走の候/初氷の候など『候(こう)』を使った表現
【親しいトーン】
- 師走を迎え、何かと慌ただしい時期ですね
- 早いもので、今年も暮れようとしています
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構成/編集部