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「部下のいない管理職」とはいったい何者か?

2020.11.18

■連載/あるあるビジネス処方箋

 今回は、「部下のいない管理職」をテーマとしたい。「部長」や「課長」と名乗るが、部下がいない。だが、一般職(非管理職)の前では威張る。一方、同じ部署には部下を持つ部長や課長がいる。私は20代(1990年代)だった頃、「なぜ、こんなに多くの管理職がいるのか…」「誰が偉くて、誰の指示に従えばいいのか…」と憤りに近い疑問とやるせなさを感じたものだ。

 半年前、政府の緊急事態宣言を受け、在宅勤務に取り組む企業が増えた。Zoomやスカイプを使ったオンライン会議では、さしたる仕事がないのに、高い賃金を受け取りつつ、意見や分析が言えない「部下のいない管理職」が画面で炙り出された。オンラインのツールすらマトモに扱えない。20~30代の社員は画面に映るオロオロのその姿を見て、直視できない思いになったのではないか。

「部下のいない管理職」とは、一体何者なのか。今回と次回でその謎に迫りたい。底流には、多くの企業がここ数十年ぶつかる根深い問題が横たわる。そこにメスを入れない限り、意識の高い会社員は慢性的に不満を持つ。実は働き方改革の本丸はここにあるのだが、前政権は踏み込めなかった。それほどに大きな問題なのだ。

 私が取材を試みたのは人事コンサルタントであり、明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科の客員教授である林明文氏。デロイトトーマツコンサルティングで人事コンサルタントとなり、その後、大手再就職支援会社の社長に就任。2002年からは、人事コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役を務め、現在は会長。著書に『経営力を鍛える人事のデータ分析30』(中央経済社)などがある。

Q.「部下のいない管理職」は、どのような会社にいるのでしょうか。そもそも、どういう扱いを受けている人たちですか。

様々な業界で見られます。特に目立つのは、長い歴史があり、市場や環境の変化が激しくはない業界の大企業です。ここは、管理職者のポスト(本部長、部長、課長など)に比べて管理職者数が多い傾向が前々からあるのです。

私が人事コンサルタントとしてこの30数年で見てきたケースでは、100人前後の管理職数が適切と思える企業で、200~300人の場合がありました。明らかに多すぎますから、総額人件費が膨れ上がっているはずです。この管理職の中に「含み損」とも言える人材が多数いる可能性があります。

通常、管理職には部下がいるものです。例えば、部長の下に課長、その下に一般職(非管理職)が数人から10人前後はいます。ところが、一部の大企業では部下のいない管理職がいるのです。部長、副部長、部長代理、次長、課長と名乗るのですが、部下がおらず、管理や育成もしていません。いわゆる、非ラインの管理職です。

この管理職は部下のいる管理職、つまり、ラインの管理職とは異なる立場です。しかし、多くの企業では共に「管理職」として扱い、十把ひとからげにしています。例えば、部長代理として部長や課長を補佐する立場なのですが、実際は現場の人として仕事をしているのが実態に近い。

非ラインの管理職は、課長の1歩前の等級の一般職と同じ仕事をしている可能性が高いと思いますが、処遇は管理職として扱われます。基本的には管理職としての基本給や賞与、手当を受けています。

部下のいる管理職とはそれらの額は異なるのでしょうが、一般職の最も上の等級の社員(課長の1歩前の等級の一般職)よりははるかに高い額になっていると思います。20∼30代の一般職からすると、「なぜ、部下がいなくて、自分たちと同じ仕事をしていて、年収で300~600万円も高いの?」と疑問に思うのかもしれませんね。

非ラインの管理職はある意味で、「高級スタッフ」とも言えるでしょう。プレイング・マネージャーではありません。部下を持つわけではないのですから、部下育成などマネジメントに直接関わることはほとんどしません。マネージャーではないのです。マネジメントは、あくまでラインの管理職がすべきものです。

Q 専門職ではないのでしょうか。なんとなく、それを装う人もいますね。

専門職とは言えません。専門職は特定の分野の仕事を長年してきて、実績や技能を兼ね備えています。非ラインの管理職は専門性を身に付けていないのです。

本人が意識していたのかどうかはわかりかねますが、会社としては社内外に、この人たちにも部下がいるといった雰囲気を醸し出してきたのでしょう。実は、同じ部署にいる一般職の部下は純然たる部下ではないのですが…。その意味では、「なんちゃってポスト」と言えるのかもしれません。

今後、日本の経済が少子化の影響もあり、シュリンクしていくので、経営層や人事部から狙われるでしょう。間違いなく…。「あれほどに高い給料をもらい、あのレベルの仕事ではいらない」が、経営層や人事部のコンセンスになるのは確実。はるか前からその認識はあったのですが、今の大企業にそんな余裕はもうないのです。

Q とはいえ、日本の場合、降格や解雇をするのは法律面からすると難しいですね。せめて、降格にはするべきかと思いますが…。

確かにいったん管理職にすると、例えば課長を一般職に降格するのは法律の面でも、職能資格制度の運用面からも難しい。解雇(懲戒、整理、普通など)にするのも法律面から見ると、容易ではありません。従って、今後は転籍で賃金を下げたり、人事評価を低く扱い、賞与などを下げたりはするでしょう。リストラも、数年以内に本格化するはずです。

経営環境が厳しくなると、社内の人材への投資も優秀な人へ一層に傾斜するものです。つまり、ラインの管理職で近い将来有望な人(役員候補など)には今後、賃金をさらに上げる可能性があります。一方で、部下のいない管理職の扱いを大きく変えるでしょう。10数年以内に、絶滅危惧種のような扱いになるのではないでしょうか。「あの時代には、部下のいない管理職が多数いたね」といったように。

部下のいる管理職は第1次選抜をクリアし、部下のいない管理職はそれに漏れた人。40代半ば以降になっても管理職になれない人は、リストラの際には真っ先に狙われるタイプでしょう。

部下のいる管理職で有望な人とそうでない人、あるいは部下のいない管理職、いつまでも管理職になれない人…といくつかに分けられますが、今後、部下のいる管理職で有望な人は相当に高い人事評価を受けるようにするはずです。経営の中核を担う管理職に、そしていずれは役員になってほしいからです。そうしないと、転職されては困る人材とも言えるのでしょうね。

部下のいない管理職や管理職になれない人は「含み損」の人材の可能性があり、賃金が働きの中身に比べて割高。今後は、その企業では不要なのです。

Q.なぜ、このような管理職が生まれるのでしょうか。歯止めをかけることはできないのでしょうか。

部下のいない管理職が生まれる理由は、いくつがあります。1つは、多くの企業が採用している職能資格制度の影響が考えられます。この制度では例えば、新卒(大卒)で入れば一番下の1等級からスタートし、毎期の人事評価を受けつつ、一定のペースで上の等級に上がっていきます。これが、年功序列と言われる人事のあり方を形作っていくのです。

一般職で最も上の等級が6で、その等級に5年程いる社員がいるとします。すると、管理職(この場合は課長)にするのは能力面からして無理があると評価されていても、「いつまでも6の等級に置いておくわけにはいかない」と7の等級に、つまり、管理職にしてしまう場合が依然、多いのです。

経営層が伝統的に全正社員の7割から8割の心を満足させないと、経営が成り立たないと思っているのではないかと私は見ています。例えば、1つの等級でずっととどめて、非管理職のままにするのはよくないと思うのではないでしょうか。あるいは長年の慣例になっていたり、経営層に何らかの温情が働くからなのかもしれませんね。いずれにしろ、昇格の基準が曖昧なところから生じる問題です。

Q 私が取材をすると、「管理職ができるかどうかわからないが、とりあえず、7の等級にしてその後、部下の育成などマネジメントができる否かを判断したい」と話す人事の責任者がいます。

この認識には、大きな誤りがあります。本来は、マネジメントができる人を昇格させるのが、明確な昇格基準です。管理職にした後で、それを判断しようとすること自体が問題です。

つまりは、管理職を作り過ぎているのです。その意味で供給過剰と言えます。総額人件費を厳格に管理していないのです。昇格させる前から部下を持つことができないとわかっていながら、ポストに就くことができないと判明していながら、なぜ昇格させるのか…。ここが本来は、大きな問題なのです。

実はもう1つの大きな理由があるようですが、次回にて紹介します。

文/吉田典史

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