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グループの稼ぎ頭だったのになぜ?NTTによる完全子会社への流れを生んだドコモの弱み

2020.10.21

【第二回】NTTによる完全子会社への流れを生んだドコモの弱み

前回、NTT持株とNTTドコモの歩んできた道を振り返ったが、今回は分割を経て、NTTグループ内の稼ぎ頭に成長したNTTドコモがなぜNTTグループ内で存在感を示せなかったのか、それが今回の合併にどうつながったのかを読み解いていく。

第一回はコチラ

NTT各社の独立や分割からの二十数年

 1990年にNTTから独立した「NTTドコモ」、1997年の分割によって生まれた「NTT東日本」と「NTT西日本」、「NTTコミュニケーションズ」は、その後二十数年間、それぞれに違う分野で、他社や他グループと戦いながら、少なからずお互いの関係性にも影響を与えていく。

 まず、NTTドコモは多くの人が知るように、1999年の「iモード」によって、大きな成功を収める。2000年以降は携帯電話サービスの拡大と共に、NTTグループに欠かせない存在として成長していく。ちなみに、東証一部に公開している株式は、2020年3月31日時点で、約64%をNTT持株が株式を保有しており、残りの40%弱を外国法人や金融機関、個人、NTT以外の法人などで分け合っている。個人が保有する株は約5.8%に過ぎない。

 営業収益については業界内の激しい競争と値下げ圧力の影響もあり、ここ数年は漸減傾向にあるものの、それでもNTT持株(NTTグループ全体)で見ると、2019年度は営業収益で約30%、営業利益で約50%超を稼ぎ出しており、NTTグループを支える稼ぎ頭となっている。

 これに対し、分割した3社は市場環境の変化により、厳しい戦いを強いられてきた。NTT東西は固定電話やADSL、光回線などのサービスを提供してきたが、かつてほぼ独占と言われた固定電話(加入電話とISDN)は、2001年の約6000万を超える契約数をピークに減少を続けており、2020年3月には1/3以下の約1700万契約まで減少している。

 固定電話と入れ替わる形で、2000年代はじめにはインターネットへの常時接続が可能なADSLサービスが普及したが、大きくシェアを獲得したのは、強力な営業力を活かしたソフトバンクの「Yahoo!BB」だった。

 続く光回線では、全国にエリアを展開するライバルが不在のため、圧倒的なシェアを得るはずだったが、期待したほどの急速な伸びを記録できなかった。その後、2015年に他のサービス提供事業者に光回線を卸提供する「光コラボレーションモデル」によって、普及に弾みがつき、現在は2000万契約を超えるところまで普及している。なかでもNTTドコモが展開する「ドコモ光」は、NTTドコモの契約とセットで利用できることもあり、サービス開始から5年で、光コラボレーションモデルの半数近くを占める約666万契約を獲得している。裏を返せば、NTTドコモの販売力や営業力がNTT東西の光回線普及を後押しした形とも言えるわけだ。

 一方、NTTコミュニケーションズは長距離通話と国際通信を担当する会社としてスタートしたが、19997年に分割された当時、『地元志向』が強い社員が集まったNTT東西に対し、地域を問わず、優秀な人材が集合したのがNTTコミュニケーションズだったと言われていた。そのため、同じNTTグループでありながら、企業カラーが違ったという。また、分割当時のNTTコミュニケーションズの主戦場のひとつは、国内の県外通話、つまり、長距離電話や国際電話だったが、1985年の通信の自由化によって設立された「第二電電(DDI)」や「日本高速通信」、「日本テレコム」など、NCC各社との競争が激しかったうえ、2000年からスタートしたマイライン(発信時に事業者識別番号を付加しなくても利用者が使いたい通信事業者に接続するサービス)の獲得競争もあり、収益は徐々に低下していく。音声利用に代わり、収益の柱になってきたのがデータネットワークやソリューション分野で、2019年度の営業収益を見ると、データネットワークが約40%、ソリューション分野が約20%超を占めており、法人向けビジネスが主役となりつつある。

NTTグループ内で存在感を示せなかったNTTドコモ

 電電公社から生まれ、NTT持株をトップとするNTTグループは、現在、979社の連結子会社があり、約30万人の従業員が働く巨大グループとなっている。

 これらNTTグループ各社の内、営業利益では前述のように、NTTドコモが約50%超を稼ぎ出しているが、NTTグループから『放り出された』存在ということもあってか、グループ内での存在感は大きくない。たとえば、一般的なグループ企業であれば、稼ぎ頭の企業が発言権を持ちそうなものだが、やはり、そこは親子関係があるためか、NTT持株が基本的にNTTドコモに対し、さまざまな指示を出す構造で、NTTドコモの役員人事も基本的にはNTT持株がコントロールしてきた。

 なかでも社長人事については、過去にちょっとした騒動があった。初代社長の大星公二氏に続き、二代目には立川敬二氏が就任したが、当初は三代目として、当時の副社長だった津田志郞氏が就任することが決まり、新聞に辞令も掲載されていた。ところが、NTT持株がこの人事に対して、難色を示し、急転直下、津田氏の社長就任は撤回されてしまった。その理由は明らかにされていないが、津田氏らが将来的にNTTグループからの独立を目指すことを検討していたため、NTTグループが警戒して、撤回されたという説が有力視されている。ちなみに、津田氏は騒動後、ドコモエンジニアリングの代表取締役社長を2カ月、務めた後、2008年8月にライバル会社であるボーダフォンの日本法人(現在のソフトバンク)のCEOに就任されることが発表され、業界内を大きく驚かせた。

 津田氏の代わりに三代目の代表取締役に就任した中村維夫氏、四代目となった山田隆持氏は、いずれもNTT持株からの人事で、2012年にようやくNTTドコモ生え抜きの社長として、加藤薰氏が就任する。現在の代表取締役社長の吉澤和弘氏もNTTドコモ育ちで、加藤氏と共に、初期の携帯電話の開発に携わっていたことで知られる。こうした社長人事以外に、役員人事でもNTT持株の意向が強く反映され、数多くの役員がNTT持株やNTT東西から送り込まれ、かつての大星氏や立川氏が社長を務めていた時代の自由な社風が徐々に失われていったとも言われている。

NTTドコモ 吉澤社長

 役員人事を含め、NTT持株によるNTTドコモへの干渉が強くなってきた背景には、NTTドコモがNTT持株の意向に従わなかったことが関係しているという指摘が多い。たとえば、2000年のアメリカのAT&Tワイヤレス、2009年のインドのタタなど、海外への投資には何度も失敗しているが、これらはNTT持株が止めようとしたにもかかわらず、NTTドコモが強行し、失敗したと言われている。料金施策などでもライバルとの競争に勝つため、収益を低下させたり、分離プラン導入で他社に遅れを取ったことなどもNTT持株の干渉、ひいては今回の完全子会社化への流れを生み出したとも指摘されている。

明日公開の第三回では、なぜ今、合併するのか? その背景にあるグループ内の課題、携帯料金の値下げ議論の問題点を解説していく。

文/法林岳之
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

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