日本の伝統工芸のノウハウを活かした機構設計
ThinkPad X1 Foldが多彩な変化を実現できた背景には、ThinkPadシリーズなどで数々の名機を生み出してきた日本の大和研究所が約5年の歳月をかけ、様々な日本ならではの技術を駆使しながら、エンジニアたちが工夫を積み重ねてきたことが挙げられる。斬新なスタイルでありながら、ThinkPadシリーズとしての堅牢性や信頼性にも強いこだわりを持った製品として開発されている。
たとえば、ディスプレイを折り曲げると、どうしてもシワができてしまうが、何とか一枚の美しいディスプレイとして、使ってもらいたいということで、様々な素材を試し、有機ELディスプレイの耐久性やサポート材料の素材などを工夫。最終的にピッチ系カーボンの採用へとたどり着いた。薄くて強く、なめらかで均一なうえ、弾力性もある素材だが、加工にも独自の工夫を加えているという。
背面のヒンジ部分には三軸織物をヒントに作られたパーツが装着される
背面のヒンジ部分のパーツ。三軸織物をヒントに作られた正六角形のパーツと樹脂フレームを組み合わせている
バッテリーや基板などは机の上に置いた時の上下のバランスなども考慮され、レイアウトされている
本体を閉じた時、どのようにボディを守るかも大きな課題となった。その課題に対するひとつの答えが背面のヒンジ部分を覆うパーツで、このパーツの形成には日本の三軸織物の技術がヒントとなっている。通常、竹製のカゴなどに使われる三軸織物の織り方を応用し、強いだけでなく、柔軟性に優れ、内部をしっかりと守れる構造に仕上げている。
この三軸織物の技術を応用したパーツは、日本でしか作れないそうだ。ちなみに、本体の折りたたみ回数は最低3万回の開閉に耐えられるように設計されているが、余裕を持たせているため、実用ではさらに多くの回数の開閉に耐えられるとしている。
また、ThinkPad X1 Foldは一般的なパソコンと違い、手に抱えて利用することがあるため、熱処理の工夫が求められた。熱を抑える一方、パフォーマンスも必要とされることから、寄木細工の構造をヒントに、ヒートパイプとヒートシンクを組み合わせ、必要以上に熱くならないように、効率の良い熱処理を実現している。
こうした様々な工夫により、ThinkPad X1 Foldは人がパソコンに合わせて使うのではなく、パソコンを人に合わせて使うスタイルを実現することを目指して開発されたという。テレワークやリモートワークなど、ユーザーがパソコンを利用するシーンが多様になっている今だからこそ、注目できるスタイルだといえるだろう。
Wi-Fiモデルだけでなく、5Gモデルも発売予定
今回発表されたThinkPad X1 FoldはWi-Fiモデルで、10月13日に発売される。価格は36万3000円(税抜、レノボオンラインショップ価格)からとなっている。5Gモデルもラインアップされているが、こちらの詳細は後日、発表される予定だ。
本体を開いた状態。パッケージには本体のほかに、Lenovo Foldミニキーボード、Lenovo Mod Penが同梱される
主な仕様
初期導入済OS:Windows 10 64bit
プロセッサー:Intel Core Processor with Intel Hybrid Technology
最大メモリー容量:8GBオンボード
ストレージ:512GB SSD
ビデオ・チップ:CPU内蔵
ディスプレイ:折りたたみ式13.3型 QXGA OLED (有機 EL ディスプレイ) (2048×1536)、マルチタッチ対応(10点)
インターフェース:USB Type-C 3.1 Gen 1×2(本体)、micro USB×1(ミニキーボード充電用)
ワイヤレスLAN:インテル Wi-Fi 6 AX200 a/b/g/n/ac/ax
Bluetooth:Bluetooth v5.0
ワイヤレスWAN:5G(CTOで選択可能)
カメラ」IRカメラ 500万画素
ペン:Lenovo Mod Pen
バッテリー駆動時間:約11.7時間(JEITA2.0による測定値)
本体寸法(幅×奥行き×高さ):約299.4×236×11.5mm(ランドスケープモード時)、約158.2×236×27.8mm(折りたたみ時)
本体質量:約973g〜(本体)、約173g〜(キーボード)
発売日:2020年10月13日(Wi-Fiモデルのみ)
価格:36万3000円(税抜、レノボオンラインショップ価格)
取材・文/法林岳之
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。