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〝使えない部下〟がいると感じたらそれは自分のせい!?寄り添うことで部下を成長させる「マネジメント2.0」

2020.09.09

ゆとり世代以降の部下との付き合い方に悩む、マネジャー層が増えている。「使えない部下が増えた」「若手の人材の質が落ちた」と感じている人も多い。

だがそれは、マネジャーの側の問題かもしれない。

「部下が使えないのではなく、あなたが使えない部下を生み出している」と唱えるのは、ジャパンブルーコンサルティング(株)代表取締役の成田直人さんだ。

成田さんは、著書『「使えない部下」はいない』(ポプラ社)のなかで、従来のマネジメント手法に頼り切ったマネジャーたちに活を入れる。「気合と根性に頼るマネジメントが正しいと信じている」、「プライベートよりも仕事のほうが重要」…こうしたバブル世代とその少し下の世代が洗礼を受けた考え方・やり方は、今の若手には通用しないという。それどころか、そうした古い手法が、部下をダメにしているとも。

では、どうすればイマドキの若手部下をうまく育成していけるのだろうか。成田さんは本書の中で、その秘訣を「マネジメント2.0」と名付けているが、そのいくつかを紹介してみよう。

仕事中にスマホをいじる部下はどうする?

オフィスワークや会議の最中におもむろにスマホを取り出し、熱心に何かをしている部下。

見咎めて、それをやめさせるのが上司としての務め…と思ったら、それは違うという。成田さんは、自分が講師を務める企業研修中でも、受講生がスマホを操作することについて「なんとも思っていない」と打ち明ける。

その理由は、「リアルタイムで返信をしなければいけない事案がこれまで以上に増えたから」。マネジャーの話を一心に聞くことが美徳の時代は、過ぎ去りつつあることに気づくべきだとする。

業務中のスマホに限らない。「部下を伸ばすためには、過去の常識をいったん手放して今の若手の常識の上でコミュニケーションを重ねないといけません」と成田さん。そして、スマホをいじっている部下には、「何を調べているの?」と聞いてみることから始めてはと、アドバイスしている。また、「若者のツールはわからない」と切り捨てるのではなく、自ら率先して活用することもすすめられている。これによって、部下のやる気向上と人間関係の構築に資することが期待できるからだ。

マネジャーとして過去の常識に縛られていないだろうか?

「これできる?」と聞いて表情が曇ったら

「強制から選択」―成田さんによれば、これが、今のマネジメントのありかたの変化だという。

旧来のマネジメントは、問答無用の強制的な指示・命令が当たり前であった。そこに、部下が何かを選択するという余地はなかった。

マネジメント2.0では、これが変わってくる。「選択肢を与える『個人としての尊重』」がカギとなるという。これで部下には、「尊重されている」「大切にされている」という感情が芽生える。

言い方としては「これできる?」「これやってもらえる?」。結局、指示には違いないのだが、これだけでも部下のモチベーションに差が出る。「はい、できます!」という返事があればそれでよし。

そんな返事の代わりに表情が曇ったら、ヒアリングをして掘り下げる必要が出てくる。つまり、本人は何に不安を感じているか、どのようなスキル・経験が足りないと思っているのかを聞いてみる。そして、返ってきた答えに対し、ピンポイントでアドバイスをすればOK。

成田さんは、「いつも命令しているようなことを、すべて選択肢を与える投げかけ方で聞いてみてください」と述べる。やがて、関係性が改善されるとともに、部下の主体性も生まれてくるという。

「強制から選択」で部下との関係も向上する

部下へのクレームはマネジャーに問題が!?

成田さんが、クライアントのマネジャー格の人からよく受ける相談の1つに「部下のクレームに対する意識が低い」というものがある。

マネジャーの多くは、部下個人のミスが原因だと言う。だから、大きなクレームに発展する前に相談してくれれば、クレームの火種は未然に消し止められたはずだと主張する。

これに対し成田さんは、「クレームの原因はマネジャーにあります」と指摘。なぜなら、部下はクレームの火種について相談したいと思っても、「忙しい」「いちいち構っていられない」という理由で、上司たるマネジャーからのフォローアップが受けられないからだ。

やがて、部下はマネジャーに相談することを諦めてしまい、いつか大きなクレームが降りかかってくることになる。

その対策はただ1つ―「日頃から部下と密にコミュニケーションをとり、良い人間関係を構築」すること。ありがちな「普段から話はしています」というレベルではダメで、コミュニケーションの量だけでなく質も重要。このポイントを押さえておくことで、クレームはゼロへ近づいていくと成田さんは力説する。

取引先のクレームを予防する関係ができているか?

本書を読むと、異なる世代で価値観も違う両者のコミュニケーションが、いかに大事かが、よく実感できる。「今の若者は理解できない」と突き放すのでなく、きちっと寄り添うことで、業績にも良い影響を与える。そのガイドブックとして、本書はとても役立つはずだ。

成田直人さん プロフィール
ジャパンブルーコンサルティング株式会社代表取締役。19歳でABCマートアルバイト個人売上日本一を獲得、22歳でPCデポにて7か月で個人売上1億円を達成、2007年に小売・サービス・飲食業専門のジャパンブルーコンサルティングを創業。年間200回・1万名以上をトレーニングし、受講生も累計10万名突破。クライアントの多くが昨年度対比120%を突破し、3年で売上3倍・利益25倍になるクライアントも出てくるなど、現場型研修・コンサルティングには定評がある。現在は、現場職を指揮監督するリーダー・マネジャーに対する研修も行っており、東証一部上場企業などを含む、250社2万人以上に研修を行う。

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)

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