翌日、DOG DEPT GARDEN&RESTRANTで朝食を済ませ、帰路用に用意された、2020年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー トップ3ファイナリストにマツダ3とともに選ばれ、また2020年1-6月期にマツダで最も売れた車種でもある、往路とは違う、CX-30に乗り込む。ボディカラーはすべてのマツダ車にもっとも似合うと思える、特別塗装色のソウルレッドクリスタルメタリックである。
グレードは最上級のマツダ渾身の次世代パワーユニット、スカイアクティブX搭載モデル、CX-30 X L Package 4WDだ。
往路の20S L Package FFの156ps、20.3kg-m、WLTCモード燃費15.4km/Lに対して、同じ2Lの排気量にして180ps、22.8kg-m、4WDでもWLTCモード燃費15.8km/Lという格上のスペックを備える。ただし、燃料はハイオクが基本で(20Sはレギュラー、XDは軽油)、価格はガソリンエンジンの20S L Package の279万4000円、クリーンディーゼルエンジン搭載のXD L Packageの306万9000円に対して、347万7000円(いずれもFF 6ATの価格)と、それぞれ約68万円、約40万円高となる。
スカイアクティブXとは、世界初の革新的な燃料制御技術を採用した、クリーンディーゼルエンジンとガソリンエンジンのメリットを兼ね備える、マイルドハイブリッド技術も搭載したマツダが誇る新世代エンジンの総称。しかも、復路で試乗するCX-30の駆動方式は先進のi-ACTIV 4WD。雨や雪などによる滑りやすい路面ではもちろん、ドライ路面でも4輪に常時、適切なトルクを配分し、スムーズで安定した走行が可能になる。加えて、オフロード・トラクション・アシストを備えることで、最低地上高175mm(全車)を生かした悪路の走破性と、意のままの走りをより実現しやすい仕様となる。冬、白銀の世界になった軽井沢を訪れるのにもふさわしい、今回、スタッフカーとして用意してもらったCX-5とともに最強のドッグフレンドリーカーと言っていいのがこのCX-30 4WDである。
進化の途中にあるスカイアクティブXのパワーユニットは、低中速域でディーゼルエンジンのような振動がわずかに残るものの、とにもかくにも、パワーフィールの気持ち良さ、制御のち密さという点で、さすがマツダの新世代エンジンと言うしかない実力の持ち主だった。
純ガソリンエンジンの20Sとの違いは、特に軽井沢の山道の登坂路で認められた。20S L Packageの6ATがキックダウンするような場面でも、スカイアクティブX搭載のCX-30 X L Packageはゆとりあるパワー、豊潤なフラットトルク、独自のシフトパターン、出力の出し方(高度な制御)によって、エンジンが高回転まで一段とスムーズに回るとともに、登坂路でキックダウン(ギヤを落とす)する機会が減少し、車内でどこかにつかまれない犬も、前後Gの少ない、さらに快適な乗車感覚が可能になったようだ。何しろ、クネクネした登坂の山道でも、後席にいるジャックラッセルのララは、窓の外の軽井沢の景色を堪能する余裕があり、リラックスしたまま快適なドライブを楽しんでいたぐらいなのである。ララの首に付けてある、迷子札を兼ねたネックレスが、カーブでもほとんど左右に揺れていない事実が、G-ベクタリングコントロール プラスがもたらす安定感を物語る。
個人的には、現時点でCX-30のベストグレードは、価格と燃費性能、走行性能のバランスに優れる、クリーンディーゼルエンジン搭載のスカイアクティブDモデルと思えるのだが、開発責任者の佐賀さんが正直におっしゃるとおり、スカイアクティブXのこれからのさらなる進化、熟成にも注目したいところである。
気が付けば、軽井沢の緑に映えた、ソウルレッドクリスタルメタリックのCX-30 X L Packageは、横浜のマツダR&Dセンターに到着。片道およそ210キロの行程を、ストレスフリーで行えたのは、CX-30の走行性能、快適性、静粛性に加え、SOSコール、マツダコネクトによる安心感、そしてマツダ最新の先進運転支援機能をフル搭載しているところがポイントだ。
なにしろ、先進運転支援機能として、運転席、助手席、運転席ニーエアバッグ、カーテン&サイドエアバッグのほか、衝突軽減自動ブレーキのスマートブレーキサポート、前後AT誤発進抑制装置(ブレーキ制御付き)、後退時&後退時左右接近物ブレーキサポート、アダプティブLEDヘッドライト、ハイビームコントロールシステム、360度ビューモニター、前側方接近車両検知、ブラインドスポットモニタリング、車線逸脱警報システム、レーンキープアシストシステム、交通標識認識システム、ACC(アダプティブクルーズコントロール)のマツダレーダークルーズコントロールなどの機能が満載されているからである。
軽井沢を往復した、愛犬同伴のCX-30価値体験取材会で得られたもの、それはCX-30のデザイン、走行性能、安全性能、先進運転支援機能の充実度、都会からリゾート地、アウトドアなどオールマイティな使い勝手の良さ、日本の道にジャストなサイズ感、扱いやすさに加え、ステーションワゴンとクロスオーバーSUVの中間的パッケージがもたらす、愛犬とのドライブ旅行を一段と快適、安心なものにしてくれる、ドッグフレンドリー度極まる商品性、価値だったように思える。特にG-ベクタリングコントロールと愛犬乗車の相性の良さは、誰がなんと言おうと、抜群であると断言したい。
取材協力/マツダ https://www.mazda.co.jp/cars/cx-30/
犬の衣装協力/DOG DEPT
写真/雪岡直樹
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。