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日本生命がオープンイノベーション拠点「Nippon Life X」を60以上の企業が集うFINOLABに移転させた理由

2020.09.03

2020年4月1日に開設された、日本生命のオープンイノベーション拠点「Nippon Life X」。この東京オフィスを、日本生命丸の内ビルから、FinTechのイノベーション拠点である「FINOLAB」に移転した。この狙いについて、イノベーション開発室の担当課長に聞いた。

東京・大手町に位置するFinTechに取り組む企業のためのイノベーション拠点「FINOLAB」の新オフィス。

そもそも「Nippon Life X」とは

日本生命のイノベーションへの取り組みは2016年に遡る。調査の目的でアメリカ・シリコンバレーに駐在員を派遣。翌年には増員し、約1000社の情報収集から、約40社と個別面談するなど本格始動した。2018年にはイノベーション開発室が創設。100億円の開発投資枠が設定されたことで、ベンチャーキャピタルファンドへの投資がスタート。

2019年にはイギリス・ロンドンと中国・北京にも拡大し、イノベーション開発拠点が日本を含めて4か所に。開発投資枠も300億円に拡大され、国内ではベンチャー企業と共同研究を行なうほか、シリコンバレーでは営業職員向けのスマホアプリに適応できるような、AIアバターの開発会社にも投資。事業化への検討も本格化し始めた。

そんな背景から、2020年4月1日にオープンイノベーション拠点「Nippon Life X」を開設。担当課長の遠藤和宏氏はこの組織について、「生命保険領域にこだわらず、心と体の健康、就労、資産形成等を主要テーマと定め、新規事業創設のためのイノベーション拠点」だと語る。

総合企画部 イノベーション開発室 担当課長 遠藤和宏氏。

「東京とシリコンバレーだけでなく、ロンドンと北京にも拠点があるところが強み。北京はメガIT企業であるテンセントやアリババがいろいろなプラットフォームを提供しています。一方、ロンドンは銀行や保険などの金融機関がイノベーション周りのエコシステムの中心にあるということで、各地域で主力となるエコシステムが異なります。それぞれの動向をしっかり把握する必要があるので、グローバルの4極体制にしています」と遠藤氏。

「FINOLAB」へのオフィス移転の狙い

生命保険業務に関連する新しいサービスを提供できないかということで、イノベーション開発に軸足を向けた日本生命。スタートアップ企業との連携をより加速させたいと、「Nippon Life X」の東京オフィスは2020年8月3日、日本生命丸の内ビルから、日本の金融の中心である大手町に位置する「FINOLAB」に移転した。

「FINOLAB」はFinTech(Financial Technology)のイノベーション拠点。スタートアップ企業だけでなく、金融に関わる大手法人も加え、60以上の企業が集う。自社の新オフィスはもちろん、「FINOLAB」の共有ワーキングスペースを利用することで、社外の様々な事業会社とのコミュニケーションを深め、新事業創出を加速させたいというのが狙いだ。

必要なオフィスサービスが備わった「FINOLAB」の共有コワーキングスペース。

「FINOLAB」にはランチや休憩に活用できるキッチンスペースも備える。

会議室やイベントスペースなどのほか、和室空間も用意。

イノベーション開発の今後の取り組み

日本生命では今年、社内起業プロジェクトを創設。約2万人の社員に向けて、新規事業の種となるアイデアを募集。様々な職種、年代から集まった423件の案から20件に絞り込んだ。このプロジェクトが目指す新機軸は、子育て・教育、ヘルスケア、働き方・ダイバーシティ、金融・経済の4つ。

「様々な業務をロボットに置き換えるというテクノロジーではなく、いろんな人の課題解決に取り組む、日本生命の本業との親和性が高い、人中心のイノベーションが大きな軸になっています。選出された20件を9月半ばの中間選考会で半数程度に絞り、12月末の最終選考会で数個に絞り込みます。そして来年度中に新規事業の事業化を目指したいと思っています」と言う。

発案者は現時点では本業との掛け持ちとなるものの、新オフィスをアイデアのブラッシュアップスペースとして利用したり、新事業に関連するテレビ会議などにも活用して欲しいと遠藤氏。

「集まった423件のアイデアの中には、他にも有望なものが数多くありました。それらに詳細なフィードバックを行なうことでブラッシュアップを図ると共に、毎年、継続的にアイデアを募集することで、社内にイノベーション文化や風土を浸透させたいと思っています」。

取材・文/綿谷禎子

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