テレワークだからパフォーマンスが下がる訳ではない
“コロナ禍”を契機にテレワークを始めた企業や働く人の中には、やりにくさや課題を感じている人は多いはずだ。
今回クラウドワークスとイトーキは、合計1,608名に対して「テレワークに関する実態調査を実施し、“通勤のある企業勤務者(以下、「企業勤務者」)”と以前からテレワーク環境で働く“フリーランス”を比較した。
その結果、テレワークの課題として多くの人が「身体の不調」「集中力の維持」「コミュニケーションが希薄」を感じており、そのうち企業勤務者においては特に「集中力」が大きな悩みであることがわかっている。
同時に、フリーランスにはこれらの課題を解决するノウハウがあることも判明した。今回はそれぞれに合った働きやすい環境・方法を見つけるための一例を紹介しよう。
今回の企業勤務者への調査では、約4割が勤務する企業にテレワーク制度が導入されていると回答。そこで、最もパフォーマンスを上げる場所について尋ねると、企業勤務者からは「勤務するオフィス(56.6%)」、フリーランスからは「自宅(69.4%)」と違いがあることが判明。
さらに、テレワークとオフィスワークでの自身のパフォーマンス発揮度を比較すると、企業勤務者はオフィスワークの方が1.5点高く、フリーランスはテレワークの方が2.5点高い結果となった。このことから、テレワークによってパフォーマンスが下がるとは言えないことが分かる。
テレワークのメリット・デメリット、「集中」への課題感が浮き彫りに
テレワークのメリットについて尋ねると、企業勤務者・フリーランス共に第1位は「通勤時間の減少」。なお、企業勤務者の第2位は「見た目を気にしないで良い」とあり、仕事へ向けた準備時間が削減されていることが分かる。
デメリットでは、フリーランスの方が「身体の不調」を挙げる割合が高く(+8.5%)、企業勤務者は「集中できない」「コミュニケーションが希薄」を挙げる率が10%以上高い結果になった。
特に「集中できない」に関しては企業勤務者のテレワーク経験期間の長さや頻度によらず、回答が挙がっていることから、企業勤務者にはテレワークの経験に限らず「集中」できない人が約半数いることが分かる。
在宅でのテレワーク環境 最初に整備すべきは通信環境
テレワークの中でも在宅勤務が増加している現在。今回、テレワークに使うもの・パフォーマンス向上させるもの・これから欲しいものについても尋ねたところ、2つの傾向が見られた。
1つめに、両者共に「通信環境(インターネット回線など)」については「使うもの」「パフォーマンス向上させるもの」で第1位と、重要性を認識していることが分かった。
一方フリーランスの特徴として「PC関連機器(モニターやプリンターなど)」が、より上位にランクインする傾向が見られる。
このことから、フリーランスは通信環境やPC周辺機器を整備することで、集中力の維持およびコミュニケーションやチームでの成果に対し最大化を図ろうとしていることが考えられる。
なお、コミュニケーションに関連して「業務上の会話量」や「チームへのコミットメント・アウトプット」についても尋ねている。
企業勤務者からは一貫して「減る(業務上の会話:57.5%/チームへのコミットメント:58.1%/アウトプット:48.9%)」と回答する一方、フリーランスは「変わらない(業務上の会話:33.8%/チームへのコミットメント:33.0%/アウトプット:38.4%)」と答える声が最多の結果となった。
企業勤務者のテレワークでは、コミュニケーションで感じているデメリットがチームの仕事の成果にも負の影響を与えていることが分かる。
2つめとして、両者共に「仕事専用のデスク」を重要視する意見が多く挙がっている。
また、フリーランスの意見では「仕事専用の椅子」が使うもの・パフォーマンス向上させるもので第4位、これから欲しいもので第3位にランクイン。このことから、両者ともにパフォーマンス向上・身体の不調改善のために、より仕事しやすく集中しやすい姿勢を求めていることがわかる。
作業環境を工夫することによる効果 ~スタンディングワーク~
心身の不調や集中力の維持等の課題は、ちょっとした環境の工夫によって改善することができると、イトーキの研究などで分かっている。
例えば、作業をずっと椅子に座って行っていると、集中力が低下し運動不足にも繋がる。
イトーキで社員32名を対象に行った実験では、オフィスで一日平均2時間(分散実施も許容)のスタンディングワークを意識的に取り入れた場合、普段どおりの働いた期間と比較して、6週間で腹囲が約1cm減少した。在宅環境においても、作業机の上に台を置いたり、立位用の作業机を導入することによって、姿勢を切り替えられる環境を用意することは非常に有効であると考えられる。
<作業姿勢の違い>
<スタンディングワークに関する実験結果>
今回のフリーランスへの調査の中でもテレワークでのパフォーマンス発揮度が「9,10」と回答した“テレワークハイパフォーマー”に限ってみると、下記の特徴が見られることが分かっている。
今回の調査から、テレワークの経験を積めばパフォーマンスが上がる訳ではなく、それぞれに合った働きやすい環境・方法を見つけ、実践する必要性に改めて着目した。また、コミュニケーションに関してはインフラの重要性が明らかになった。
調査概要
(1)企業勤務者への調査
調査対象:1,108名(20代~50代/全国各地に在住/男女)
集計方法:インターネット調査
調査期間:2020年4月21日(火)、22日(水)
(2)フリーランスへの調査
調査対象:500名(全国各地に在住)
集計方法:「クラウドワークス」での調査
調査期間:2020年4月30日(木)
(3)調査分析
クラウドワークス/イトーキ
構成/ino.