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手紙には、時候の挨拶をプラスすると季節感が出ます。ビジネスでもプライベートでも使える上に、丁寧さも演出できるのです。そこで、9月にぴったりな時候の挨拶を紹介します。具体例を参考に、印象に残る手紙を書きましょう。
時候の挨拶の基本
手紙に季節感や丁寧さを出す『時候の挨拶』は、どのように使う言葉なのでしょうか?基本の使い方について紹介します。
漢語調と口語調を使い分ける
時候の挨拶には、漢語調と口語調の『2種類』があります。それぞれ使い分けることで、送る相手に合った手紙を作成しましょう。
漢語調は、短く簡潔な言葉で挨拶をするもので、フォーマルな印象が強い表現です。そのため、ビジネスシーンに向いています。代表的なのは、『〇〇の候』『〇〇のみぎり』といった書き方です。
口語調は、話し言葉のような柔らかい表現となります。例えば、『暑い日が続いております』『晩には虫の音が聞こえるようになりました』などの文章です。堅苦しくなり過ぎないため、プライベートの手紙にも向いています。
また、手紙の冒頭に時候の挨拶を記載した場合、最後には結びの挨拶を入れるのが基本です。
季節感を大事にする
時候の挨拶は季節感を大切にするため、『季語』を取り入れます。季語は季節を示す言葉で、二十四節気の区切りに合わせて使い分けるのが一般的です。
9月の季語には、新涼・清涼・初秋・秋色・野分などがあります。これらの言葉に、候・みぎり・の折などをつなげると、簡単に漢語調の時候の挨拶を作成できるのです。
他にも、サンマ・ナス・キンモクセイ・ハギ・秋の雲などが、9月の代表的な季語といわれています。季節の食べ物や植物の名前は、口語調の時候の挨拶に取り入れるときれいにまとまりやすいです。
また、時候の挨拶の後には『活躍を喜ぶ言葉』や『体調を気遣う言葉』を加えると、相手への心配りを表現できます。
ビジネスで使える漢語調の挨拶例
ビジネスシーンで改まった手紙を書く場合には、漢語調の時候の挨拶を用いましょう。時候の挨拶は、同じ月でも上旬・中旬・下旬で適切な言葉が異なります。
時季を外さない挨拶ができれば、好印象につなげられるかもしれません。
9月上旬の時候の挨拶
9月上旬を二十四節気でいうと、処暑の終わりから白露にあたります。朝夕に涼しさを感じられる季節のため、時候の挨拶でも、涼しくなり始めたことに触れるとよいでしょう。
例えば、季語と合わせて『新秋の候』などのシンプルな表現がおすすめです。涼しくなり過ごしやすくなった、という意味合いを込めて『新秋快適の候』とするのもよいでしょう。
新涼の候も、秋の始まりの涼しさが伝わる挨拶です。他にも、下記のような時候の挨拶があります。
- 初秋の候、〇〇様におかれましては、ますますご壮健のこととお慶び申し上げます
- 重陽の候、皆々様には一層ご活躍されておりますことと拝察いたしております
- 涼風のみぎり、貴社一層ご清祥のことと慶賀の至りに存じます
9月中旬の時候の挨拶
白露の中頃から秋分あたりまでが9月中旬です。二十四節気をさらに詳細に分けた七十二候では、『玄鳥去(つばめさる)』という時季にあたります。ツバメも子育てが終わり、南へ向かう時季です。
いよいよ本格的な秋が始まる雰囲気を表すには、『秋晴の候』『爽秋の候』といった挨拶がよく合います。他にも下記のような挨拶がぴったりです。
- 清涼の候、ますますご発展のこととお慶び申し上げます
- 名月の候、皆々様の素晴らしいご活躍を拝聞しております
- 良夜の候、貴社におかれましては、ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます
9月下旬の時候の挨拶
二十四節気の秋分にあたるのが、9月下旬の時季です。夏に鳴っていた雷の音が聞こえなくなり、虫は冬ごもりの支度をする季節といわれています。
このような時季には、『秋分』『秋冷』といった季語を用いて、下記のような時候の挨拶を書くとよいでしょう。
- 秋分の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます
- 秋冷の折、ご一同におかれましては、ますますご発展のこととお慶び申し上げます
- 秋色の候、貴社におかれましては、ますますご隆昌のことと存じます
親しい人向けの口語調の時候の挨拶例
口語調の時候の挨拶では、身の回りの自然の様子を観察して述べるのがポイントです。その際、参考になる口語調の挨拶を、上旬・中旬・下旬ごとに紹介します。
9月上旬の時候の挨拶
厳しい暑さが和らぐ時季には、暑さのピークが過ぎたことや、徐々に感じられる秋の爽やかさが伝わる挨拶が向いています。例えば、下記のような挨拶だと季節感が伝わりやすいでしょう。
- 暑さが和らぎ、過ごしやすい日が増えて参りました
- 空気の澄んだ高い空が気持ちのよい季節がやってきました
- 夏のお疲れは出ていらっしゃいませんか
近年は、9月になってからも暑い日が続くことが増えています。
そのようなときには、『夏を思わせるような暑い日が続いておりますが、皆様お変わりありませんでしょうか』といった、暑さによる影響を思いやるような挨拶がぴったりです。
9月中旬の時候の挨拶
徐々に秋らしさが出てくる9月中旬には、過ごしやすさや快適さを盛り込んだ時候の挨拶が向いています。
- ようやくしのぎやすい季節となりましたが、皆様お変わりありませんか
- 風の心地よい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか
- 秋の気配が次第に濃くなって参りました
- 穏やかに秋が深まる今秋、爽やかな季節を満喫なさっているのではないでしょうか
- 風に揺れるすすきに風情を感じる季節となりました
また『暑さ寒さも彼岸まで』という言い回しも、9月中旬に使えるものです。
「暑さ寒さも彼岸まで」は本当か?覚えておきたい言葉の由来と正しい使い方
9月下旬の時候の挨拶
9月下旬の時候の挨拶には、秋本番の雰囲気が伝わる言葉をチョイスします。
- コスモスが秋風に揺れる季節となりましたが、お変わりないでしょうか
- 虫の音にも深まる秋を感じる頃となり、充実した秋の夜長をお過ごしではないでしょうか
- 一雨ごとに秋が深まり、厳しい暑さに汗を流したのが随分前のことのように感じられます
- 暦の上では秋分も過ぎましたが、いかがお過ごしでしょうか
- 朝夕は随分と涼しくなり、秋の到来を感じる毎日です
この他にも、日々の暮らしの中で秋の雰囲気を感じやすくなる時季です。
トンボが飛んでいた、キンモクセイの香りがした、ナシやブドウなど秋の果物を食べたなど、身近に感じた季節の変化をプラスすると、生き生きとした挨拶になります。
文末には結びを入れる
時候の挨拶で始まった手紙には、文末に結びを入れるのが一般的です。手紙を締めると同時に、相手への気遣いを表す役割があります。
9月の結びの言葉
時候の挨拶と同様に、結びの言葉にも季節感を盛り込むとよいでしょう。9月にぴったりの結びの言葉の例文を下記に紹介します。
- 新秋の折、貴社のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます
- さまざまな植物が実を結ぶ秋、貴社におかれましても実り多き秋になりますようお祈り申し上げます
- 残暑の厳しい季節ですが、くれぐれもご自愛ください
- 爽やかな秋を満喫なさいますよう、お祈り申し上げます
- 夏の疲れが出やすい季節と申します。健康にはくれぐれもご留意ください
秋の実りを発展と連想させる結びの言葉は、ビジネスシーンにぴったりです。また、季節の変わり目で体調を崩しやすい時季だからこそ、体調を思いやる一言もよく合います。
季節を問わず使える結びの例
結びの言葉の中には、季節を問わず使えるものもあります。ビジネスシーンで使いやすいのは、下記の結びの言葉です。
- 貴社のさらなるご発展を心よりお祈り申し上げます
- 今後とも変わらぬご支援ご鞭撻のほどお願い申し上げます
- 末筆ながら、ますますのご活躍をお祈り申し上げます
プライベートで出す手紙であれば、下記のように健康や幸せを願う内容がぴったりです。
- 皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます
- お健やかにお過ごしくださいませ
- またお会いできる日を楽しみにしております
手紙の相手との関係性や今後の予定などを考慮して選ぶと、まとまりのある結びの言葉になるでしょう。
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構成/編集部