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【開発秘話】累計2200万本以上売れているコカ・コーラ「ファンタ プレミアグレープ」

2020.08.22

■連載/ヒット商品開発秘話

 1958年に日本で製造販売が始まったフルーツ炭酸飲料『ファンタ』。子どもの頃は飲んだけど大人になったら飲まなくなった……という人は多いはず。ところが、2020年3月に発売された『ファンタ プレミアグレープ』は大人によく飲まれている。

『ファンタ プレミアグレープ』は30代以上の大人をターゲットとした大人のための『ファンタ』。収穫から24時間以内に搾汁したぶどう果汁とすりつぶすしピューレを使用し、果汁13%というリッチでコク深い味わいが特徴だ。グローバルで展開している『ファンタ』の中でも、日本で企画・開発された日本オリジナル商品で、これまでに2200万本以上売れている。

大人が高い金を払ってでも買う価値がある炭酸飲料をつくる

『ファンタ』を日本で展開している日本コカ・コーラの調査によれば、フルーツ炭酸飲料の消費量を2015年と18年で比較すると、10〜60代の全世代で下がっている。とりわけ落ち込みが顕著なのが、30代と40代であった。

 健康志向の高まりなどもあり、30代以降の消費量回復は望みが薄いと思えるかもしれない。だが、30代以上の70%以上は「価値のあるものにお金を払いたい」と回答している別の調査結果もある。同社はこのデータに着目した。

『ファンタ プレミアグレープ』の開発を担当した河野公紀氏(マーケティング本部 炭酸カテゴリーフレーバー炭酸グループ シニアマネジャー)は、次のように話す。

「30代以上になると、価値があると認めたものに対しては多少高くてもきちんとお金を支払いたい、と考えている人が一定数います。甘いものを敬遠する方もいますが、まったく摂らなくなるわけではありません。お金を支払ってでも買う価値がある炭酸飲料を開発できないか、ということからつくったのが、『ファンタ プレミアグレープ』でした」

日本コカ・コーラ
マーケティング本部 炭酸カテゴリーフレーバー炭酸グループ
シニアマネジャー
河野公紀氏

大人のおやつ時間向けに、重厚感があり上質感があるものを

 構想されたのは2016年で、開発が本格的に始まったのは2017年から。30代以降に向けて高果汁でコク深い味わいを打ち出すことにしたのは、おやつの時間に飲んでもらうことを狙ったためであった。「オフィスで仕事し、休憩としてデスクで何か飲んだりするときだと、甘さは控えめなものよりはしっかり感じられ、なおかつ贅沢な味わいがある重厚感のある飲み物の方がマッチすると考えました。ホッとひと息つく時間で飲んでもらえるよう、重厚感があり上質感があるものをあえてつくることにしました」と河野氏と話す。

 フレーバーをグレープにしたのには2つの理由があった。

 1つが、ふどうに高級なイメージがあることこと。高価な品種もある上にワインとの結びつきが想起されやすいことから、大人向けの上質なフレーバーとしてグレープがふさわしいと考えた。

 もう1つが、海外ではオレンジが一番人気なところが多い中、日本ではグレープが一番人気なこと。日本ではファンタ=グレープのイメージが強いことから、このブランドイメージを活用することにした。

「とにかく試作品を多くつくって検証しました」と振り返る河野氏。つくった試作品は60以上と、数多くの試作品をつくり検証したという。果汁率やピューレの配合割合を細かく変えたほか、ぶどうの果肉を入れたものなども試作・検証。従来にないコンセプトの商品だったことから、自信を持って世に送り出すために慎重になって味づくりを進めた。新鮮で美味しい味わいも実現することと、中味に対するこだわりや上質感に対して興味を持ってもらうため、収穫後24時間以内に搾られたぶどう果汁とピューレを使うことにした。

無菌室での充填により濃厚な果汁と炭酸の強い刺激を実現

 ただ、実現に当たっては設備投資が避けられなかった。その一例が無菌充填をするための無菌室の設置である。

 果汁入り炭酸を殺菌するとき、一般的には殺菌済みの中身と炭酸ガスを容器に充填してから熱水シャワーを掛け、掛け終わった後に冷却するが、無菌室をつくったことで、殺菌済みの中身と炭酸ガスを無菌室に送って容器に充填するようにした。外から熱をかける従来の殺菌方式だと炭酸ガス圧が中〜低圧に限定されたが、新方式だと外から熱をかけないので炭酸ガスの圧力を高圧にすることができるようになった。

果汁入り炭酸飲料の一般的な殺菌方法と『ファンタ プレミアグレープ』で採用した殺菌方法の違い

 こうした製造上の工夫により、『ファンタ プレミアグレープ』は炭酸の強い刺激を持ちつつも果汁をふんだんに使うことができた。「今後、いろんな商品展開が可能になることから、長期展望を交えて設備投資の理解を求めました」と河野氏は振り返る。

幻に終わった「ファンタ プレミア映画祭」

 発売に際して、同社はアンバサダーとして俳優の永山瑛太さんと松田龍平さんの2名を起用。テレビCMにも2人そろって登場してもらった。

『ファンタ プレミアグレープ』のテレビCMのワンシーン

 アンバサダーが俳優であることを生かして企画されたのが、「ファンタ プレミア映画祭」である。映画祭という上質で非日常的な場をつくることで、商品に上質感があることを感じ取ってもらうべく企画された。

 映画祭は「再会」をテーマに映像作品を公募。グランプリ(1組)には賞金50万円授与のほか、副賞として10月31日から開催される予定の「東京国際映画祭」での野外上映権が授与されることになっている。選考の末、グランプリは選定されウェブサイト上で発表したが、3月上旬に予定されていた「ファンタ プレミア映画祭」の開催については新型コロナウイルスの影響により、残念ながら中止になってしまった。

 それにしても、なぜ作品のテーマを「再会」にしたのか? その理由を河野氏は次のように話す。

「私たちの願いは、過去に『ファンタ』を飲んだことがある人に『ファンタ プレミアグレープ』をきっかけにしてもう一度、『ファンタ』ブランドに戻ってきてもらいたいということです。この願いを簡潔に示すものとして、テーマを『再会』としました」

 当初は30代以降の大人がオフィスでホッとひと息つくときにデスクで飲んでもらう、大人のおやつとして需要を想定していたが、新型コロナウイルスで在宅勤務への移行が進んだことから販売面への影響は避けられないと考えられた。しかし実際は、家庭での需要を想定以上に開拓することに成功したという。河野氏は現状を次のように分析する。

「結果的に、新型コロナウイルスの影響は現時点で、心配していたほど見られていません。消費者の声を見ると、家の中にこもる機会が増えて外出できないことのストレスがたまる中、たまにはちょっと贅沢をしたい、と思ったときに選ばれているような印象を受けます。しっかりした味わいでリラックスできるもののニーズは新型コロナウイルスの影響をあまり受けないようです」

取材からわかった『ファンタ プレミアグレープ』のヒット要因3

1.ターゲットの価値観にマッチ

 これまでの『ファンタ』より容量が少なくなり(380ml)、価格もアップ(税抜150円)したので単純に見れば割高になった。しかし、主なターゲットとした30代、40代の価値観を捉え、味わいやパッケージを大幅に変更。価格に見合う価値が提供できることになった。

2.確かな味わい

 大人のおやつ時間での飲用を想定したこともあり、甘く濃厚なものを目指す。さじ加減が難しいところだが、試作・検証を重ねてつくり込み、ターゲットに好まれる甘さ、濃厚さを持つ味わいにすることができた。

3.消費者コミュニケーションと話題づくりが奏功

 30代半ばで本格感がある俳優2名をアンバサダーとして起用し、大人向けであることをテレビCMなどで印象づけた。また、中止にはなったものの「ファンタ プレミア映画祭」で話題づくりもでき、早期に商品の認知を拡大できた。

 同社によれば、『ファンタ』を一度でも飲んだことがある人が80%以上にものぼるという調査結果があるという。長い歴史を持つだけに、かつて『ファンタ』を愛飲した大人が目に留め、一度でも飲めば再び『ファンタ』ユーザーになってくれるポテンシャルを、『ファンタ プレミアグレープ』は秘めていると思われる。

ブランドサイト
https://www.fanta.jp/premier/

文/大沢裕司

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