幸甚を使うときの注意ポイント
ビジネスメールに適した便利な言葉でも、使い方を誤ると印象を悪くしてしまうこともあります。幸甚を使う際に気を付けたいポイントなど、注意点を紹介します。
多用すると逆に印象が悪くなる
幸甚は取引先や目上の人に使える便利な表現です。しかし、あたかも定型文のように多用してしまうと、「わざとらしい」「しつこい」「おおげさ」といった悪い印象を与えてしまうこともあります。また、過度に使用すると本来の言葉の重み伝わらなくなり、口先だけの軽々しい印象にもなり兼ねません。
本来、幸甚は普通の程度を超越したこの上ない幸せを表現する言葉です。無理をいって融通してもらったり、危機的状況を助けてもらったりといった重要なシチュエーションで使うようにしましょう。
1通のビジネスメールに対し1回の使用に留めるようにすることも大切なポイントです。
親しい間柄で使用するのはNG
主にビジネスメールなどに使用する書き言葉のため、少し堅い印象を与える言葉になります。丁寧な言葉であるため、取引先・目上の人・格上の人などに幅広く使えますが、相手との間柄を考慮して使用することが重要なポイントです。
年齢や役職が上の人でも親しい間柄の場合は、よそよそしく違和感のある文章になってしまいます。言葉の意味や使い方をよく分からないで使用しているような印象を与えてしまうこともあるでしょう。
逆に親しい間柄でもマナーを重んじる人などは、幸甚を使った方が好印象を持たれることもあります。幸甚を使うかどうかは、相手の性格や間柄をしっかり見極めて判断しましょう。
伝えたいことをはっきりさせる
幸甚の使い方によっては、自分の依頼や要求が伝わりにくいこともあります。よく使われる「ご連絡いただけると幸甚です」や「ご確認いただけると幸甚に存じます」といったフレーズも、してもしなくてもどちらでもよいというような曖昧なニュアンスになってしまいます。
意思疎通の欠如によるトラブルを防ぐために、『いつまでに何をどうしてほしいのか』を明確にするのが仕事を円滑に進める大切なポイントです。「今月中にご連絡いただけると幸甚です」とすれば、相手に自分の意図が明確に伝わります。
同じような意味を持つ言葉
ビジネスメールを送る相手やシチュエーションによっては、幸甚が使いづらかったり適していなかったりすることもあるでしょう。そのようなときは、これから紹介する同じような意味を持つ言葉が代用できます。
ありがたく存じます
「助かります」「ありがたいです」「うれしいです」いった感謝の気持ちを表現するときに「ありがたく存じます」が使えます。「存じます」は敬語表現のため、取引先・目上の人・お客様などに使える便利な表現です。
「迅速な対応をしていただき幸甚に存じます」と感謝の気持ちを伝えるときに、「迅速な対応をしていただきありがたく存じます」と言い換えられます。より強く感謝の気持ちを伝えたい場合は、「ありがたく存じます」の前に『とても』や『非常に』『大変』を用いることもできます。
丁寧ながらもやわらかい印象になるため、ビジネスシーンだけでなく日常でも使いやすい表現といえるでしょう。
幸いです
誰かに何かを依頼するときや贈り物をするときに、同様の意味合いやニュアンスで使えるが「幸いです」です。
「お手隙の際に目を通していただけると幸甚です」は、「お手隙の際に目を通していただけると幸いです」と言い換えができます。「心ばかりの品ですが、ご笑味いただければ幸甚に存じます」は、「ご笑味いただければ幸いに存じます」になります。
前述の例文のように「幸いに存じます」と謙譲語を使い、より丁寧な表現にすることも可能です。ただし、フォーマルなビジネスメールや親しい間柄ではない目上の人や格上の人には適していない場合もあるため、注意しましょう。
光栄です
感謝やうれしく思う気持ちを表現するだけでなく、名誉に思うという意味合いもあるのが「光栄です」という言葉です。より丁寧で敬意を示す「光栄でございます」や「光栄に存じます」という言い方もあります。いずれの場合も、年齢や立場に関係なく使用できますが、目上や格上の人に使うことが多いです。
「このような栄えある賞をいただき幸甚に存じます」というような場合に、「このような栄えある賞をいただき光栄に存じます」と言い換えられます。
単に会えてうれしいという意味で「お会いできて光栄です」というフレーズが使われる傾向にありますが、厳密には間違った表現です。本来は、会えたことが名誉や誇りに思える相手に対して使うフレーズになります。
構成/編集部