「間接機能」の従業員割合は2012年の約1.19倍
デロイト トーマツ グループは人事、経理・財務、情報システム(IT)といった「間接機能」の効率性を分析した調査レポートをまとめた。
その結果、間接機能の拡大が見られ、多くの日本企業が生産性向上の道半ばであることが判明した。
企業における間接機能の比率は参加企業全体の中位値で11.7%と、本調査の開始時である2012年時点の9.8%から1.19倍となり、過去最も高い数値となった。直近調査の2016年の10.8%からは1.09倍となっており、現在も上昇傾向にあることが分かる。
過重労働問題や個人情報保護など、労務管理やコンプライアンスへの対応の重要性が増していることに加え、経済全体として企業業績も堅調に推移していることなどから、間接機能のコスト削減・人員のスリム化への意識が弱まっていたことが背景にあるのではないかと推察できる。
経営上の観点から間接機能の充実化はある程度は必要ではあるが、間接機能の増大はコスト増にもつながるため、間接機能の特定機能を充実化させる場合には、それと同時に生産性向上につながる施策を講じていくことが非常に重要だ。
たとえば、生産性向上のためには、既存業務を見直し、ITツールや社外リソースを活用して、自動化・外注化を行うことで捻出した工数を、企業の業績拡大や価値向上につながる高付加価値業務へ投下していくことが必要となる。
しかし、今回の調査結果によると、RPAに「一定の費用をかけている」と回答した企業は45.9%であり、多くの企業で導入が進んでいる一方、未導入の企業もまだまだ多く、生産性向上余地を抱えている企業が一定数あることがわかる。
また、チャットボットに費用を投下している企業の割合は15.5%、クラウドワーカーの利用企業割合は8.7%と、RPA以外のITツールや社外リソースについては、さらに活用の余地があることが想定できる。
人事機能の従業員割合は2012年の約1.23倍
間接機能のうち代表的な管理機能である「人事」「財務・経理」「情報システム」の従業員割合を見ると、人事については間接機能全体よりも増加割合が高く、8年前の約1.23倍となった。
一方、人事の「戦略業務」を担う正社員比率は、中位値でも5.3%、下位25%では2.2%という低い結果となっている。これは先進的なグローバル企業において目標水準とされている20%と大差がある。
また、「HRBP(HRビジネスパートナー)」と呼ばれる、事業部門の人事課題や解決策を提案する機能を有している企業は約18.1%あるものの、一人当たり正社員数をみると中位値で約210人という結果になった。これは欧米企業を中心とした同種のベンチマーク調査の300~400人という約半数。
日本企業の人事部門は、欧米企業に比べて、実務やオペレーションなどのサポート範囲が広い場合が多いため、一概に、欧米企業の水準を目指すべき、とは言えないが、より戦略的な業務に従事する人数の割合を拡大し、人事業務を高度化する余地は大きいと考えられる。
60歳以上の社員構成比率は2016年の約1.6倍
社員の年齢別構成比率のうち、60歳以上の人員割合は2.5%と2016年の1.5%から1.6倍となり、全体における構成割合は低いものの増加率では全年齢層の中で最も高い数値になった。
労働人口の減少や高齢化が進む中、定年年齢・再雇用契約の限度年齢を一般的な年齢よりも高く設け、より長く社員に貢献してもらおうとする企業が増えていくと考えられる。
同調査で再雇用者の契約更新限度年齢については、多くの企業で65歳を契約限度としていた一方、70歳を契約限度としている企業が13社(5.4%)、中には75歳を契約限度としている企業もあった。
一方で、再雇用された従業員の年収を見ると、定年前と比較して平均4割年収が減少する調査結果となりました。今後シニア人材の活用が期待される中で、付加価値の高い業務を担ってもらうことと併せて、教育強化、評価・報酬に関する制度の見直しなど、活躍を推進する環境を整備していくことが求められる。
間接機能の役割を戦略的に検討することが肝要
今回のベンチマーク調査から見られるように、全体の傾向として間接機能割合が増加する中、企業にとっては、継続的に間接機能のあり方を検討していくことが重要といえる。
多様化する間接業務の役割分担を明確にした上で、機能の高度化を図ることや、効率的なオペレーション遂行を行うことなど、目的に沿ってチームを作り上げることで、必要な専門性を集約した効果的・効率的な組織編制が可能になる。
調査概要
Webアンケート方式
調査対象年度: 直近決算期(2018年度)
調査時期: 2019年9月2日~2019年11月15日
参加企業数: 248社
構成/ino.