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Twitterのオタ垢運営、自作イラストの盗作被害、弁護士が指南するオタ活を楽しむための著作権法

2020.07.14

ゲームやアニメ、漫画などのいわゆる“オタク文化”を楽しむ上で、著作権法の正しい知識は欠かせない。著作権法の知識は、全オタク必修といっても過言ではないだろう。

前編では、エンターテインメント分野の著作権法に詳しい弁護士の井上拓さんに著作権法の基本、そして二次創作の注意点について教えてもらった。

そして後編では、ツイッターのオタ垢運営や、クリエイターが自分の作品を守るための対策について、引き続き井上さんに解説してもらう。

【取材協力】

井上 拓(いのうえ たく)・・・弁護士・弁理士。東京大学工学部卒、東京大学法科大学院修了。2011年弁護士登録、日比谷パーク法律事務所入所。主な取扱分野は、知的財産権、IT、エンターテインメント、スポーツ等。University of California, Berkeley, School of Law(LL.M. / Certificate of Law & Technology)修了、University of Southern California, School of Law(LL.M. / Certificate of Media & Entertainment Law)修了。エンターテイメント・ロイヤーズ・ネットワーク会員。弁護士知財ネット会員。
法律についてわかりやすく解説するYouTubeチャンネル『井上拓 のフロンティアCH』も運営中。
Twitter:@inotaku

ツイッターのオタ垢運営で押さえておくべき著作権法のルール

ツイッターは、オタク関連情報の収集・発信、オタク仲間との交流のために活用している人が多いSNSだ。ツイッターでオタ垢を運営する際には、どんなことに気をつければ良いのだろうか。

「アイコンやヘッダーには、他人の著作物を勝手に使用しないようにしましょう。著作権者が黙認しているケースも多いですが、中にはあまり快く思っていない人もいます。少し前に、ある有名ミュージシャンが“自分の写真をアイコンに使用しないでほしい”と声を上げたことが話題になりました」

冒頭で、著作物の“引用”は無断で行っても著作権法違反にならないと説明した。しかし、ツイッターで引用を行う場合には注意すべき点があると井上さん。

「ツイッターは文字数制限が140文字と非常に短いので、本文と引用部分との主従関係に注意しなければなりません。あと、出典をちゃんと記載することも大切です。

たとえば引用したい画像を貼り付けて、その上に自分の意見を140文字しっかりと書いていれば、主従関係の要件を満たしていると判断されると思いますが、引用画像に添えられる文章が、“推し可愛い”とかだけですと、かなり微妙です」

ツイッター上では、プロ・アマ、法人・個人問わずたくさんのアカウントが、自作のイラストや漫画などを公開している。

人気キャラクターの誕生日には、公式アカウントがファンのために用意した豪華なバースデーイラストをツイートすることも多い。

ツイッター上で公開されているイラストや写真などの著作物は、どのように扱うのが正解なのだろうか。

ツイッター上でファンのために公開されたものなのだから、アイコンに使ってもいいのだろうか?

「公式垢がツイートした推しのバースデーイラストをリツイートするのはOKです。投稿者は、Twitterが公式に提供するリツイートなどの機能によって自らTweetが広まること(複製されること)に合意しているといえるからです。

また、ダウンロードしてひとりで鑑賞したり、家族間でシェアするだけなら、私的使用にあたるので、著作権法上は問題ありません。

アイコンやヘッダーの画像への利用は黙認されることも多いですが、形式的には権利者の許諾がない限り著作権違反にあたります。

不安な時はゲーム会社やアニメ会社に直接問い合わせて許諾を得られないか確認するのが確実です。

ゲーム会社やアニメ会社もファンのために用意した画像については、アイコンやヘッダーの画像への利用も許可してくれる可能性が高いのではないでしょうか」

では、趣味で創作活動を行っている個人のアカウントが突然バズった場合、その漫画やイラストはどんな方法で拡散することが許されるのだろう。

「先程と同様で、リツイートはOK、個人観賞用の保存もOKです。しかし、自分のツイートに勝手に他人の漫画やイラストを貼り付けて拡散するのは、原則として認められません(前述の“引用”の場合を除く)。またツイッターを超えて他のウェブサービス(ブログや匿名掲示板など)に勝手に転載することも、許されません。

「Twitterに投稿している以上、バズらせたいはずだ」と勝手に考え、他のSNSに転載することは著作権者の意に沿うはずだという考える人がいるかもしれませんが、そういう“おせっかい”は禁物です。

創作活動を行う人の中には、自分が使い慣れているSNS内で楽しみたい人もいます。別のSNSに転載したい場合は、やはり本人に確認して、しっかりと許諾を得ることが望ましいですね」

自作のイラストや漫画が盗まれたときに取るべき対策とは

ここからは、創作活動を行っている人が自分の作品を守るための法律的アドバイス。

一生懸命に作ったイラストや漫画、動画などの作品が勝手に使用されたとき、どのように対処すればいいのだろうか?

「まずは、証拠固めをすることが重要です。ネットでは、すぐに証拠となるイラスト等を消されてしまうので、無断利用が証明できる画面をPDF化する、またはスクリーンショットを取ることをお勧めします。

URLと日時も記録しておくことが、ポイントです。日時やURLがPDFやスクリーンショットに入らない場合や途中で切れてしまう場合は、別途のメモの形で記録しておけば大丈夫です。

ツイッターなどのSNSの場合は、相手のアカウントがわかるようアカウントの部分も記録に残しておきましょう」

証拠を残すことができたら、次に本人に警告を行う。

「悪気なく無断利用している人も多いので、まずは“私の著作物を勝手に使わないでください”と警告してみましょう。警告を受けると、あっさりと止めてくれる人もいます。

それでも相手が無断利用を続ける場合には、弁護士に依頼して、弁護士名義で改めて警告をすると良いでしょう。残念ながら著作権侵害を軽く考えている人がまだまだ多いのですが、弁護士名義の警告を受け取ると、さすがに真剣に対応を考えてくれる人が多いです。

弁護士名義を受けてもなお無断利用を止めない場合、次のステップは損害賠償請求や差止請求などの法的措置となります。

ただし、相手が匿名の場合、まずは誰なのかを明らかにしなければなりませんので、発信者情報開示請求を行う必要があります。

この場合、弁護士費用の目安は少なくとも30万円、期間は3~4ヶ月かかります。コストと得られる結果とのバランスをみて、判断してください」

もしも相手があなたの著作物を商業利用していた場合には、損害賠償金が大きくなる可能性があるという。

「著作権を侵害されたことにより被った損害の額を立証することは、簡単ではありません。

しかし、著作権法には “無断利用した人が不当に得た利益=著作権者の被った損害”という風に損害額を推定してくれる規定があります。これを利用することで、相手が事業者である場合は、相手が得た利益が立証できれば、それを被った損害として賠償してもらえることになります。

ですので、相手が自分の著作物を単に無断で使っていただけでなく、それにより稼いでいた場合には、損害賠償金の金額が大きくなります」

では他のクリエイターに“パクられた”場合はどう対処すればいいのだろうか?相手は「たまたま似てただけ」「私の完全オリジナルだ!」と主張しているが……。

「“パクり”か否かの判断要素は、依拠性と類似性です。

少し難しい表現になりますが、依拠性は“他人の著作物に接し、それを自己の作品の中に用いること”、そして類似性は“他人の著作物の表現上の本質的な特徴と類似していること”をいい、両方満たした場合に“パクリ”(著作権侵害)となります。

たとえば、“パクられた”と主張している人とパクった人が友人同士だったとか、パクられた側が界隈で有名なクリエイターだった場合には、“他人の著作物に接し”の部分(アクセスがあったこと)が認められ、その結果、依拠性まで認められる可能性が高いでしょう。

アクセス自体を立証するのが難しい場合、“依拠しない限りこれほど類似することはない”という経験則で依拠性を立証することも多いです。

問題は、“類似性”です。類似性の判断は、本当に難しいです。ポイントは、類似しているか否かの判断の対象は原則として “表現上の本質的な特徴” であることです。

裏からいえば、本質的な特徴ではない“ありふれた表現”は、原則として比較の対象外だということです。

たとえば、りんごの絵について2つの絵の類似性を判断する場合、両方とも赤くて丸い形であることはありふれた表現(りんごの絵である以上多くの人が選択する表現)なので、それを類似性の根拠とはしないということです。

そうではなく、葉っぱの描き方とかりんごの置かれた机の描写とか、そういったありふれたものではなく著作者の個性(創作性)が発揮されている部分が類似しているかどうかを判断するのが、基本となります。

とはいえ、どの部分が “表現上の本質的な特徴” なのかの判断も、それが類似しているのかの判断もとても難しいです。

専門家である弁護士ですら悩むくらい難しい判断ですので、困ったときは一人で考え込まず、ぜひ著作権法に詳しい弁護士にご相談いただければと思います」

取材・文/吉野潤子

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