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パワハラは「労災」認定される?覚えておきたい労災の認定基準と申請手順

2020.07.01

6月から大企業でのパワハラ防止対策が義務化された。これに合わせ、厚生労働省は精神障害をめぐる労災の認定基準を改正。「パワーハラスメント」という項目を新たに追加した。これまでの「いじめ・嫌がらせ」という項目から独立させた認定項目とすることで、労災申請を促す狙いがある。

そこで本記事では、パワハラによる労災と認定される基準や、どのような手順で申請を進めるのかを解説する。

まずは「労災」について理解しよう

「労災」とは「労働災害」の略称で、業務中・通勤中に発生した事故などによる怪我や病気のことを指す。業務中の災害を「業務災害」、通勤中の災害を「通勤災害」と呼び、労災保険料は全額事業主が負担する仕組みだ。労災が発生し、申請があれば労働基準監督署が認定を行い国が補償を行う。

通常、「業務外」のケガや病気による療養のため休業し、労務不能であるときは「健康保険の傷病手当金」が支給される。しかし、「業務上の傷病」により労災保険の休業補償給付が支給されている期間は、原則として傷病手当金は支給されない点も覚えておこう。

参考:厚生労働省 労災補償

厚生労働省の認定基準

業務災害でポイントとなるのが、「業務遂行性」と「業務起因性」という言葉。「業務遂行性」とは、労働者と事業主との間で労働契約関係が認められたうえで発生したかどうか、「業務起因性」は業務と災害との間に因果関係があるかどうかという意味だ。つまり、明確な雇用関係がある上で、業務起因性がなければ業務災害には認められない。

また、事業所内や業務時間中であっても、労働者の私的行為によるものや、故意によるものなどは認められない点も覚えておこう。反対に、残業中や休憩時間中、出張などで「事業所外」の場合でも、私的行為によるものでなく事業主の管理下にあると認められる場合は労災と認定される。

通勤災害については、「住居と就業場所との往復」「就業場所から他の就業場所への移動」「単身赴任先と帰省先との間の移動」の中で、合理的な経路と方法で行われる移動が通勤と認められる場合、認定対象となる。ただし、厚労省によって認められている行為(日用品の購入や保育園の送迎など)によって「通勤状態」から逸脱した場合、その間は通勤と認められないものの、その行為の終了後は再び通勤と認められる。

パートやアルバイトでも労災認定される?

労災保険における労働者とは、「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」を指す。つまり、雇用形態に関わらずすべての労働者が適用対象となるため、パートやアルバイトでも労災を申請することができる。

パワハラが原因の怪我や精神疾患は労災認定されるのか

さて、ではパワハラによる身体的・精神的被害は労災の対象となるのだろうか。一般的には、精神疾患について労災認定を受けるのはかなり難しいと言われている。パワハラによる労災認定には、3つの要件が必要だ。

①認定基準の対象となる精神障害を発病していること

パワハラによる労災対象被害で典型的なのが、精神的な被害。労災認定の対象となる精神障害は、厚労省によって定められている。この対象となる精神障害に該当するかどうかが、一つ目のポイントだ。

厚生労働省 精神障害の労災認定

②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

発病前の半年間の間、業務による「心理的負荷」が認められる必要がある。心理的負荷は、労基署の調査により「心理的負荷評価表」を使って「強弱」を評価。この「心理的負荷評価表」で「強」と評価された場合に認定される。
厚生労働省 業務による心理的負荷評価表

③職場以外の心理的負荷によって発病したものではないこと

外部からのストレスには、仕事に関係するものと私生活に関係するものがある。当然のことながら、労災として認定されるには「職場でのストレス」と認定されなければならない。職場における心理的負荷評価表と、職場以外の心理的負荷評価表があり、労基署の調査に基づき判断が行われる。

この際に重要になるのが「客観的証拠」。被害を裏付ける資料(勤怠表、タイムカード、PCの履歴など労働時間に関する記録、発言の録音、周囲の人による供述書など)を準備しておこう。

パワハラによりうつ病になり労災認定された事例

ここでは、全国労働安全衛生センター連絡会議で紹介されている事例を紹介する。

2013年12月24日付で横須賀労働基準監督署は、「ビルメンテナンス会社の元社員の精神疾患は、長時間労働とパワハラが原因」と判断し、労災認定した。申請者は時間外手当がつかない状況で早朝から深夜まで働かされていた上、社長・上司らからの嫌がらせ、からないなどを受けていたという。その後、体調に異変を感じ、労働組合に相談し、病院を受診したところ「うつ病」と診断される。休職を余儀なくされたが、横須賀労基署に労災申請。1年ほどの期間を経て、個人的に付けていた手帳の出退勤時間が証拠となり、労災認定される。

参考:全国労働安全衛生センター連絡会議

退職後でも労災認定されることはある?時効はあるの?

労働基準法第83条と労災保険法第12条の5では、「補償や保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない」旨が定められている。つまり、退職後でも労災申請をすることは可能だ。ただし注意すべきなのは、労災の請求には「時効」が存在する点。

例えば、「療養(補償)給付」では、療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、 その翌日から2年が時効となる。「休業(補償)給付」は、賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年が時効だ。

「退職後でも請求できる」とそのままにしておくと、時効になり請求ができなくなることがある。早めに労基署や専門家に相談し手続きを進めよう。

パワハラで労災認定を受けるまでの流れ

最後に、労災認定を受けるまでの流れについて解説する。医療機関を受診しつつ、労災申請のために弁護士などへの相談を並行して行っておくのがいいだろう。

1.医療機関を受診して定期的な診察を受ける

仕事が原因かどうかにかかわらず、心身の不調を覚えた場合は専門病院を受診し、継続的な診察を受けることが大切。後日、労災として申請する場合にも、適切な治療に基づく確定診断が必須となる。治療期間中に作成されたカルテなどは、労災認定のための積極的証拠になることも。

2.申請書を労働基準監督署に提出する

企業は、精神疾患が業務に起因することを否認するケースも多い。そのため、会社側の協力を得られる可能性は低く、パワハラでの労災は労働者自身が労基署に直接申請を行うケースが多いようだ。申請書は労基署や労働局でもらうか、厚生労働省HPからダウンロードしよう

3.労働基準監督署による調査

会社関係者からの事情聴取や資料提供、担当主治医からの事情聴取や診断書などの資料提供などにより、調査が進められる。申請者本人も事情聴取を受けるため、労災の認定に有効な資料を積極的に提供するようにしよう。

4.労働基準監督署から通知書が届く

調査が完了すると、労災支給(不支給)決定の通知書が送付される。支給が認められた場合には事前に電話連絡がくることもある。労基署の不支給決定に納得できない場合、労基署の上級機関に対して不服申し立て(再審査請求)をすることが可能だ。申し立て期間は「決定があったことを知った日の翌日から3か月以内」なので注意しよう。

パワハラで労災認定を受けることを検討している場合は、弁護士に相談してアドバイスを受けることおすすめしたい。労災認定のハードルは高く、申請手続きに手間や労力がかかること、申請者が無理ができない状態になっているケースがほとんどだからだ。専門家の力を借り、できる限り負担を軽減するよう努めてほしい。

文/oki

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