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13年ぶりのフルモデルチェンジ!7月1日にデビューする東海道新幹線の新型車両「N700S」の完成度をチェック

2020.06.21

「やり切った」と思われたN700Aを超えた「最高の」グリーン車

そして期待高まるグリーン車だが、控えめに言っても「最高の」名にふさわしい座り心地になっている。褒めすぎじゃない? と言われるかもしれないが、筆者も今まで鉄道はもちろん、飛行機、バスといろいろな座席に座ってきたが、その経験から言っても確かに「最高の」グリーン車になっていると実感した。

これが「最高の」グリーン車だ!!

「ゆとりとプライベート感のある空間」をテーマにしたN700Sのグリーン車。やはり一番目を引くのは窓周りのデザインだろう。普通車よりも、よりやさしく大きく包み込むようなデザインは、着座した瞬間からより一層のプライベート空間を味わえるもの。シートは座るだけでもどっしりとしたホールド感が味わえるが、このシートの真骨頂はリクライニングした時に体感できる。以前、月刊『DIME』でシートの設計に携わってきた、JR東海 新幹線鉄道事業本部車両部 車両課 担当課長 藤井 忠さんにインタビューした際にこんな話を聞いていたのを思い出す。

「N700Aのグリーン車座席設計を担当した際に、やれることはやり尽くしたという思いがあった。しかし、N700Sではそれを超えなくてはいけない」という言葉だ。

クッションを一切つけない、板のような状態の座席を用意し、着座時の荷重バランスなどを一から見直し、完成までに作成されたプロトタイプは実に8タイプにものぼったという、N700Sグリーン車用新シートの開発。アツいお話を聞いてはいたが、実際に営業車タイプの座席に座るのは筆者自身、今回が初めて。ということでワクワクしながらリクライニングレバーを操作すると思わず、「おおっ!」と声がもれた。それは筆者だけではなく、ほかの試乗会参加者からも同様の声がもれていたのだった。

リクライニング時に大きく沈み込み、シート全体で包み込むようにホールドしてくれる。

グリーン車座席の最大の特徴はずばり、「座面が大きく沈み込む」点だ。背もたれ部が傾斜するのと連動して、座面が適切な位置にスライドするのと同時に、深く沈み込む三次元的な動きをする。普通車も同じような動きがあるがグリーン車は異次元の世界だ。

加えて、着座時の重心点がN700Aでは腰部分だったのを、このシートではくるぶしのところに来るように設計。これにより、長時間同じ姿勢で座っていると、疲れからずるずると腰を前にずらして座りがちとなるのを、見えない所から防いでくれている。トータルで疲労感を軽減してくれているのだ。

普通車以上に特別なプライベートスペースとして演出してくれる、窓枠から荷棚にかけてのデザイン。

フットレストは従来比+25%大型化。足元スペースも+15%も拡大されている。畳んだ状態なら土足のままの使用もOK!

読書灯とレッグウォーマーも装備。読書灯は照射角を70%も拡大した。

背面テーブルは手前にスライドすることもできる。

この大きく沈み込むシートと窓側にあしらわれた大きなオーバル状のデザインが組み合わさり、自分だけの空間を演出してくれる。これはまさに「最高の」グリーン車といって過言ではない。

今回は走行中の車内で撮影を続けたこともあり、車内で立っている時間が比較的多かった。そこで気がつくのが横揺れの少なさだ。立っていても負担を感じない。もちろん座っている時ならなおさらだ。

特に対向車と高速ですれ違うと大きな揺れが生じるが、これをN700Sは強力に抑制している。N700Sでは先頭車やパンタグラフ搭載車、グリーン車など、ほかの車両よりも揺れを抑えるために「フルアクティブ制振制御装置」を、それ以外には「セミアクティブ制振制御装置」を搭載。しかも、単純に搭載しただけでなく徹底的な試験走行の中で最高のチューニングに設定してあるそうだ。

N700S、いつどこで乗れるの?

新大阪に到着後、N700Sの指揮を取ってきたJR東海 新幹線鉄道事業本部 上野 雅之 副本部長が報道陣に完成の思いを語ってくれた。

N700Sは自然災害時などで停電状態になっても安全な場所まで走行できる車載バッテリーの搭載や、16両編成より短い短編成化などが容易にできる高速鉄道の「標準車両」を目指して開発が進められてきた。

これまでたくさんの試験を行なってきたが「特に思い出深い試験は?」と上野氏に尋ねてみると「バッテリー自走試験や時速360km走行試験などが思い出深い。ほとんどが期待通りの結果を残してくれた」と語った。

「自信を持ってご利用いただける車両になった」と話すJR東海 新幹線鉄道事業本部 上野 雅之副本部長

N700Sでは一部に引退した700系車両のアルミ材をリサイクル利用している。高速鉄道としては世界初だ!

N700Sはデビューとなる7月1日時点で4編成、今年度中には12編成、2022年度末までに40編成登場する予定だ。毎日の運行スケジュールは一定ではなく、その都度変わる。

ここまで進化して、しかも同じ料金ならぜひともN700Sに乗りたいところだが、これについては7月1日のデビュー初日を除き、JR東海公式Twitterアカウント「東海道新幹線(東京~新大阪)運行情報【JR東海公式】」で翌日分の運行ダイヤが公開される予定だ。

チケットレスサービス「エクスプレス予約」「スマートEX」なら、運用が発表された時点で列車変更しても手数料は無料だし、駅にいなくてもどこでもすぐにN700Sが充当される列車に変更できるので活用したい。

JR東海が新幹線の車両について出した一つの答え、「N700S」がついに7月1日デビューする!!

取材・文/村上悠太

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