2020年夏は3品態勢で
売れ行きの良さから、ピースカットケーキは以後、季節限定モノを投入していくことが決まる。2020年夏の季節限定品に関しては、2019年秋から開発に着手。〈はちみつレモンケーキ〉はそのまま手を加えず〈マンゴーケーキ〉はリニューアルして〈マンゴー甘夏ケーキ〉とし、その上で〈パインココナッツケーキ〉をプラスするという3品態勢で臨むことになった。
〈マンゴーケーキ〉のリニューアルでは、実現しなかった〈マンゴーオレンジケーキ〉も検討され、工場も試作をつくったほど。しかし「2年連続の提案になるので受け流されるかもしれない」(仲義氏)ことから、異なるものを提案することにした。明確な特徴を打ち出せるものとして注目したのが、日本らしさが感じられる柑橘類。この中から、原料を確保しやすい甘夏を選定する。
試作品を食べたところ、マンゴーの甘みと甘夏の酸味のバランスが予想していたより良く、甘夏独特の苦味もアクセントになった。意外といい組み合わせだったことから、改良を重ねて完成度を高めることにした。
新商品の〈パインココナッツケーキ〉は、研究室からの提案だった。最初の試作品で完成度の高いものができ、仲義氏も試食で「悪くない」と手応えを得たことから、細部を詰めて完成まで持って行った。
研究室から菓子の提案は受けたのは、これが初めてのこと。〈はちみつレモンケーキ〉と〈マンゴーケーキ〉が売れたことから社内が1つになり、盛り立てる雰囲気が生まれた結果、提案につながった。
取材からわかった『冷やしておいしいケーキ』のヒット要因3
1.興味をかき立てた
『冷やしておいしいケーキ』というキャッチが秀逸。冷蔵庫で冷やすだけでおいしさが増すことに対する期待感から手に取ってもらえた。
2.メディアの関心を呼んだ
秀逸なキャッチはメディアの関心も呼んだ。ウェブや雑誌だけでなく、テレビの情報番組でも取り上げられる。商品の存在を広く知ってもらうことに貢献した。
3.欠品を起こさなかった
季節限定品ゆえに限られた販売期間での勝負になるが、その間に欠品を起こそうものなら機会損失は甚大で、挽回の見込みはない。ピンチになりかけたこともあったが何とか回避。自社工場を持っていることの強みを発揮した。
『冷やしておいしいケーキ』のヒットはメディアへの露出効果も大きかったが、店舗や工場など全社が一丸になったからこそ得られた結果だ。エムアイフードスタイルは異なる2つの会社が合併してできたこともあり、これまでは社内が一丸になることがほとんどなかったそうだが、商品がヒットするということは、ときには組織をいい影響をもたらすものなのである。
クイーンズ伊勢丹公式HP
https://www.im-food.co.jp/
文/大沢裕司