全国にあるカプセルトイメーカーは、2019年10月時点で約30社。売上の大部分を大手玩具メーカーが占める状況だ。
そんな中、少数精鋭ながらも、Toffyやアラジンなど、DIME読者にはお馴染みの人気家電メーカーとコラボし、ユニークなカプセルトイを多数生み出しているのが「株式会社J.ドリーム」。同社のものづくりの秘密、ならびにヒット商品について取材した。
「感動が2倍になる楽しさ」を与えられるものづくりを目指して
―御社のカプセルトイは、限りなくリアルさを追求した、作り込みのクオリティが高い商品がとても多いと感じています。J.ドリームさんならではのものづくりの特徴を教えていただきたいです!
小松薫憲さん(以下小松さん):ありがとうございます。デザインと機能性を両立し、手に取ったときの感動を2倍にするような楽しみが与えられるものづくりをすることでしょうか。
―なるほど。その特徴を活かした商品はどのようなものなのでしょうか?
小松さん:代表作は「とびだす!ポップアップトースター」です。これまでになかったカラフルで可愛いデザインにこだわりました。レバーを下げてからボタンを押すと、パンが上に飛び出るといった、実物に近いリアリティのある動きを再現できたのも大きかったです。
―ポップな色合いが可愛いですし、パンの焼き色が絶妙です!冨永さんが商品企画をする際のポイントはありますか?
小松さん:SNSをチェックするのはもちろんのこと、身のまわりにあるものを観察したり、お店に訪問したりしてこれから流行りそうなアイテムを推測しています。その中から、カプセルトイにしたら面白そうなデザインや今までになかったものをピックアップし、さらに楽しんでいただくためのプラスαの要素を追加した商品を企画しています。
―たとえば「ミニチュアフィギュア」シリーズや「ザ・ミニチュア自動販売機」など、本当に細かいギミックが光っていますよね。
小松さん:まさにそうですね。人気アイテムのメーカー様とコラボした「ミニチュアフィギュア」シリーズは実際の商品をミニチュアサイズにしたのですが、フタが開けられる、扉が開いてトレーが出てくるなど、ギミックの再現にこだわった作りが特徴です。家電のリアルな質感を表現するために、メッキやシルバーの色も試行錯誤して考えました。
「ザ・ミニチュア自動販売機」もディスプレイ部分の缶1つ1つにシールを巻き、細かい箇所の作り込みに注力しています。缶を裏から入れて、ボタンを押せば下の受け皿に缶が落ちてくるという動きがあり、デザインだけで終わらない楽しみを味わっていただけるよう、工夫しているんです。
―そこまでこだわり抜くと、苦労することも多いのではないですか?
小松さん:そうなんです……。実物をミニチュアに落とし込む過程はいつも苦労が絶えません。ギミックや動きの再現度を上げようとすると、構造上、形状の再現が難しくなってしまうことがあるんです。リアリティのある形状を再現しつつ、ミニチュアのクオリティを上げるためにどこまで可動できるか考えなければいけないので、バランスがとても難しいですね。
―製品ラインナップはどのように決定されたのでしょうか?
小松さん:人気・定番のもので多くの方に共感を得ていただきやすいものを基本としています。全体感を見つつ、一部に遊び心があるアソートを入れたり、コレクターやファンの人たちが共感してくれるアイテムをラインナップに加えたりしているんですよ。
たとえば「ドムドムハンバーガーマスコット」は、人気商品やオリジナル商品をメインにラインナップを考えつつ、ファンの方向けにハンバーガーではないロゴマークのラバーストラップや、あえてボツメニューになった納豆バーガーを入れました。
―納豆バーガー!ユニークですね。製品に関して、どういった反響がございましたか?
小松さん:「ドムドムハンバーガーマスコット」に関しては、ボツメニューやロゴマークの方が喜んでいただけているように感じます。
「ミニチュアフィギュアシリーズ」は、実際に現物を愛用している女性の方が、ミニチュアと並べて写真を撮ってくださっているのをSNSで目にします。最近は、手持ちのフィギュアと組み合わせて遊んでいる男性のコレクターさんもいらっしゃいます。
私自身「ミニチュアフィギュアシリーズ」は「動きの楽しさ+リアルで可愛い」という2点を再現できたので、お気に入りです!
―飾っても遊んでも楽しめるなんて素敵です!最後に、小松さんが今後チャレンジしたいことはありますか?
小松さん:ミニチュアの家電達を入れて遊べるキッチンカートなど、弊社のカプセルトイと合わせて遊べるアイテムづくりに挑戦していきたいです。
―カプセルトイを集めるワクワク感が増しますね。本日はありがとうございました!
取材からわかった株式会社J.ドリームのカプセルトイ・ヒット要因3
1.デザイン性にこだわる
実物をミニチュア大にする際、どのように再現すればリアリティを追求しつつ可愛いデザインに仕上がるか、カラーバリエーションを含め徹底的に考え抜いていると感じた。
2.動きの楽しさや遊び心を意識
ミニチュアの可動範囲をできる限り広げるべく、形状とのバランスを考えながら試行錯誤し、クオリティの高い商品を数多くリリースしている。これが、人気メーカーとのコラボレーションが絶えない理由だろう。また、定番の商品でもあえてボツメニューを打ち出す
など、遊び心のあるセレクトも魅力だ。
3.「身のまわりにあるもの」をアレンジ
J.ドリームが展開しているカプセルトイは多くの人々に馴染みがある「身のまわりにあるもの」が多いが、ただ忠実に再現するのではなく、遊び心を加えたアソートをラインナップに入れるなど、アレンジ力が光っている。これが、他社との決定的な違いだと感じた。
取材・文/高橋まりな