日本が世界に誇れるテクノロジーのひとつ、新幹線。最近放映されたNHKでのドラマでも取り上げられた台湾新幹線のように、新幹線は国内だけでなく海外での展開も期待されている。
そんな新幹線だが、今ではたくさんのバリエーションが存在している。しかも一見同じように見えても実は細かくいろいろな種類があるのだ。今回は新幹線のちょっぴりマニアックな楽しみ方をご紹介していこう。きっとこれまで以上に新幹線が楽しくなるはずだ!
今日の新幹線はラージA? それともスモールA?
世界初の高速鉄道である東海道新幹線。2020年3月より、東海道新幹線は運行する車両をすべて「N700A」に統一して東海道新幹線は次のステージに向かった。山陽新幹線についても東京へ直通する列車は全てN700Aに統一されている。
このN700Aだが全部同じように見えて細部が異なり、結構面白い。まず、紹介したいのは車両のロゴマークだ。東海道新幹線の列車は全てN700Aなのは事実だが、よく見ると車両に描かれているロゴマークが異なる。比較的控えめに「N700A」と書かれている車両と、どかんと大きく「N700A」と書かれている2タイプがあるのをご存じだろうか。
東海道・山陽新幹線の主力車両N700A。車体にでっかくロゴマークが描かれている。
これを鉄道マニア界隈では「スモールA」、「ラージA」と呼んでいるが、そもそもこの違いはなんだろう。
答えは車両の生い立ちにある。
N700Aの元祖ともいえるN700系は次世代の東海道、山陽新幹線のスタンダードとして誕生した車両で、2007年に誕生した車両だ。
東海道新幹線は開通から半世紀以上が立ち、当時の設計思想で敷かれた線路は後年に開通した山陽新幹線などに比べてカーブが多い。そのため、東海道新幹線における速達化は単にスピードアップを図ればよいというわけでなく、このカーブをどう速く通過していくかがカギになった。
そこでN700系では新幹線車両で初めて「車体傾斜システム」を採用。ちょうどバイクや自転車を思い浮かべていただけばわかりやすいが、N700系はカーブを通過する際に1度だけ車両が傾斜している。そうすることで車内の乗り心地はそのままで、カーブを速く曲がることができるようになった。
そのほか、車両の加速性能を、一般的に加速が速い通勤型車両並みに向上。ここでも速達化をサポートしている。また、現在では当たり前になっている新幹線の全席禁煙や窓側席に設置された車内コンセントもN700系で初採用されている。
そんなN700系はどんどん車両数を増やしていったが、2013年により進化した「N700A」が登場。運行装置やブレーキなど走行システムを中心にブラッシュアップがされている。
一方、このN700Aのデビューを受けて、N700系にもN700Aと同様の機能を追加搭載する改造が行われ、全ての東海道新幹線N700系は「N700A」化されていった。この時、新造されたN700AはロゴマークがでかいN700Aで、改造車のほうはロゴマークの小さい「N700A」になっている。生まれた時からN700Aなのが「ラージA」、N700系から改造されたのが「スモールA」というわけだ。
こちらがN700系から改造されてN700A化された「スモールA」のロゴマーク
車内で流れる「あのメロディー」のヒミツ
駅で新幹線に乗り込み、ほっと一息つくと聞こえてくる車内放送。この車内放送前に流れるメロディーにも注目したいポイントがある。見た目は全部同じN700Aの東海道新幹線でも、乗る列車によってこの放送前のメロディーが違っていたことはないだろうか。
現在、東海道新幹線では2つの曲をアレンジした車内メロディーが採用されている。一曲は2003年、東海道新幹線品川駅開業にあわせたダイヤ改正時のCMソングとして採用されたTOKIOの「AMBITIOUS JAPAN」、もう一曲はかの名曲、「いい日旅立ち」をカバーした鬼束ちひろの「いい日旅立ち・西へ」だ。たまに、山口百恵の「いい日旅立ち」と言っている人もいるが、そうではない。細かくて指摘するとドン引きされそうだが、正しくは鬼束ちひろの歌っているほうの曲なのだ。
この「いい日旅立ち・西へ」は東海道新幹線品川駅開業と同じ2003年に発表されたJR西日本の「DISCOVERWEST」キャンペーンのキャンペーンソングとして登場し、新幹線の車内メロディーには2003年の11月から随時採用されている。
この2曲、どのように使い分けているかというと、車掌さんのその日の気分というわけではなく、その車両の「持ち主」によって違っている。東海道新幹線は山陽新幹線と直通運転を行っているが、新大阪駅を境に運行、管理する会社がJR東海とJR西日本と異なっている。そのため、同じN700AでもJR東海所有のものとJR西日本所有のものがあり、これによって車内メロディーが異なっている。
さらに、どちらの曲も2パターンあり、長めの始発終着駅バージョンと短めの途中駅バージョンが存在している。2020年7月に登場予定の最新鋭N700SはJR東海所属ということもあり、「AMBITIOUS JAPAN」が使用される。
7月デビュー予定のN700Sは、JR東海所属なので車内メロディーは「AMBITIOUS JAPAN」
山陽・九州新幹線で運行されているN700系もJR九州所有の車両とJR西日本所有の車両があり、それぞれ車内メロディーが違う。JR九州所有の車両は、博多、熊本、鹿児島中央の到着時は他駅とは違うスペシャルバージョンが流れるのもユニークなポイントだ。
北陸新幹線はJR東日本とJR西日本による運行が行われており、使われている新幹線もそれぞれE7系、W7系の2種類がある。N700Aなどと同様に車内メロディーも別々でE7系は上越新幹線と同じ「TR12」という曲が使われている。
一方、W7系では開業当時は「いい日旅立ち・西へ」が使用されていたが、途中から「北陸ロマン」という曲をアレンジしたものが使用されている。
ちなみに東北・山形・秋田・北海道新幹線は全て「TR11」という曲で統一されている。
J・G・F・X・U・H・・・・新幹線に書いてあるアルファベットのヒミツ
さて、先項で新幹線の持ち主の話が出てきた。これらは新幹線の「ある部分」を見ればすぐにわかるようになっている。新幹線の運転室の窓や乗務員さんが出入りするドア部分には、「J1」という風にアルファベットと数字が書いてあるが、実はこれがその車両の所属を表しているのだ。
数字は何番目に製造されたかを表す通し番号で、たとえば「J」はJR東海のN700Sを示していて「1」は一番目に作られた車両という意味だ。ほかのアルファベットはこんな感じになっている。
J・・・JR東海のN700S
G・・・JR東海のN700A(ラージA)
X・・・JR東海のN700A(スモールA)
F・・・JR西日本のN700A(ラージA)・JR東日本のE7系
K・・・JR西日本のN700A(スモールA)
S・・・JR西日本のN700系(8両編成)
R・・・JR九州のN700系(8両編成)
運転室窓のアルファベットからいろいろなことがわかる。これは「G」なのでJR東海のラージA 車体側面下にあるJRマークもオレンジ色。丸印に注目してみよう!
同じラージAだけど「F」なのでこれはJR西日本のN700A。JRマークも青色
山陽・九州新幹線向けN700系。「R」なので持ち主はJR九州。
ぱっと見、ほとんど一緒だが、このアルファベットを見ると(知っていれば)すぐにその車両が「どこの所属で車内メロディーがAMBITIOUS JAPANか」なんてことが乗る前にわかるというわけだ。
ただ、これがわかったところで実用性がどこにあるかは正直、筆者もわからないが……。
ちなみにこうして記事を書いたりする場合、筆者は東海道新幹線の記事ならN700AでもGかX、山陽新幹線ならF、K、JR九州の話題ならRの編成を掲載するようにしている。