暑中見舞いには、送る時期や内容などについてマナーがあります。そのため、取引先や知人に暑中見舞いを送る予定の人は、正しいマナーを把握することが大切です。暑中見舞いを送る目的や残暑見舞いとの違い、返礼についても紹介します。
暑中見舞いとは
社会人になると、暑中見舞いを送ったり、受け取ったりすることが増えます。しかし、暑中見舞いの由来や送る理由を知らない人もいるのではないでしょうか?まずは、暑中見舞いがどんなものなのか見ていきましょう。
暑い時期に相手を気遣う挨拶
暑中見舞いは、年賀状同様に季節の挨拶です。暑中とは『立秋(8月7日頃)前の約18日間』を指し、夏土用とも呼ばれます。夏土用はうなぎを食べる習慣で知られている『土用の丑の日』でも有名ですね。
夏の土用の時期は、最も暑さが厳しくなるため、体調を崩しやすくなります。実際に食欲がなくなったり、疲れが取れなかったり、夏バテを起こした経験がある人もいるのではないでしょうか?
暑中見舞いは、暑さで体調を崩しやすい時期に、日頃お世話になっている人や普段なかなか会えない人の健康を気遣うという趣旨があります。また、先方に自分や家族の近況や無事を伝えるという役割も含まれます。
暑中見舞いの由来
暑中見舞いの由来は、お盆の風習にあるとされています。お盆は、お墓参りをし、先祖の霊を供養する行事ですが、かつては先祖の霊にお供え物を持参する風習がありました。この風習が、江戸時代に普段お世話になっている人へ、贈り物を贈る風習に変わっていったのです。
この頃には、五街道などの交通基盤が整い、郵送手段として『飛脚(ひきゃく)』が活躍していました。当初は公用だった飛脚ですが、一般庶民も利用できるようになったため、遠方に住む人にも贈り物を届けられたのです。
現在は手紙・はがきの挨拶が定着
明治時代になると、贈り物を贈る風習が次第に変化していきました。これは、明治時代初期に郵便事業が始まったことと関係しています。
郵便制度が発達したことで、贈り物を贈る風習が次第に簡素化されていきました。大正時代には、贈り物ではなく、手紙やはがきを送る風習に変化したのです。それが、現在の暑中見舞いとして定着したとされています。
なお、お盆に贈り物を贈る風習は、お中元を贈る風習として残っています。
暑中見舞いの送り方と発送時期
暑中見舞いを送る時期は決まっており、その期間内に送るのがマナーです。暑中見舞いの時期を過ぎてしまうと、残暑見舞いになってしまうので注意しましょう。
はがきを送るのが一般的
暑中お見舞いとお中元は、ともに夏の挨拶の風習であるため、混同しがちです。しかし、お中元は品物を贈るのに対し、暑中見舞いははがきを送るのが一般的です。
夏が近くなると、文房具店をはじめ、コンビニなどでも多種多様な暑中見舞いのはがきが並びます。近年は、家族写真入りのはがきを送る人も少なくありません。
なお、暑中見舞いに品物を贈るケースもあります。例えば、お中元を贈り忘れてしまった時などです。お中元は、地域により贈る時期が異なるため、うっかり忘れてしまうこともあります。そのようなときは、のしを『暑中御見舞』と書き換えて贈ります。
暑中見舞いに記載する内容
暑中見舞いに記載する内容にもマナーがあります。暑中見舞いは、ある程度、記載する内容や構成が決まっています。そのため、大切なポイントを押さえれば、誰でも失礼のない暑中見舞いが書くことができます。
まず『暑中お見舞い申し上げます』という暑中の挨拶を書きます。次に、『猛暑の折、皆様ますますご健勝のことと存じます』といった時候の挨拶がきます。その後に『平素は格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます』など、主文を書きましょう。
最後に『どうぞ、くれぐれもご自愛ください』といった結びの挨拶を記載し、『令和○年 盛夏』と日付を記載します。
基本的な構成は変わりませんが、記載する内容については、会社関係と個人とでは異なります。送る相手に合わせて適宜変えましょう。
梅雨明けから立秋までに送付
暑中見舞いは、前述したように暑中である『夏の土用期間』に送るとされています。また、二十四節気の『小暑』と『大暑』の期間を暑中とする考え方もあります。小暑は、7月7日頃から約15日間で、大暑は7月23日頃から約15日間です。つまり、7月7日頃から30日前後が目安になります。
ただし、送る相手の地域の気候により、臨機応変に対応することが大切です。暑中見舞いは、暑さの厳しい時期に送って、相手を気遣うものです。梅雨明けをしていなかったり、まださほど暑くなかったりする時期に送ると、本来の趣旨からズレてしまいます。
従って、梅雨が明けた頃から立秋までの間で、相手に合わせて最適な時期に送るのがよいでしょう。
立秋を過ぎたら残暑見舞いを出す
暑中見舞いを出す時期は、地域によってはお中元の手配で忙しいこともあります。そのため、うっかり出し忘れてしまうこともあるものです。立秋を過ぎてしまったら、残暑見舞いを出しましょう。
残暑見舞いと基本の構成は同じ
残暑見舞いも暑中見舞い同様に、季節の挨拶です。残暑は立秋以降を指しますが、『暑さが残る時期』という意味のため、終わりの日は具体的に決まっていません。
ただし、残暑見舞いは、8月中に送るのが一般的です。暑さが残っている場合は、9月に送る人もいますが、相手によっては違和感を覚える人もいるため、8月中に送るのが無難でしょう。
残暑見舞いの基本的な構成は、暑中見舞いと同じです。『残暑お見舞い申し上げます』という残暑の挨拶に始まり、相手の健康を気遣う時候の挨拶を書きます。次に自分の近況などの主文を書き、最後に再度相手の健康を祈る結びの挨拶で締めくくります。
なお、日付の書き方が暑中見舞いと異なるため注意しましょう。暑中見舞いでは、日付の後に『盛夏』と付けますが、残暑見舞いでは『晩夏』『立秋』『葉月』になります。
時候の挨拶は気候に合わせて変えよう
冒頭の季節の挨拶に続く時候の挨拶も、暑中見舞いと残暑見舞いでは異なります。相手の健康を気遣うという趣旨は同じですが、状況が異なるためです。
暑中見舞いは、暑さが最も厳しい時期に相手の健康を気遣うのに対し、残暑見舞いは長引く暑さによる相手の健康を気遣うものです。そのため残暑見舞いでは、立秋を過ぎたけれど、暑さが続いていることに触れる内容が主流です。
例えば『立秋が過ぎ、暦の上では秋ですが、厳しい暑さが続いております。いかがお過ごしでしょうか?』といった文面になります。
また、少し暑さがやわらいできたときは、『日中はまだ暑い日が多いですが、朝夕には秋の兆しを感じられるようになりました』など、気候に合わせて使い分けましょう。
暑中見舞いを受け取った場合の対応
暑中見舞いは、出す側だけでなく、受け取った側にもマナーがあります。暑中見舞いを受け取った場合の正しい対応について紹介します。
返礼を出すのが基本
暑中見舞いを受け取ったら、返礼をするのがマナーです。返礼の際は、一般的な季節の挨拶だけでなく、暑中見舞いを受け取ったお礼を伝えましょう。
『ご丁寧な暑中見舞いを頂き、ありがとうございました』や『この度は暑中見舞いを頂きまして、恐れ入ります』など、送る相手に合わせて言葉を選びましょう。
また、知人などからは、年賀状同様に家族や子どもの写真入りの暑中見舞いを受け取ることも珍しくありません。その場合は、『しばらく見ないうちに、お姉さんになりましたね』『お子さんは、お母さん似ですね』というような一文を加えると温かみが増します。
はがきまたは封書で早めに送る
返礼は、暑中見舞いが届いてから、3日以内に送るのがマナーとされています。近年は、メールなどで簡単に済ませてしまう人もいます。しかし、取引先や目上の相手に送ると失礼に当たる場合もあるため、注意しましょう。
返礼は、暑中見舞いや残暑見舞いのはがきを送るのが一般的です。ただし、大切な取引先には封書で送ると、より丁寧な印象が伝わります。
なお、暑中見舞いを送れるのは立秋までです。返礼が立秋を過ぎている場合は、残暑見舞いを送ります。もしも返礼をし忘れて残暑見舞いの時期も過ぎてしまったときは、お礼状を送る形でも問題ありません。
構成/編集部